プロローグ
いつも繰り返し同じ夢を見る。毎日見ているわけではないけど、毎回頭痛を伴っているのはいただけない。
シチュエーションも同じ。いつか見たことのあるどこかの教会。煉瓦造りの建物、どこまで広がっているか分からないが外には石畳の庭園。
霧雨がシトシトとしていて、石畳に吸い込まれていく。僕はその石畳の上で仰向けで倒れている。
ぼんやりとした息苦しさと、もう何度も夢で経験しているくせに自分の置かれた状況がわからなくて子供のようにうろたえている自分。
しばらく待つ。きっと彼女がやってくる。
…あぁ、やっと来た。彼女は僕の頭を膝に乗せると何とも言えないような表情をしてしげしげと僕を見つめてくる。
雨が強くなってきて彼女を強く打つから、覗き込んでくる彼女の顔は濡れていてまるで泣いているかのよう。泣いているわけはないのだけど、つられて僕まで泣きたくなる。
「きっと君は私を恨むだろう。」なんでそんな事を言うのか。
「人としての生活も信仰も失う。世界の全てから見捨てられて、すべてを恨みたくなってしまう。もし世界の全てを恨みたくなったら、代わりに私を恨むんだ。そうすれば君自身は世界を見捨てずに済む。私を恨んで、そしていつか殺しにおいで。」
そう言い残して、彼女は僕を置いていく。薄れていく意識の中で彼女に手を伸ばしたいのに伸ばせない自分がもどかしくて、言うだけ言って去って行った彼女が心底恨めしかった。