街に入るようです。
どうも、画ビョウ刺さったです!
第7話になります!
いやーこの週はかなり頑張りましたね。
しばらく更新できないかも…。
テンションで書き上げたものですが、どうぞご覧下さい!
真上の太陽が傾きかけた頃。
「ほら、あれがクレルの街だよ」
僕と夜白さんはようやく街の近くまでやってきた。
ブルースライムの場所からはそんなに遠いように見えなかったけど、実際に歩くと結構な距離があった。
それに加え、着慣れていないゴスロリとブーツは元々少ない体力を消耗させ、何度も休憩を繰り返すことになった。
夜白さんは、「体力ないなー凛君」と言っていたが、これは単に歩き慣れていないだけだと思いたい。これでも僕は学校の長距離走では上位なんだ。体力はあるはず。
そしてようやく街に着いた時にはもう夕方近くになっていた。この世界でもちゃんと朝夕の時間の区別はあるらしく、街の近くに来るにつれて人と遭遇するようになった。
皆普通の人間、いや人族のようで夜白さんのような獣人は少ない。聞くと、獣人はこの街ではあんまり見かけないらしい。やっぱり人族より獣人の方が少ないのかな。
行き交う人々はちらちらと僕達の方を見てくる。珍しげに見てくる者、何故か笑いながら見てくる者、訝しげに見てくる者など様々な視線が突き刺さる。
まあ当然か。一人は侍じみた着物を着た獣人、もう一人はゴスロリを着た人族。注目されない方がおかしいだろう。
でも恐らく僕の事を男だって理解してる人はほとんどいないんだろうなー。大抵は美少女二人、もしくは姉妹が二人って見えてるんじゃないかな、種族違うけど。
そうして、行き交う人の流れに沿って歩いていると、ようやく『クレルの街』の入り口が見えてきた。
ここまで来ると道がある程度整備されていて、石畳の道はヨーロッパのそれを連想させる。街の周りは石でできた大きな外塀が立っており、モンスターの侵入を防いでいるようだ。その塀の中央には木造の大きな扉があり、その扉の近くに同じく木造の小屋が立っている。どうやらあれがこの街の門のようだ。検問を行っているのか開かれた扉の前に少数の人だかりが出来ていて、門番らしき人が人だかりに対して何事か言っている。
「さて、今からクレルの街に入るわけだけど、準備は大丈夫?」
夜白さんが僕に声をかけてくる。とりあえず分からない事を聞いてみよう。
「えっと、入る時って何か必要なんですか?」
「そだね、この街にいる人は通行証持ってるからすぐ入れるけど」
「僕通行証持ってませんけど大丈夫ですか?」
「知ってるよ。だから通行証を買わなきゃいけないんだ。確か5ガインだったかな。それに加えて入場料ならぬ入街税取られるからプラス15ガインで合計20ガインだね」
げ、お金払うのか。確かにテンプレではあるけど。どうしよう持ってないよ。ガインってお金の単位かな。
「お金取られるんですか…」
「もちろん。治安はいい方だしわざわざ無法者を入れる訳にはいかないからね。ある程度の私財を持ってる人しか入れないよ。それに一回払っちゃえば通行証無くさない限り普通に入れるよ。通行証が身分証の役目にもなってるからね」
なるほど、そう言われれば納得出来るな。ここは元の世界と違ってセキュリティシステムは全部人がやらなきゃいけない。それを考慮した上の門番や通行証、入街税なんだろうな。
頭では納得出来てもお金はない。どうしようと困っていると、夜白さんが声をかけてくる。
「もしかしてお金ないの?」
「はい…。多分持ってないです」
「多分って、ステータス確認してないの?ステータスに表示されてると思うけど?」
え、ステータス?ステータスが存在するの?
俯いていた僕は夜白さんを見上げる。夜白さんは首を傾げて僕を見ている。
「ステータス…あるんですか?」
「あるよ?見たことない?」
「どうやって見ればいいのか分からなかったので…」
「あーなるほど。本当は冒険者ギルドか教会で見てもらうんだけど、『鑑定』のスキルがあれば見れるんだよね」
鑑定?あ、そうか自分を鑑定するって事か!道理で「ステータス」って言ったり念じたりしても表示されないはずだ。
早速やってみようと、僕は夜白さんにスキルの使い方を聞いてみた。
「スキルって、どうやって使えばいいんですか?」
「うーん、スキルにはパッシブスキルって言って常に発動されてるやつと、アクティブスキルって言って使おうと思えば使えるタイプの2種類があるんだー。もしかして『鑑定』使おうとしてる?だったら自分に意識向けて鑑定って念じれば出来るよ」
なるほど、よしやってみよう!
僕は自分に意識を向け、小声で「鑑定」と唱えて念じる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
名前: リン・サオトメ
レベル:7
種族:人族
年齢:14才
性別:男
能力値:力18 耐久11 知性38 精神34 素早10
スキル:鑑定LV1 ドレスチェンジLV1 アイテムボックスLV1 火魔法LV1 水魔法LV1 風魔法LV1 土魔法LV1
称号:転生者 女神アテナの加護 叡智 女装の達人
スキルポイント:16P
所持金:20ガイン
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「おーいっぱい出てきた!」
出てきたステータスに思わずテンションが上がった。夜白さんは苦笑しながら「はいはい良かったネー」と心のこもってない称賛を送ってくれた。
ステータスを良く見ると名前以外にも、レベルや種族、年齢、性別、能力値、スキル、称号、スキルポイント、所持金が表示されている。真っ先に目がいったのは能力値の欄。うわ!僕知性と精神の数値がすごく高い。力と耐久の3倍くらいある。これってもしかして魔法の数値かな。他の数値は皆20いってないくらいか。いつの間にかレベルが7になってる。ブルースライム倒したからかな。スキルもいっぱいある。称号もだ。これって転生特典ってやつかな。
初めてのステータスに、僕は興奮気味に夜白さんに言った。
「夜白さん!ステータスが出ましたよ!」
「聞いた聞いた、テンション高いなぁ…。それでお金は持ってる?一番下の欄にあると思うんだけど」
あ、そうだった。僕は所持金を持ってるか知るためにステータスを開いたんだった。
僕はステータスの一番下をみる。そこには『所持金20ガイン』と表示されている。
「一応持ってますね、20ガイン」
「お、じゃあ大丈夫だね。普通に中に入れるよ」
良かったー。今日会った人にお金を借りる事にならなくて。これで何とか街の中に入れる。
ほっとした僕は、今度は自分のステータスについて詳しく見ようとしたが、夜白さんがそれを制する。
「はいはい、自分のステータス確認は後にしよ。気持ちは分かるけど、早く入らないと入れなくなっちゃうよ」
門限あるからさー、と言う夜白さんの言葉を聞き、僕はしぶしぶステータスを閉じた。「閉じろ」と念じると閉じるようだ。この世界では念じる事が大事なのかな。
そんな事を思いながら、僕と夜白さんは人だかりの列に並んだ。列の人達は僕達の事を見ると訝しげにチラチラと見ている。やっぱりこの服装は目立つな。かわいいから着替えないけど。
列の後ろの方から横にずれてひょいっと前の方を見ると、ほとんどの人が通行証を持ってるようで何かを見せてはすぐに中に入っていく。この様子ならさほど時間はかからないだろう。
列に戻ると夜白さんが笑みを浮かべながら待っていた。
「ど?結構混んでる?」
「そうですね、でもほとんどの人は通行証持ちみたいなのですぐに入れると思いますよ」
「そっかそっか、なら良かったー。たまにすごく時間かかる時とかあるんだよねー。そうなると宿とか取れなくなるし」
「へー、そうなんですか」
夜白さんの話に僕は相づちを打つ。どこの世界でも列は混むようだ。それにしても早くステータスを確認したいな。宿に着いたら確認してーーー。
「あ゛」
そこまで考えて、僕の口から潰れたカエルのような声が出た。
「何?どしたの何か踏んだ?」
夜白さんが僕の足元を見ながら言ってくる。ギリギリという音が出そうな動きで、僕は夜白さんの方に顔を向ける。
「あの…、夜白さん…」
「な、何?どしたの本当に」
「もしかしなくても、宿ってお金かかりますよね」
「そりゃもちろん。宿だからね」
「僕20ガインしか持ってないです…」
「…あ」
夜白さんも漸く理解したようだ。
そう、僕は現在20ガインしか持っていない。しかもその20ガインはこの街に入るための通行証と入街料で使い果たしてしまう。
つまり、宿代がない。そういうことだ。
アテナさん、何でもっとくれなかったんですか。せめて1日分の宿代だけでも…。
アテナさんに恨みの念を唱えている僕に対して、夜白さんがため息をついて言った。。
「しょうがないなー、宿代くらい貸してあげるよ」
「え…、いいんですか」
「一人も二人もそんなに変わんないよ。今日会ったのも何かの縁だしねー。それに凛君がいくら男でもそんな格好で外にいたら何されるか分かんないし」
苦笑いをする夜白さんが女神に見えた。ああ、ありがとうございます、夜白様。貴女やっぱりいい人だーー。
「ありがとうございます、夜白様」
「やめてよ、様づけなんて。宿代くらいで大げさだなー」
そう言って夜白さんは僕の肩に手を回して頭をぐりぐりしてくる。また花の香りが僕の鼻を刺激した。人が多いところでこういうスキンシップをされるのは少し恥ずかしかったが、今は宿代が心配なくなったことによる安心感の方が大きかった。
ありがとうございます、夜白さん。この恩は忘れません。冒険者になって稼いで必ず返します。
僕は世界を救う前に小さな借金を返そうと心に決めた。
「この利子は高くつくよ(ボソッ)」
「え?」
耳元で聞こえた不吉な囁きに、僕は夜白さんの顔を見る。
そこには先程の女神の笑みではなく、ニヤニヤとした黒い笑みを浮かべた夜白さんがこっちを見ていた。それはまるでネズミを袋小路に追い込んだ猫の笑みだ。何故だろう、嫌な予感しかしない。
「今夜は楽しみだなー、ねー凛君♪」
ニヤニヤしながら夜白さんは僕に言った。そして夜白さんが唇をぺろりと舐めたのを僕は見逃さなかった。
な、何をされるんでしょう僕は…。どうしよう、凄く怖いよ。姉さん助けて…。
ここにはいない姉さんに助けを求めるが、当然姉さんは現れない。僕の背中には冷たい汗が大量に流れていた。
♪♪♪
列が進み、漸く僕達の番が近くなってきた。
門番に呼ばれるまで僕はどうにかして今すぐお金を稼げないかと考えていたが、何も浮かばなかった。こういう時にファンタジー知識をフル動員しても浮かばないのは何故だろう。
正直夜白さんの昼のスキンシップからするに夜は更に凄い事になるのは明白だった。何度かそういう想像も浮かんだが、異世界に来てその日の夜に卒業論文を書く事になるのは避けたい。
だって、まだ全然お互いの事を知らない。名前しか知らない。そんな人とそういう風になるのは僕は嫌だった。
ちらりと見ると、夜白さんは期限がいいのか鼻歌を口ずさんでいる。ふと、僕の視線に気付いたのか、僕の方を向くとニヤッとさっきの黒い笑みを浮かべてくる。
喰われる。頂かれる。僕はそう思った。
「よし、行っていいぞ。さぁ次の奴は前に出ろ!」
男の人の野太い声に、僕は夜白さんから視線を前に戻すと、もう僕の前には2人しかいなかった。2人は商人なのか、大きな皮袋を背中に背負っている。
「凛君、そろそろお金出しておいて」
「あ、はい」
言われた通り、僕はお金を出そうとするーーーが、どう出せばいいのか分からない。このゴスロリにはポケットがついていない。ならばお金はどこにあるのか。どうしよう、分からない。
夜白さんに聞こうとしたが、やめた。何でも頼るのはダメだ。これくらい、自分で解決しなくちゃ。
ふと、さっきの鑑定のように念じれば出でくるのでは?という発想に至り、僕は頭の中で「20ガイン20ガイン出して」と念じる。
すると、左手に何か違和感を感じ、見てみると小さな皮袋を握っていた。
「!」
中を見てみると、5円玉サイズの銀貨が出てきた。数えると丁度20枚。鷲みたいな鳥の紋様がついてる。これがそうだろう。無事僕は20ガインを取り出す事が出来た。
「よし、通っていいぞ。さあ次!」
取り出すとほぼ同時に前の2人が扉の向こうへと歩いていく。そしてついに僕達の番がきた。
目の前には190センチはあろうかという長身でがっちりした体格の門番が立っていた。体は鎧で完全武装され、顔まできっちりと兜を被っているせいで表情は分からないが鋭い目つきがこちらを見下ろしているのは分かった。手には体格に見合った鋭い槍を持っている。それを見るだけでこの人が常人ではないことが素人の僕でもよく分かった。
騎士。僕の頭に浮かんだのはそれだった。
「やー門番、お勤めご苦労様」
そんな門番に対し、夜白さんはいつものマイペースな挨拶をした。その挨拶に対し、門番も夜白さんに言葉を発した。
「夜白か。今朝はギルドの依頼で街の外に行ったのだったな。どうだ?依頼は完遂してきたか?」
「んー。まーいつも通りかな。失敗はしてないよ」
「お前が失敗したら、この街の奴等では完遂出来んだろうな」
ふん、と鼻を鳴らす門番。怒っているというよりはどうやら笑っているようだ。顔が見えないとまるで表情が分からないな。
どうやら2人は知り合いのようだ。今の会話だけでそれぐらいは分かった。どういう関係なんだろうか。
そんな事を考えていると、門番が僕の方を向いた。思わずびくっとした。この人目つき怖すぎ。夜白さんが猫ならこの人絶対に狼だよ。門番は僕の事を観察するように見て、再び夜白さんの方を向く。
「夜白、この娘は誰だ?こんな服を着た娘はこの街では見たことがないが、貴族の娘か?」
「この子はねー、私のパーティのメンバーだよ。今日依頼先でたまたま会ってね、中々筋が良さそうだからいいかなーって思ってさ」
え、パーティ?何それ。というか、そんな話聞いてないですよ夜白さん。
困惑しながら夜白さんの方を向くと、夜白さんがウィンクをしてきた。なるほど、話を合わせろって事ですか。
ねー、と同意を求めてくる夜白さんに、僕はゆっくりと頷いた。それを見た門番は鋭い目つきを夜白さんに向ける。
「この娘を?…夜白、まさか無理矢理引き入れたのではないだろうな?もしそうなら只ではおかんぞ」
「嫌だなー、そんな事するわけないじゃん。ちゃんと同意の上だよ?ねー凛君」
同意してないですね。まあちゃんと話を合わせますけど。
夜白さんの言葉に続いて僕は頷く。門番は手を口元に当てて考える素振りをする。そして門番は僕に言った。
「おい娘。もし夜白に何か不快な事をされたらいつでも俺に言え。味方になってやる」
うわーこの人めっちゃいい人だーー。目つき怖すぎだけどめっちゃいい人。普通初対面の人にこんな事言わないよね。カッコいいな。門番ではなく騎士様と呼ぼう。
心の中でときめいていると、夜白さんが不満気に門番もとい騎士様に言った。
「ちょっと門番、まるで私が凛君に不快な事するような言い分やめてよ。そんな事するわけないじゃん」
「だがもしもということはある。特にお前なら尚更な」
「信用ないなー。大丈夫だよ、お互い気持ち良く解決するから」
「それが心配なのだかな、こんな小さな娘に手を出すなよ夜白」
はぁーとため息をつく騎士様。というか気持ち良く解決ってなんですか夜白さん。後で詳しく聞かせてもらいますよ。
騎士様の態度に夜白さんはむー、と頬を膨らませていたが、突然真面目な顔に変わった。
「大丈夫だよ。この子に不快な事なんて、絶対にしないしさせない。前みたいにはもうならないよ」
「…そうか、なら良い」
どこか決意を込めた夜白さんの言葉に、騎士様は頷いただけだった。前みたいにってどういう意味だろう。昔2人の間で何かあったのかな。というかこれフラグっぽい。
「それで娘、この街に入るには通行証の代金と入街税を含めて20ガイン必要なのだが持ち合わせはあるか?」
騎士様の言葉にはっとなり、僕は持っていた皮袋を渡す。騎士様はそれを受け取り中身を確認すると、うむと頷いた。
「確かに20ガインは受け取った。では通行証を渡そう。なくすと再び5ガインかかるからな。注意せよ」
騎士様はそう言うと、20ガインが入った皮袋を左手で握りこむ。次に開いた時にはもうその皮袋は手の中にはなく、代わりに厚みのある木の板みたいな物が手の平に乗っていた。
受け取ると、そこには読めないが何か大きな文字が書いてある。多分通行証って書いてあるのかな。裏には表よりも小さな字で文章らしき物が横書きで書かれている。
「さぁ、それを持って街に入れ。後がつっかえているのでな」
そう言って、騎士様は親指を立てて背後を指差す。早く街の中に入れと言うことだろう。
僕は騎士様に頭を下げてから、夜白さんと一緒に街の門をくぐった。
♪♪♪
クレルの街に入るともう太陽が沈みかけていた。僕は夕陽で朱く染まった街を見て、クレルの街は石造りと木造が入り雑じっているなと思った。
外の塀を見たときは中も全部石で造られているのかと思ったが、意外にも木造の建物が普通にあった。規則正しくというわけではないが、それでも木造の建築物は多かった。
石畳の舗装された道を歩きながら、僕は夜白さんに話しかける。
「夜白さんはあの騎士…じゃなかった、門番さんと仲が良いんですか?」
「ん?ああ、そだね。たまーに飲みに行く位の付き合いではあるかな。…それにしてもさ、あの門番最後まで凛君を女の子だと思ってたよねー」
くくく、と笑いながら夜白さんは言った。確かに騎士様はずっと僕の事を「娘」って言ってたな。もしかして本当に気付かなかったのかな。
「夜白さんは僕が女の子に見えますか?」
「見た目は完全に女の子だねー。匂いとか声の高さとかは獣人くらいしか違いが分からないから、他の人が見たら普通に美少女にしか見えないと思うよ」
そっかー、僕の女装は異世界で通じてるのか。なんか嬉しいな。しかも美少女っていうのがまた嬉しい。姉さんの言ってた事は嘘じゃなかったんだなー。まあ嘘つくとは思わないけど。
元の世界にいるであろう姉さんの事を考えながら、僕は歩く夜白さんについていく。
ふと、先程のパーティの話を思いだし、夜白さんに聞くことにした。
「そういえば夜白さん。さっきパーティがどうとか言ってましたけど、あれって何の話ですか?」
「あーあれ?只の嘘だよ。あの門番って昔王都の騎士隊長やってたから目つきと勘が鋭くてね。凛君が何か喋って転生者ってバレたら面倒そうだったからああ言ったの」
なるほど、そう言うことか。つまり夜白さんは僕の事を思って言ってくれたのか。ありがたいな。というか、あの人本当に騎士だったんだ。しかも王都の騎士隊長。やはりあの人は騎士様と呼ぼう。
騎士様の事を改めてすごいなーと思いながら、僕は夜白さんについていく。
「…ま、他にも理由はあるけどね(ボソッ)」
「え?何か言いました?」
「なーんにも言ってないよ。それより今日はこのまま宿に行こう。ギルドへの報告は明日でいいやー」
何か夜白さんが言ってたような気がしたが、まあいいや。それより宿に行くという夜白さんだが、本当にこのまま行っていいのかな。普通報告って先に済ませない?
「夜白さん、今依頼がどうのって言ってましたけど、報告に行かなくていいんですか?」
「いいよいいよ。どうせ報告は明日まででいいんだー。だから今日はもう宿行こう。さっさと宿に行こう」
笑顔でそういう夜白さんに、僕は本当にいいのかなーと思いながら、僕は夜白さんの隣を歩く。
「それで、宿ってどこに行くんですか?」
「ここ」
「ここ!?」
夜白さんが指差す方を見ると、目の前に石造りの大きな建物があった。二階立てみたいだ。でも他にこれといって特徴がない。三角屋根の建造物といった感じだ。
「ここ…宿なんですか?」
「見た目はこんなだけどいい宿だよ。安いしご飯あるし。さー行くよー」
そう言って、夜白さんは宿の扉へと向かう。僕もそれに遅れないようについていった。
中は外観で見たよりも広く、落ち着いた雰囲気の宿だった。手前に受付をする場所があり、あちこちに木で作られたテーブルと椅子が置かれ、奥にはバーというより飲食店のカウンターのような物がある。もうすでに何人かの人達がテーブルで食事をして談話しているようだ。
「じゃ、受付行こっか」
宿の中を見ていた僕に、夜白さんが声をかける。一緒に受付に行くと、60代くらいのおばあちゃんが受付のカウンターに立っていた。
「おやいらっしゃい、2人だけかい?」
「うん、2人だよ」
「今日は泊まりにきたのかい?それとも食事かい?」
笑顔で聞いてきた受付のおばあちゃんに、夜白さんが答える。
「両方かな。食事もするし、この宿にも泊まる予定」
「そうかい、何泊するつもりだい?」
「1泊かな。今日だけだよ」
おばあちゃんと夜白さんのやりとりを見て、僕はこの辺は世界が変わっても同じだな、と思っていた。今でこそホテルや旅館などが主流だが、小さな宿の受付はどこもこんな感じなんだろう。
「そうかいそうかい、後ろのお嬢ちゃんはあんたの妹かい?」
「あ、僕は…」
「うん、まーそんな所かな。ね、凛君」
答えようとしたら夜白さんに言われてしまった。見るとまた夜白さんがウィンクをしてくる。また、話を合わせろって事かな。でも何で妹なんだろ。夜白さん獣人で僕人族だから姉妹なんてすぐおかしいって思われると思うんだけど。
夜白さんの意図は分からないが、そうしろというならそうしよう。僕はおばあちゃんに頷いた。
「そうかい、それじゃあ部屋は同じの方がいいかい?それとも2部屋別々にするかい?」
どうやらおばあちゃんは本気で姉妹だと思ったようだ。種族違うからすぐ分かると思ったんだけどな。意外にバレないのかな。でも本当に妹と思ってるせいで同じ部屋を提案されちゃったな。流石に夜白さんも断るだろう。そしたら僕も一人で大丈夫って言おう。
夜白さんがチラッとこっちを見る。また話を合わせろって事かな。そう思って僕は夜白さんを見る。
ニヤリ
一瞬見せた夜白さんの黒い笑みに、僕は戦慄した。ヤバい、これはヤバい。あの時と一緒だ。夜白さん、貴女何するつもりですか。
冷や汗を流す僕を知り目に、夜白さんは太陽のような良い笑顔でおばあちゃんに言った。
「いや、2人部屋じゃなくて1人部屋でお願い出来るかな。凛君は私と一緒に寝るからベッド1個あれば足りるんだー」
凛君ピーンチ!
私的にはうらやましい限りですが…。
次回は更新が遅れるかもしれません。
話どうしよう。テストどうしよう。