街までの道のりのようです。
こんにちは、画ビョウ刺さったです!
第6話になります。
まさかこんなに早く投稿出来るとは…。
正直自分でも驚いております。
どうぞご覧下さい!
「凛君ってさ、もしかして転生者ってやつかな?」
夜白さんの言葉に僕は一瞬驚いたけど、
「ええ、そうですよ。」
特に隠すことなく応えた。
なぜ隠さなかったのかというと、正直隠し通せる気がしなかったからだ。
さっき、自分が転生者である事は一応隠そうと思いながら僕は夜白さんと話をしていた。恐らく夜白さんはその話の中のどこかに僕が転生者ではないかと疑う要素があったんだと思う。もしかしたら、その前の魔核のやり取りからかもしれない。
いつ転生者であるという確証を夜白さんに与えたのか。それが分からない以上誤魔化すことは出来ない。
そもそもアテナさんに僕が転生者である事は隠しておいてと言われてないし。だったら別に一人くらいならバレてもいいんじゃないかなー、なんて思ってたりする。
僕のあっさりとした答えに、夜白さんは驚いたように目を大きくする。驚いた表情のまま、夜白さんは伺うように聞いてくる。
「えっと、結構あっさりバラすんだね。ちょっとは誤魔化すのかなーと思ったんだけど」
「本当は誤魔化したかったんですけど、どこで僕が転生者だって事がバレたのか分からないので」
誤魔化しようがないです、と苦笑いして僕は夜白さんに言った。
夜白さんはしばらく僕を見つめ、やがてあてが外れたようにはぁ、とため息をついた。
「あーあ、君が誤魔化したら私の名推理を披露したんだけどなー。凛君て言ったっけ?君諦め早すぎるよ?」
「やっぱり僕、なんかバレるような事言ってたんですね」
夜白さんの言葉に僕は確信した。やっぱりバレるような事を口走っていたみたいだ。でも何がいけなかったのかな。
僕の疑問を含んだ視線に、夜白さんは笑顔を見せながら左指を3本立てる。
「私が君の事を転生者って思ったのは全部で3つかな。聞きたい?私の名推理」
「是非お願いしたいですね」
「いいよー。ってでもここじゃモンスターいて危険だし、街に着いてからにしない?ほら、あっちに見えるのがそうだからさ」
そう言って、夜白さんは僕の背後を指す。振り返ると、目を覚ました時に見た建物が見える。
僕は夜白さんに案内される形で街に向かうことにした。
♪♪♪
街に向かいながら、僕は夜白さんと会話を続ける。夜白さんは僕の隣をゆったりと歩いてくれるので簡単に話が出来る。
あの後、ブルースライムの亡骸は魔核を取ってしばらくしたら消えてしまった。夜白さん曰く魔核を取ると大抵のモンスターは活動を停止して消えてしまうらしい。そのため魔核以外の素材を手に入れるには魔核を取る前、もしくは取ってすぐに回収しないといけないらしい。
広い草原ではあるけれど、少し歩みを進めると少し慣らされた道があった。これは所謂街道らしく、王都に向かう道以外は大体こんな風に簡単に土で慣らした道が多いらしい。
こんな風に僕は夜白さんに話を交えながら、街を目指している。
「やっぱりあれが街だったんですね」
「なーんだ知ってたのかー。転生者って何も知らないのかと思ってたよ」
「まあこの世界の事を何も知らないと言えばそうですね。転生者って、もしかして結構いるんですか?随分接し慣れてる気がしますけど」
僕は転生する前のアテナさんの話を思い出していた。確か、アテナさんは僕以外にも転生させた事があるって言ってたような。
僕の質問に、夜白さんはふるふると首を振った。
「ううん、全然いないよ。私自身転生者に会ったのは初めてだし。この人は転生者だって噂はあるけど、そういう人も全然少ないからねー。本物かどうかさっぱりって感じ」
「そうなんですか」
夜白さんの答えに、僕は少し意外に感じた。まあ考えてみれば僕の前に転生した人がまだ生きているっていう根拠もないし、何より転生した人が全員ハッピーエンドって事でもないだろうし。当然といえば当然か。
納得した僕は、さっきから気になっていた事を夜白さんに聞くことにした。
「あの、夜白さんはその、獣人なんですか?」
「そだよ。猫の獣人なんだー。もしかして獣人見るの初めて?」
「はい、僕のいた世界にはいませんでしたから」
コスプレで猫耳とかつけてる人はいたけど。…僕?もちろんつけたことありますとも。何か?
「そっかー、じゃあ私が凛君の初めてを頂いたってことだね?」
「その言い方は誤解を招くのでやめません?」
なぜかドヤ顔で言う夜白さんに僕は思わずつっこむ。思春期真っ盛りの僕にそういう単語はいけないと思う。
「ん?ん?何が誤解を招くのかな?もしかして凛君やらしい事考えちゃった?凛君は変態さんだなー」
ニヤニヤと意地悪い笑顔に、僕は苦笑いしながら反論する。
「夜白さん、僕をからかって遊ばないで下さいよ」
「あはは、ごめんごめん。でも今の反応はまだ大人の階段上ってない感じ?」
「僕まだ14ですよ?そういうのは早いでしょ」
僕の童貞発言に、夜白さんは眉をひそめた。
「え?…あーそっか、もしかして君のいた世界って14才はまだ成人してないって扱いなのかな?」
「こっちでは違うんですか?」
「ここでは13才で成人扱いされるよ。だいたい皆それぐらいで家族から一人立ちしたり家業を継いだりするね」
それじゃあ、ここでは僕は立派な大人って事なのか。なんか元の世界とのギャップというか、常識の違いがあって困惑する。というか、13才って中学1年生ってこと?学校行かなくていいのかな。
「学校とかないんですか?僕のいた世界では15才までは学校に行かなきゃいけなかったんですけど」
「あるっちゃーあるけどね。でも学校なんて貴族か大商人の子供達が行くような所だし、普通の家の子はほとんど行かないよ。といか、お金がかかるから行けないね」
なるほど、どうやら大分元の世界と常識が違うみたいだ。これは覚えるのに苦労しそうだ。それにしても聞けば聞くほどこの世界はファンタジー感溢れてるな。嫌いじゃないけど。
そういえば、年齢の事といえば、
「夜白さんはもう成人してますよね」
「もちろんしてるよー。してないと冒険者なんてなれないしね。ちなみに凛君から見たら私っていくつに見える?」
「そうですね…。20代には見えますけど、当たってます?」
「おー大体正解。正確には21才だよ。惜しかったねー」
ニコニコ笑う夜白さんだったが、唐突に不満気な表情を浮かべた。
「でも凛君?女性に対して年齢を聞くのは感心しないなー。いくら女性経験がないとはいえそういうのはマナー違反だよ?」
「すみません、でも夜白さんならいいかなーって思ってつい」
「ほほう、それは君の信頼なのか無頓着なのかによって私の返答も変わるんだけどなー」
にやっと怖い笑みを浮かべ、夜白さんの右手がすーっと刀の柄に伸びていくのを見て僕はあわてて首を振る。
「いやいやいや!ちゃんとした信頼ですよ!ええ断じて無頓着な感情ではありませんので!」
「あっはははは!凛君は本当に面白いなぁ、ついからかっちゃうよ。反応良すぎ」
夜白さんの笑ってない笑みがいつもの笑みに戻り、右手が刀から離れていくのを見て、僕はほっと息をつく。
「でも本当に信頼はしてますよ?夜白さんの事」
「お?改まってどしたの。そんなに怖かった?」
「まあ焦りはしましたけどね。でも夜白さんを信頼してるっていうのははっきり言っておきたかったので」
「真面目だなー凛君は。でもそんな簡単に信頼していいの?私とはまだ会って少ししか経ってないけど?」
「そうですね。でも夜白さんと話してると楽しいですし、僕が転生者って分かってても態度とか変えませんし、何より夜白さんは優しいですからね」
「え」
ピタリと、夜白さんは歩みをを止めた。僕はそれに気付かずに歩きながら話続ける。
「わざわざ魔核を取ってくれましたし、街まで案内してくれますし、僕の知らないことを隠すことなく教えてくれますし。夜白さんにとってはそれが当然かもしれませんけど、僕にはそれがとても嬉しかったんですよ。こっちに来て知り合いもいませんし、誰を頼っていいのか分からなかったですし」
「…」
「だから夜白さんは…、ってあれ?夜白さん
?」
いつの間にか夜白さんの姿が見えない事に気付き、僕は後ろを振り返る。
夜白さんは立ち尽くしたように棒立ちで、僕を見ている。目を大きく開いてそれはもう盛大に驚愕したかのように。
驚いた瞬間の猫ってこんな感じかなー、なんて思いながら僕は夜白さんに声をかける。
「あのー夜白さん?どうしました?」
「…え、あ、あれ?」
夜白さんはパチパチと瞬きをして我に帰ると、僕の顔を見て苦笑いをした。
「えと、もしかして呼んだ?」
「もしかしなくても呼びましたよ?どうしたんですか夜白さん、僕また何か言いました?余計な事」
僕の言葉に、夜白さんはきょとんとした顔をして、
「…ぷっ、くふふ、あはははははははは!」
「え?えー?あのー夜白さん?大丈夫ですか?」
急に笑いだした。大笑いだ。
豹変した様子の夜白さんに僕はどうしていいのか分からず困惑する。一体どうしたっていうんだ。これ僕のせいかな。えー僕何かした?もしかしてなんかのフラグ立てた?イベント発生?何ルート?
困惑し過ぎて僕自身もおかしくなってきた時、夜白さんは笑いを止めて目尻の涙を指でぬぐいながら近づいてくる。
「はー笑った。もう、凛君は本当に面白いなぁ。転生者っていうのは皆こうなの?」
「いやーどうでしょう。他の転生者に会ったことがないですし」
皆こう、というのはどういう意味だろう。そう思いながら僕は無難な答えを伝える。
「そっかー、そうだよね。…うん、多分凛君が特別なんだろうね」
「?」
なんか一人で勝手に納得されてるようだ。おいてけぼり感半端ない。夜白さんは本当にどうしたんだろう。僕マジで何言った?
困惑した僕に、夜白さんはいつもの笑顔で僕の肩を叩いてくる。
「ほらほら!さっさと街に行くよ凛君。時間は待っちゃくれんのだー!」
「痛い痛い!痛いですよ夜白さん。本当にどうしたんですか、ぼーっとしたり笑いだしたりテンション高くなったり」
「まあまあいいじゃんいいじゃん?気にしない気にしない!」
いや明らかに貴女テンション可笑しいでしょ。
腹の底から出かけた言葉を必死に飲み込みながら、僕は前を向いて街に歩こうとしたが、
むぎゅ
歩き始めた途端に夜白さんが後ろから抱きついてきた。
「ちょ、夜白さん!?何してるんですか!?」
「んー?んふふ、抱きついてるんですよー」
「マジでテンションおかしいでしょ!!」
せっかく飲み込んだ言葉を僕は吐き出さずにはいられなかった。だっていきなり抱きついてくるんだもん。後ろからとは言え思春期の中学2年生に服ごしとはいえ年上の肌の感触は精神上よろしくない。
魔核を取ってもらう時に嗅いだ花の香りがすぐ近くでする。寄りかかっているのか夜白さんの顔が僕の顔のすぐ横に見える。息遣いが分かる。そして何より背中に感じる柔らかい感触のせいで顔が真っ赤になる。体が熱くて仕方ない。
「ちょ、本当に、離れてください!」
「んー?もしかして照れてる?凛君は可愛いなもー」
「いや照れてるというか恥ずかしいのもそうですけどその、背中に当たってますから!」
「ふふふ、あててんのよ」
「なぜそのネタを!?」
必死にバタバタしていると、流石に諦めたのか、夜白さんは僕を解放してくれた。
「はぁーはぁー、もう悪ふざけにしては度が過ぎますよ…」
「あはは、まあそれに関しては私が猫の獣人だって事で納得してよ」
「それ関係あるんですか?」
あるよー、と笑う夜白さんに息を整えながら僕は迫力のない真っ赤な顔で睨む。
しかし夜白さんは反省した様子を全く見せずに笑顔を見せる。でもちょっと顔が赤いから向こうも恥ずかしかったのかな。ならやらなければ良かったのに。
「猫は甘えたがる生き物なんだよねー。親しい相手には特にね」
「僕まだ会って1時間も経ってないんですけど」
「それは凛君のさっきの私に対する返答と一緒だよ。少なくとも私はこれだけ君を信頼してるって事なんだから」
うーん、嬉しい言葉だけどなんか丸め込まれてないかな。なんか信頼っていうか求愛に近いような…。
そこまで考えて、いやいやと自分の考えを否定する。いくら異世界だからって小説の読みすぎだ。そんなおいしい展開がコロコロ転がってるはずない。そもそも今の僕はーーー。
ふと、夜白さんは僕の事を女の子と思っているのではないかという結論に至った。今の僕は端から見たらロングヘアのゴスロリ娘だ。なんせアテナさんに「いっそ女になったら?」と言われた程だ。勘違いは十分あり得る。さっきのは多分僕を女の子と思ったが故の行動だそうに違いない謎は全て解けた!
僕は一人で納得した。そしてこのあとの行動を模索する。
そうと分かれば話は簡単だ。夜白さんに僕が男だって事を伝えればいい。そうすればもうあんな過激なスキンシップはなくなるだろう。男としては嬉しいがあの恥ずかしさには勝てない。ああいうのはもっと大人になったらにしよう。
考えがまとまり、僕は夜白さんに間違いを伝えた。
「あの夜白さん、僕って実は男の子だって知ってました?」
「うん知ってるよ」
「…え?」
「凛君が男の子って事でしょ?知ってたよ?なんで?」
な、なんだってーー!?!?
僕の完璧な論理はいとも簡単に崩された。僕の予想では男だと知って自分の行動を思い出し、夜白さんが赤面するというシチュエーションだったはずだった。
しかし、実際は赤面する事なくあわてる事もなく衆知の事実のように「うん知ってるよ」と返された。
これは一体どういう事だってばよ。
僕は夜白さんになぜ知ってたのかを聞いた。
「あの、夜白さん。何で僕が男だと分かったんですか?」
「え、声と匂いだよ。高い声だけど良く聞けば女の人のそれじゃないし、逆に匂いの方は男の人の匂いだったし」
なるほど、夜白さんが獣人だった。それが答えですか。
納得出来る返答に、僕は何も言えなかった。そういえば獣人は獣と同じように目とか鼻とか耳がいいって小説とかゲームであったな。
…あれ?じゃあ夜白さんは僕を異性として知っててあんなスキンシップを?それともあれはこっちでば信頼の合図みたいなものなのか?それとも、もしかして本当に求愛なのか?
結局夜白さんの行動に何の結論も出せないまま、僕と夜白さんは街を目指して歩き始めた。
白昼堂々なにしてるんでしょうね。
そして夜白さん、なぜそんなチョロインのようになった…。
今一キャラの性格や言動が難しいですね、自分のキャラなのに。
次回はようやく街に到着します。
出来れば主人公のステータスを出したいな…。