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説明と質問のようです。

こんにちは、画ビョウが刺さったです!

2話目の投稿です!

この度コメントをいただきました、ありがとうございます!

では、温かい目でご覧ください!

 




 異世界転生。


 それは現実世界で死んでしまった人間が、別の世界に記憶を持ったまま転生してしまうこと。


 理由は様々。


 神様による手違い、あるいは間違いで死んでしまったり、異世界の王国が勇者として召喚したり、あるいはゲームをやっていて突然そのゲームの世界に入り込んでしまったなど、実に様々な話が存在する。


 大抵の話には、転生する人には特別な能力が付与されている。魔法が使えたり、ドラゴンを一撃で倒せる剣だったり、ハーレムを作る能力だったりする。


「チート」とさえ捉えられるその能力を駆使し、転生者たちは異世界で生きていく。


 中には転生しても能力が手に入らず、とても苦労したり、無念のバットエンドを迎える人もいるが。





「ーーーという感じですね。僕が知ってる異世界転生というのは」

「まあ、だいたいその認識で間違ってないわ」


 目の前に浮かんでいる光の球ことアテナは、ふわふわと漂いながらそう言った。


 その言葉を聞いて、少しばかり長く話した僕はふぅ、とため息をつく。




 1時間程前のこと。


 僕は、この世界の神と呼ばれる存在に出会った。


 その神は、僕に異世界に行って世界を救ってほしいとお願いしてきた。


 まるで近くのコンビニでパンでも買ってきてといわんばかりに軽い調子だった。


 だが、いくら神の頼みとはいえ、一般人の僕が世界を救うなんて到底不可能なわけで。


 どう答えていいか分からず、頭を悩ませていると、



「まあ、とりあえず座りなさい。少し長い話になるから」



 そう促され、僕はその場に座り込む。


 光の球、もとい神様は話しやすいようにするためか僕の胸の高さまで下がってきた。


「……」


「……」


 無言。


 お互いに無言。


 座ったはいいものの、僕も神様も何も話さない。


 そもそも、僕が何を話せばいいのか分からない。


 あ、でもある。ひとつだけ。これは言っておかなければまずい。





「えーと、僕の名前は早乙女凛です。あの、よろしくお願いします」

「え?ああ、そうね、よろしく。私はアテナよ」


 知ってます。先程聞きました。



「アテナさんは、その…ご趣味は何でしょうか」

「そうねぇ、最近はぬいぐるみを集めてるわ。特に猫ちゃんのぬいぐるみがお気に入りなの」

「あ、そうなんですか」

「ええ、そうなのーーーって何よこれ。何の話をしてるのよ」

「趣味の話ですね」

「その通り、ってそういうことを聞いてるんじゃないわよ!」


 アテナさんがピカピカと点滅して声を荒げる。若干上下に揺れてるのを見ると怒ってるようだ。


 でも、そっか。神様も趣味があるんだ。意外だ。しかもぬいぐるみって。猫ちゃんって。

 ん?ということは、もしかしてアテナさんって……




「アテナさんって、女性なんですか?」

「他に何に見えるのよ」




 LED電球ですね、目がチカチカします。


 って言ったら怒るだろうなぁ。言わないけど。まだ死にたくないもん。


「僕には光の球にしか見えないですね」

「え?あ、そっか。貴方にはそう見えるのか」


 そう言って、アテナさんはくるくるとその場で回る。


 嘘は言ってない。決して新品のLED電球なんて思ってない。



「なんか失礼なこと考えてない?」



 なぜバレたし。


 いつの間にか回るのをやめていたアテナさんはそう言うと、今度は僕の周りをくるくると周回する。


「いい?今の貴方には私が光の球にしか見えないかもしれないけど、本当はすっっごく美人なんだから」

「そうなんですか?」

「そうよ!」


 一際大きな声を上げるとアテナさんは僕の前で止まり、今までよりも輝きだした。


「髪も金の糸のようにきれいで、顔もそこらのモデルなんかよりも全然整ってて、肌も透き通るような白さなのよ?まさに美の女神と言っても過言じゃないわ!」


「そ、そうですか…」


 換えたばかりの電球並みに元気に光始めたアテナさんは、さっきよりも自信というか自尊というか、そういった物が混ざりあった堂々たる態度で僕に向かって己れがどれだけ美しいか語ってきた。


 正直もうただの大きな電球にしか見えない。が、相手は神様、いや女神様だ。


 美の女神というからには、さぞ美しい姿なのだろう。もしかしたら、今言ってたことは本当のことなのかもしれない。


「それにーーー」


 どうやらまだあるようだ。金髪色白美人なんて素晴らしい属性を複数持っているのに更にあるというのだろうか。正直もう十分な気がーーー。






























「む……胸だって……あるし。巨乳……だし」



























 うん、これは嘘だ。間違いない。この人貧乳だ絶対。


 なぜそう思うのか。簡単なことだ。


 本当に巨乳の人は自分では言わない。


 姉さんもそうだった。


 姉さんはかなりのものを持っておられた。


 よく肩が凝るなーと言っていた。アレの重みで。


 最近は90を越えたとかおっしゃられてた気がする。もはや戦略兵器だ。


「肩とか凝ったりするんですか?」


「肩?別に凝ってないけど、なんで?」


 ほら、やっぱりね。




 ♪♪♪



「話が大分それたわね」


 こほん、とアテナさんは咳払いをして言った。


 確かに今まで自己紹介と趣味とアテナさんの身体のことしか話してない。


 身体の話って聞くとどうもセクハラな気がするのは思春期真っ盛りの僕だけかな。



「じゃあ今から真面目な話をするわ。最初に聞くけど、『貴方は異世界に転生する』ということについてどれくらい理解してるのかしら?」


 アテナさんの質問に対し、僕は少し考える。


 異世界転生か…。小説とかそういうので良く読んだけど、それが本当に正しいのか分からないな。


 言ってしまえば、あれは創作の中の産物。筆者の体験談ではなく、筆者の想像だ。


 それが本物の異世界転生と同じとは限らない。


 僕の思っていることを察したのか、アテナさんは続ける。



「別に当たってる当たってないの話ではないの。ただ貴方の知ってる異世界転生とこれから話す内容がどれくらい違うか知りたいだけだから」


 なるほど、そういうことか。


 意見のすり合わせならぬ、知識のすり合わせか。


 アテナさんの言ったことに対しそう捉えた僕は、僕が知ってる異世界転生について話始める。



「そうですね…。僕が知ってる異世界転生というのはーーー」








 ここで、話は冒頭に戻る。


 アテナさんに異世界転生について聞かれた僕は、自分の知ってることを話したわけだ。


「あの、間違ってた所とかなかったですか?」


「大方正解よ。でも念のために私から異世界転生について説明するわ」


 そう言うと、アテナさんはこほん、と咳払いをして話始めた。












「まず最初に言っておくけど、この異世界転生は元の世界、貴方でいう住んでいた地球という場所において、生命活動の停止、つまり死んだ人間でしか出来ないの」


「……」


 やっぱりか、と僕は思った。


 不思議と驚きはしなかった。


 自分の知識でも、主人公が死んで転生するという話が多かった。


 主人公が一度死んで、生まれ変わって、その過程で特殊な能力を得ても不思議はない。




 少なくとも物語としての設定ならば、それは何もおかしくない。



 でも、転生やっほー!!とか、テンプレきたこれ!とか、物語の主人公達はメンタルが強いと思う。


 実際に目の当たりにすると、自分が死んでいると告げられると、言い難い喪失感を感じる。


 僕が最初に思ったのは、家族のことだった。


 父さんは、母さんは、姉さんは。


 僕の死を聞いて、どう思ったんだろう。


 泣いてくれただろうか。


 悲しんでくれただろうか。


 いや、その前に僕の死体はーーー。



「あれ?」


 おかしい。


 アテナさんは「死んだ人間でしか転生が出来ない」と言ったはずだ。



 なのに、僕には死んだ時の記憶がない。



 僕は自分の身体を見渡し、動かしてみる。


 どこも異常はない。痛みも傷も。


 至って健康だ。どういうことだろう。



 首をかしげていると、アテナさんが察したように言った。



「貴方が死んだ時の記憶は消させてもらったわ」


「え」


 アテナさんの言葉を聞いて、僕は彼女の方を見る。



 なぜ、どうして。



 僕の視線にはそういう疑問の念が込められていたと思う。


 僕の視線にアテナさんは、


「記憶が残ってると、フラッシュバックが起こるわ。死んだ時のことを思い出すの。そうなるとその時のショックのせいで泣き出したり呆然としたり、吐いたりしてろくに話が進まないの。中には理不尽に怒り出したりする人もいるわ。テンプレだって喜ぶ変な輩もいるけど」


 とため息をつきながら話した。



 その答えに、僕は納得してしまった。


 確かに、自分の死んだ時の記憶など、普通思い出したくないだろう。



 僕は一般人だ。メンタルはそこまで強くない。


 そのときのことを思い出したら、アテナさんの言う通り話どころではなくなるだろう。



「あの…死因だけでも教えてもらってもいいですか?」


 これだけは聞いておきたい。


 なぜ死んだのか。どうして死んでしまったのか。


 知りたくない人はいないだろう。


 でも僕は。


 少なくとも、僕は知りたい。


 僕の質問に、アテナさんは答えてくれた。



「死因は、高所から逆さまに落下して、頭を打ったことによる脳内出血。記憶を消したから知らないだろうけど、貴方はマンホールに落ちたの。設置が悪くなってたみたいでね、運悪く貴方が踏み抜いたみたい」


 御愁傷様、とアテナさんは付け加えた。


 素っ気ない言い方だが、これはこの人なりの優しさだと思う。


 もしかしたら、いつまにか濡れていた僕の頬に気づいたのかもしれない。


 自分の死因を知ったからか、僕の中のぽっかりとした穴が、少し小さくなった気がした。




 少なくとも、誰かに殺されたとかではなかった。


 別に誰かに恨まれていたとは思ってない。


 喧嘩はなかったわけではないが、口喧嘩だし、殺したくなるほどのものではないはずだ。


 自分の死因が殺人ではないことに、変な安心感があった。





「続けてもいいかしら?」


 アテナさんの言葉に、僕ははっとなった。


 俯いていた顔を上げると、アテナさんが優しく光を発していた。


 その光が僕の心を照らしてくれた気がした。





 そうだ。僕はこれから異世界に転生する。



 これから生きていかなくてはならない。



 知らない世界で。知らない土地で。知らない人たちと。知らない常識の中で。



 生きていかなくてはならない。



 自分の死に悲しんでいられない。




 僕は右手の甲で涙をぬぐって、前を向く。


 もう大丈夫だ。



 そう自分に言い聞かせ、僕はアテナさんを見て頷く。




「大丈夫そうね。なら続けるわ」


 そうして、アテナさんは再び話始めた。







「さっき私は死んだ人間が異世界に転生出来ると言ったわね?でも、これは全ての人間に適用されるわけではないの。ある程度の基準に達している人にしか適用されない。そもそも向こうの世界、異世界にもちゃんと人間はいるもの。わざわざ違う世界から人間を連れてきても無駄に人間が増えるだけ。だから基準を使って選別する必要があるの。ここまではいい?」



 アテナさんの確認に、僕は疑問に思ったことを口にする。


「基準っていうのは、何を基準にしてるんですか?」


「それはこれから説明するわ。基準っていうのはね、魂の形や質、大きさなんかを見るの」


「魂?」


 物語では良く聞く単語だが現実では聞き慣れない単語だ。


 僕の聞き返しに、アテナさんは「そうよ」と言った。




「生物が死ぬと魂と肉体に分かれるの。死んだ人間に話しかけても反応しないでしょ?それは生命活動が停止してるだけじゃなくて魂という生物を構成するのに必要な高エネルギー体が存在していないからなの。魂はその人そのものと言えるわ。肉体がその人の物理的な外面とするなら魂はその人の精神的な内面と言える。」



 よく器と水に例えられるわ、とアテナさんは続ける。


 正直言ってる事が難しい。


 中学2年生に物の定義を教えてもらっても理解するのは難しいものがある。


 化学反応ならギリギリ分からなくもないが


 顔に出ていたのか、アテナさんは苦笑しながら話を続ける。



「まあ、貴方の年じゃ難しいかもしれないわね。要するに身体は身体、魂を意識と捉えてくれればいいわ」



 あ、それなら分かります。


 頷く僕に、アテナさんはさらに続ける。



「魂にはその人それぞれの形や大きさがあるの。個性とか性格みたいにね。小さかったり、大きかったり、丸かったり、とがってたり。生物の数だけ魂が存在するから、種類も多種多様、色々あるの。それで、さっきの魂の基準っていうのは、異世界に行っても問題なく生物として機能できるかどうかを見極めるための物なの。ある程度魂の形が整っていて、尚且つ純粋に混じり気のない魂が求められるわ」


「混じり気っていうのは、何かが混ざっているってことですか?」


「善意とか悪意とかが混ざるの。例えば、犯罪を犯した人間の場合は悪意があることが多いから濁った魂をしてるわ。形も尖ってたりすることが多い。赤ちゃんとかも、まだ個性がないからスライムみたいに形が整ってない。善意も悪意も知らないから、魂はとても透明できれいだけど」



 なるほど、今のは分かりやすかった。


 イメージとしては宝石の鑑定みたいだな。大きさとか形とか透明度とか。


 あくまで僕のイメージだけど。


 そんなことを考えていると、すーっとアテナさんが近づいてくる。



「そして、基準が満たされていて、異世界に転生しても問題ないと判断された魂のみ、私みたいな神と呼ばれる存在の元に招待され、神によって選ばれた理由を説明し、異世界でも生きていけるように能力を与えられ、異世界に旅立つーーーーーーーーー

 これが異世界転生というものなの。理解してくれたかしら?」




 語りながら、アテナさんは僕の顔の高さで止まる。




 幻想的な淡い緑の光が、僕の顔を照らす。



 きれいだ。形はぼやけて分かりづらいけど眩しすぎない優しい光。見てると時間を忘れそうになるような不思議な光源。





 これが魂と呼ばれるものなんだ。




「さて、私からの異世界転生についての説明は以上よ。何か質問はあるかしら?無いなら、これから貴方に異世界で生きていくための能力を授けることになるのだけど」



 ふわふわと浮いているアテナさんが言う。


 僕は俯いて、何か質問することがあるか考えを巡らす。





 一応、異世界転生についてはある程度分かった。


 ただ、いくつか分からないところが2~3個ある。


 これは後で質問しよう。


 それよりも、もっと大事な質問がある。



 ここが現実じゃなくて、これから異世界に旅立つって分かったときからずっと聞きたかったこと。



 生きてる時には何度も想像し、夢見たこと。



 現実では決して叶わない、いや、叶えさせてくれない僕の小さな夢だ。




「あの、聞いてもいいですか?」


「ええ、いいわよ。何が聞きたいの?」


 アテナさんは光ながら僕の言葉を待っている。


 この人になら、神様になら、打ち明けてもいいかもしれない。


 そう思って、僕は真面目な顔をして質問をした。





































「異世界に行ったら、女装してもいいですか?」






「は?」






 真っ白な空間に、白けた空気が流れた。





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