Channel MAID MIX 2. a-1/c-2
そろそろかな・・・
ケイスケは手作りアイスの出来上がり具合を確かめようと、旧式の冷凍冷蔵庫のドアを開けた。
クリーム色がかったアイボリーホワイトの巨体は、角をなくした丸いフォルムで、つるんとした海の哺乳類を思わせる。それは先月ケイスケが古道具屋で見つけてきた掘り出し物で、年代物なのにコンプレッサーなどの機械の部分は新しいものにオーバーホールされているらしく、静かで快適に動いているし、なによりウォルナットの床の色ともよくマッチして、ケイスケの広いワンルームのインテリアアクセントしても重要な位置を占めている。
ケイスケはその古道具屋で、アイスクリーマーも手に入れた。
新品だが、大きな冷凍室のある冷蔵庫でなければ使えないので、きっと買ったものの使われずに売られてきたのだろう。アイスクリームの作り方の本つきという買い得品として店の隅においてあった。
甘いものに目がないケイスケは、それを更に値切って買ってきて、毎日色々なフレーバーのアイスを作り、楽しんでいる。今日は、ブルーベリーを入れてみた。
フルーツを入れるのは初めてなので、ちょっと上安。。。
わくわくしながらケイスケは冷蔵庫の扉を開けたのだが・・・
「まだよっ。ちょっと柔らかいっ。」
「すまんっ」
ダメダメというように中から手を振られ、ケイスケは慌てて冷蔵庫を閉めた。
冷蔵庫のドアの取っ手を握ったまま、ケイスケは3秒考えた。
・・・今のだれ?
ケイスケはちょっと眉間に力を入れて、もう一度そっと冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫の中にはお団子頭のチャイナ朊の女の子がぺたんと座り込み、大きなスプーンを握りアイスクリーマーを抱え込んでいる。
・・・なんで春麗がここにいるんだ?
しかし、彼女はケイスケの視線には気付く様子もなく、無心にピンク色の出来たてアイスクリームを食べている。
まて!それは俺のアイスだ。勝手に食うな。まだ俺も味見していないんだぞ。だけどコイツがほんとに春麗なら、下手に声をかけると攻撃してくるかもしれん。一撃でもまともにパンチを食らえば素人の俺はあの世行きだ。せめてゲームなら、AA←B+→CA・・・あ、そっか。
ケイスケは何か思いついてTVの方へ走っていった。そしてガシャガシャと音を立てて何かを探し出すと急いで戻ってきて冷蔵庫の中のチャイナ朊に向かって声をかけた。
「おいっ!?」
うわずった声のケイスケはへっぴり腰で両手を差し出すようにして構えている。新拳法か?
どう見てもそれは逃げの態勢である。しかしその手にはしっかりとゲームコントローラーが握られて、手だけはいつでもバトルできる態勢だ。
ベカベカベカベカベカッ!ケイスケは待ちきれずに震える手でボタンを押し始めた。
彼女は騒がしさにやっと気付き、驚きもせずにスプーンを舐めながら顔を上げ、ケイスケの顔をじっとみつめた。
ケイスケはダダッと3歩下がり、コントローラーを放り出して防御の構えをした。
「ブルーベリー、底にたまってたよ。」
彼女は空の容器を差し出し、にまああっと笑った。