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しあわせになる方法1  作者: 桐島十子
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内線

「プリティな先生、こんにちは」 A組の担任小林学年主任は、第一声にこの言葉を使う。わたしが大学生時代、接客のバイトをしていたときにお客からこう声をかけられたんです、と飲み会で話したら、「いいですねえ、そのフレーズ僕がもらっちゃっていいですか」と大笑いし、以来毎回顔を合わせたり電話をしてくるときに屈託なく口にする。生徒の中には真似をする輩も少なくなく、風紀の風間主任に大目玉を食らっているのを、わたしは内心楽しんでいる。私立はいろいろこまかいので、ユーモアを交わし合えるようになれたのは都会の大学に出て得てきた生徒に向けた私の財産兼プレゼントだ。 「中城、見込みありますかね」小林学年主任の言葉に、「は…?」と間抜けな声を出してしまった。「いや、今回の模試、やつは凄かったんですよ。文系国語以外も8割越えていてですね、新しい家庭教師つけたと聞いてますが、びっくりですよ。いきなりこんなに成績が伸びたのは今まで教師をしてきてやつがいちばんです」 「それは良いことですね。文芸部に誘ったのは私ですから彼の成績のことすごく気になってたんです、落ちたら私の責任になりますから」「いやいやいやいや!御見逸れしましたよ!先生は凄いですわ!」いきなり関西弁に口調が代わり捲し立てられ、わたしは心臓がはねあがるのがわかるくらい仰天した。 「先生、中城に惚れられたんよ」……………絶句した私に、小林は大笑いした。「先生ほんまに素直やなあ。気に入られてるちゅー意味や」 「からかわないでくださいよ」「いやいや、先生の評判古株教師のなかでもええですよ。先生教えた野花さんも、よくここまで立派になったなぁって。なにせ中城が慕うくらいですしな」――――そういえば、中城は頻繁に司書室に来る。授業の合間にはほぼ毎回来て小説の話をしてくる。その知識の量には舌を巻くほどだ。 「野花先生が喜んでますよ。いい生徒が増えたって。さすがプリティ先生」「恐縮です」なかなか本題に入らない。こっちから切り出そうと思ったところで、電話が切れた。

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