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8/8

理由と説明のようです。

どうも、画ビョウ刺さったです!

第8話投稿しました。

評価をしてくださった方々、ありがとうございます!これからも頑張らせて頂きます!


 




 まずい、これは非常にまずい…。


 部屋に案内され、僕は一人ベッドの上に座って頭を抱えていた。理由は一つ。夜白さんと同じ部屋で寝泊まりすることについてだ。


 いや、同じ部屋でも二人部屋ならまだ納得出来た。夜白さんは僕が転生者である事を知っている。そして僕がまだこの世界について良く知らないのも知っている。


 だから、今日は同じ部屋でこの世界についてもっと良く話して、それで違うベッドでお休みになるはずだ。うん、これなら僕も納得出来る。


 だけど、これは、これはーーー。

 





「流石にこれはまずいでしょー!?」


 僕の叫びが部屋に響く。隣の部屋の人に迷惑だけど、これはしょうがない。叫ばずにはいられない。


 なぜかって?そんなの決まってるよ。夜白さんと、同じベッドで寝ることになったからですよーー!!


 ゴロゴロとベッドの上で転がる僕。ミニハットが取れそうでスカートに皺が出来るかもしれないが、そこはもう気にしない。気にしてらんない。あーもうなんでこうなったかなー!!僕14才だよ!?思春期ですよ!?女装してるけど男の子ですよ!?あんな綺麗な女の人と寝泊まりするだけで心臓バックバクなのに同じベッドで一緒に寝るなんてうわぁぁぁぁぁぁぁ!!!


 イロイロ浮かんでしまった妄想を追い払おうと、僕はさらに早くベッドの上を転がる。


 転がりながら、僕は受付の時の事を思い出す。


 夜白さんの爆弾発言に僕はもちろん反対した。そりゃあもう反対した。夜白さんそれは流石にまずいですよって。でも夜白さんはニヤニヤした顔のまま、僕の耳元でささやいた。






「ふっふっふ。凛君や、色々思う事はあるだろうけど、君に反論する権利はないよ。なぜなら私がお金を払うんだからねー。妹はお姉さんの言うことをちゃーんと聞かないと」


 ふっふっふ、と笑う夜白さんのその一言に僕は完全に敗北した。お金の話持ち出されたら何も言い返せないよ、僕借金してるもん…。…。


 受付のおばあちゃんは本気で姉妹だと思っているようで、「お姉さんにべったりねー」と言いながら部屋を案内してくれた。2階の一番奥の部屋だ。


 部屋は一人部屋と言うこともあり、ベッドと机、椅子、服をかけるための木製ハンガーなど、最低限の家具しか置かれていなかった。部屋は木の床だ。ここの宿は外側が石造りだったが中は結構木造が多い。天井にはランプがあり、部屋を照らしている。


 部屋に入り、おばあちゃんが退出し、その後夜白さんが花摘みに行くと言って部屋を出たところで、冒頭に戻る。





「ただいまー、ってなにしてるの、マーキング?」


 ゴロゴロしていると、花摘みから帰ってきた夜白さんが変な顔でこっちを見てきた。


「いやいや、違いますよ。ちょっと色々と耐えられなくなったので発散してました」


「ほほう、イロイロ耐えきれなくなって発散してたのかー」


「夜白さんが言うと何か含みのある言葉に聞こえます」


 ニヤニヤしている夜白さんの顔を見ればナニを想像したのかすぐに分かる。どうせアッチ系の事だろう。というか、僕今日この人と会ったばかりだよね?なんでこんなに打ち解けられてるんだろ。


 僕がベッドから起きてじーっと夜白さんの顔を見ながら思っていると、夜白さんが部屋のドアを閉めて近づいてくる。


「何々、もしかして手伝ってほしいの?」


「何の話ですか。というか、何を手伝うんですか」


「もうー、それを私の口から言わせる気?凛君は変態さんだなー」


「言わせません。…それより、何で一人部屋にしたんですか?安いからとか、そういった金銭の問題じゃないですよね?」


 僕は真面目な顔をして夜白さんに聞いた。正直、僕を美味しく頂くためかと思ったけど、夜白さんがそれだけのために一人部屋にしたとは思えない。何かあるはずだ。というかそうであってほしい。


 僕の真剣な顔を見て、流石の夜白さんもニヤニヤした笑顔を引っ込めた。そのまま夜白さんはベッドに近づき、僕の隣に座る。


「そだねー、まあ色々理由はあるんだけど…」


 そう言って、夜白さんは真剣な顔でこっちを見た。








「まず一番の理由は、凛君を抱き枕にして寝ることかな」


「一番がそれかー」


 最早敬語すら忘れてツッコミを入れてしまった。さっきの一瞬のシリアスを返してほしい。それと無駄にキリッとした顔で言わないでほしい。


「そしてあわよくばそのまま凛君を頂いてしまおうと…」


「逃走!!」


 夜白さんが言い切る前に僕はベッドからの逃走を試みた。


「遅い遅いー」


 しかし、逃げようとして立った瞬間に夜白さんが僕の腕を掴んで引き寄せる。重心が後ろに傾いた僕はそのまま座る形で夜白さんの膝の上に収まった。そのまま夜白さんが僕に抱きつき、完全に身動きを封じる。この間僅か3秒の出来事だった。


「夜白さん、とりあえず落ち着きましょう。落ち着いて僕を解放してください」


「却下しまーす。凛君はこのままご飯の時間まで私の抱き枕でーす」


 ぎゅーっと抱きついてくる夜白さんからは全く離す気を感じない。これはダメだー、と僕は逃走を諦めることにした。



「いや、むしろこのまま凛君を頂くというのもありだな」


「誰か助けてー!」


 前言撤回。やっぱり逃げよう。貞操と童貞の危機だ。


 バタバタとする僕を、夜白さんは抱き締めるようにして押さえる。


「もう、冗談だってばー。確かにちょーっとそういう願望はあるけど、ちゃんとした理由もあるよ?」


「本当ですか?」


 バタバタをやめて、僕はくるりと首を後ろをに向ける。動けないから仕方ない。僕の顔を見て夜白さんは苦笑した。


「そんなジト目で見ないでよー。可愛い顔が台無しだよ?」


「普通その台詞って女の子に使いません?」


「凛君女の子みたいなもんじゃん」


「…。確かに」


「普通そこは否定しない?男の子としてさ」


「この姿で否定しても説得力皆無ですよ」


 まあねー、と言った夜白さんは僕をひょいっと持ち上げて隣に座らせた。意外に力持ちみたいだ。でも何で横に座らせたんだろ。


 見上げると、夜白さんが僕に目を合わさずに前を向いたまま話を始めた。




「さっき言ってたやつさ、何で一人部屋なのかーってやつ。あれね、簡単に言うと保険なんだ」


「保険…ですか?」


「そ。主に凛君の保険かな」


 んー、と伸びをしながらベッドに後ろから倒れ込む夜白さん。寝るつもりかな。でもまだ話途中なんですけど。


 そう思っていると、寝転がった夜白さんは、仰向けからころん、と横に寝る体勢になってこっちを見る。


「なんの保険かっていうとね、今日明日あたりもしかしたら凛君に変な虫がつくかもしれないからなんだ。そのための保険だよ」


「虫?」


 虫って、モンスターの事かな。いや、多分この『虫』は人の事だよね。それってつまり誰かに目をつけられてるって事?え、僕いつの間にそんなフラグを?


 いつだいつだ、と考えていると夜白さんが話を続ける。


「凛君さ、街に入る前にステータス見たじゃん?お金を持ってるか見るために」


 お金?ああ、確かにステータス確認したよね。初めてステータス見たとき。でもそれがどうしたんだろ。


 僕は夜白さんの言葉に頷く。すると夜白さんが衝撃の事実を口にした。



















「あれさー、実は高レベルの鑑定スキル持ってる人からすれば丸見えなんだよね、凛君のステータスが」


「ええ!?」


 その一言に僕は思わず大声をあげる。あげずにはいられなかった。


 ただただ驚く僕に、夜白さんは続ける。


「ステータスを見るときは教会かギルドに行くって言ったの覚えてる?教会とギルドにはステータスを見るための道具があるだけじゃなくて、他者から見られないように個別の部屋があるんだよ。ステータス見せるなんて手の内を明かすようなもんだからね。だから鑑定スキルのない奴はみーんな教会とギルドで確認するの。でも個室だからすごく混むんだよね。だから鑑定スキル持ちはレアだし羨ましがられるんだよ」


 でも、と夜白さんは右手で頬杖をつきながら僕に、話続ける。


「鑑定スキルはレベルが低いとレベルの高い人にステータスが見られちゃうんだよ。同じレベルなら防げるんだけど、1レベルでも低いと簡単に見られちゃう。しかもステータスを展開してたらほぼ確実に見られるんだよね。冒険者の間では『カンニング』なんて言われてて、バレたら血祭りもんなんだけどこれが異常に上手い奴も世の中にはいる。こういう奴等がさっき言った『虫』だよ。害虫っていってもいいけどね」


 そっかー、こっちの世界にもハッカーみたいのがいるんだ。しかもステータスって完全に個人情報じゃん。そりゃ害虫って言われても仕方ないよね。僕も次から気を付けなきゃ。


「さっきの街に入る時にその『虫』がいたかは分からないけど、後ろには何組か冒険者がいたからね。もしかしたら見られてたかもしれない。そう思ったからこうしたんだー。私といれば少なくとも強引な手は使わないだろうし、何より門番に凛君が私のパーティに入ってるってことを言ったからねー。向こうはもうすでに予約済みって分かったはずだから大丈夫だと思うけど、念のためにね」


 夜白さん、僕のためにそこまで考えてくれていたんですか。ありがとうございます。やっぱり貴女は女神だった。


 夜白さんに感謝した。だってそれって僕を守ってくれたって事だもん。感謝しなきゃ人じゃない。


「まあもちろん全部の冒険者がそうとは限らないんだけどさ。良い奴も気が合う奴もいる。けどやっぱり中にはいるんだよねー。だから警戒するに越したことはないんだ。只でさえ凛君のステータスは高めだからね、他のパーティとかに勧誘されたら嫌だし」


 なるほど、まあ僕も全部の冒険者がそうだとは思ってないよ。でも少なからずいるっていうのは覚えておこう。


 僕は夜白さんの行動に感謝しつつ、もう少し気を付けようと思った。異世界とはいえ、変な事に巻き込まれたくない。転生者なんて巻き込まれる確率120%だもん。


 僕は一刻も早く異世界での常識を身に付けようと思い、夜白さんに他に気を付けることはないか聞こうとした。











「ん?あれ、そういえばなんで夜白さん僕のステータスの事知ってるんですか?」


 ふとした疑問。さっきの夜白さんの言葉を思い出す。確か、夜白さんは僕のステータスが高めって言ってたよね。でも僕は一度もステータスの事を喋ってないはず。ステータスが出たとは言ったけど、ステータスの高低は言ってないと思うんだけど…。


 ちらっと夜白さんを見ると、夜白さんは「やばっ」と小声で言った。それを聞いた僕は目を細める。ジト目だ。


「今、『やばっ』ていいましたね」


「い、いやー。なんというかさ、あんな至近距離でステータス展開されたら見ちゃうでしょ」


 あはは、と苦笑いする夜白さん。どうやら夜白さんも僕のステータスを見ていたらしい。はぁー、と僕はため息をついた。まあ、別に夜白さんならいいか。下手に広めようとかしないだろうし、何より僕のステータスを見て行動してくれたんだもん。なら怒るのは筋違いだ。


「まあ、夜白さんなら別にいいですよ。僕は信頼してますから」


「あはは、ありがと。まあでも本当は凛君のステータスを見たから…」


「分かってます。見たからこうしてくれたんですよね。本当に感謝してますよ」


 僕は夜白さんの顔を見ながら言った。なんやかんだで夜白さんは優しい人だ。普段僕に対して過激なスキンシップをしてくるけど、こうやってちゃんと僕の事を考えてくれている。優しいお姉さんだ。


 そんな事を思っていると、僕はふと日本にいる姉さんの事を思い出した。元気かなぁ。相変わらず空手で優勝してるんだろうか。あの『鬼姫』は。


 姉さんの事を思い出していると、ドアからノックの音が聞こえた。


 僕が出ようとすると、夜白さんが起き上がってドアを開けに行った。今のも僕を思っての行動かな。変な人に鉢合わせないようにするための。


 夜白さんがドアを開けて、外にいる人と一言二言話すと、夜白さんはドアを閉めた。くるりと此方を向いた夜白さんの顔はにこやかだった。





「夕ごはんが出来たってさ。食べにいこうか」



 ♪♪♪



 その後、僕と夜白さんは夕ごはんを食べに部屋を出た。案内された部屋は2階なため、夕ごはんを食べるためには1階に下りなければならない。


 階段を下りると、既に何人かの人々が席について食事をとっている。見てみると、皆大きめの黒パンに肉と野菜が入ったスープのようなものを食べている。あれがここのメニューなんだろうか。


 僕と夜白さんは空いている奥のカウンターのような机に座って、食事が来るのを待つことにした。しばらくすると、受付にいたおばあちゃんが食事を運んできた。皆と同じ大きめの黒パンとスープだ。どうやらここの看板メニューのようだ。


 夜白さんを見ると、既に黒パンをちぎってスープに浸して食べ始めていた。なるほど、どうやら食べ方はそんなに変わんないみたいだ。


 僕も早速黒パンをちぎってスープに浸す。意外にパンが硬い。中までぎっしり詰まってるし、これならお腹に溜まりそうだ。たっぷり浸して、僕はパンを口に入れた。おいしい。スープはコンソメに近い味だ。日本のより薄い味だけど、これはこれでいいな。


 ちぎっては浸し、ちぎっては浸してパンを食べる。夜白さんと会話をしないまま、僕は異世界に来て初めての食事に没頭した。


 最後のパンを食べ終え、スープを飲み干した後、僕と夜白さんは会話をした。内容は、主に質問と応答。僕はこの世界の事をたくさん聞いた。これからここで生きていくには必要な情報だ。


 夜白さんの話によると、どうやらこの世界には人族以外にも様々な種族が存在しているらしい。その中でも有名なのは、エルフ族やドワーフ族、獣人族、妖精族、竜人族、魔人族などだ。まあよくあるよね、ゲームとか小説で。


 また、それぞれの種族を束ねる『王』と呼ばれる者達がいることも聞いた。彼等は同族の中でも段違いの実力を持っているらしい。そりゃ強いだろうね、『王』なんて呼ばれるんだから。


 世界情勢については比較的平和なようで、ここ数十年大きな戦争は起きていないらしい。でもそれはあくまで表面上であり、噂では魔人族が他の種族を滅ぼそうと企てているとか、狂った教会やそれを支持する国が人族以外の種族を滅ぼそうと企てているとか、種族同士の小競り合いがあるとか、挙げればきりがないらしい。どうやらこの世界はファンタジーであって更にバイオレンスにも満ちているようだ。これはそう簡単にはいかなそうだな、世界を救うっていうのは。


『凛君自身が考えることなの』


 転生するときのアテナさんの言葉を思い出す。なるほど、これが全部魔王とかの仕業なら簡単だった。根源である魔王を倒せばいいんだから。でも実際は違う。種族間で争いが起こるって事は、その種族間に問題があるって事だ。それを解決するには、その種族そのものをどうにかするしかない。信仰や伝統、法、そして悪事。こういうのを解決するしかないんだ。


 世界を救うのは簡単な事じゃない。それはファンタジーの世界でも同じだ。


 改めて自分の使命の重要性と困難さを確認していると、受付のおばあちゃんがそやってきて、そろそろ食堂を閉めると言った。周りを見るともうほとんど人がいない。どうやらかなりの時間話し込んだようだ。僕と夜白さんはおばあちゃんに夕飯のお礼を言って、部屋に戻る事にした。


 部屋に戻ると、夜白さんが僕に提案をしてきた。



















「凛君、一緒にお風呂入ろうよ」


「え」







凛君再びのピンチ!どうする凛君!

次回で宿の話は終わりになる予定です。

読んで下さった方は是非ブックマークと評価の方をよろしくお願いします!

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