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ヘブンズゲート・クライシス  作者: 遠藤 薔薇
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1.プロローグ:抜け殻は話さない


最後に目にしたのは、真っ赤な光と炎だった。

どんな状況だったか、どんな原因だったかはわからない。

とりあえず視界を隙間なく埋め尽くすくらいの光と炎があって、その直後に視界は真っ暗に染め直された。舞台の照明が暗転したかのように。

次に俺が視界を取り戻した時、目に映ったのは天井だった。白い清潔な天井、丸い電灯。

ベッドに横たわっているのは感触で分かった。白い清潔なシーツ、四角いマット。

ここが病院だということは周囲に置いてあるものでわかった。俺の左腕には点滴が繋がれており、頭や腕に包帯が巻かれていることに気づく。

こんなシチュエーション、どっかで見たことあるな。訳の分からないままベッドに横たわって天井を見ている…知らない、天井…なんかのアニメだ。

他愛ないことで海馬を顧みていると、俺はあることに気づく。

いや、厳密にはあることを忘れている。

一度確かめてみよう。

俺は真田和嵩。東京都B区立久間倉高校3年生。身長175cm。体重57kg。血液型AB型。母親の聡里はすでに死去。父親の芳継は現在アフリカで単身赴任。よって一人暮らし。好きな食べ物はハントンライス。嫌いな食べ物はレバー。得意科目は日本史。不得意科目は数学。所属している部活動はなし。趣味は特になし。志望大学はまだ決めていない。

海馬の底に足を着けそうなくらい色々思い返してみた結果、俺はようやく忘れていることが何か気づいた。

俺がここにいる理由がわからない。最後の記憶はコンビニで買ったのり弁を食べ、風呂に入り、「火の鳥」の黎明編を読んで、アラームをセットして寝ただけだ。

だけどこんな状況につながる記憶じゃない。家で寝ていて起きたら病院なんておかしい。俺はどうして病院に運ばれている?いやどうして俺は怪我をして、点滴を打たれている?

静かに混乱する俺はある手がかりをつかむ。

そうだ、最後の記憶の3日後、俺はアメリカに短期留学する予定だった。だったら俺はアメリカにいるのか?

点滴がつながっている薬剤の袋の表記は英語。予感は的中したようだ。

でもまだわからない。俺がここにいる過程が抜けている。だけど俺の海馬はもうあてにならない。


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