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冒険者と奴隷少女の日常  作者: 超青鳥
行く果てを語る上での蛇足 その3
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リューンとレイス14

来る時とはまるで違った気分で進む俺の足は軽い。

馬車は、夕方には野営地の外れに到着した。

今晩は町の中とほぼ遜色なく安全なこの場所で一泊し、明日の朝からが本当の旅路となる。


夜中は兎も角、この時間、ましてこの場所だ。

見張りなど立てる必要もなく、夕食の準備に取り掛かる。


根野菜の皮を剥いている折にふと顔を上げると、少し離れた馬車の近くでレイスとミリアが微笑を浮かべながら話し込んでいた。

大した時間も要さずに、野菜と穀物のスープが出来上がる。

…無駄に買い込んでしまった携帯食をさりげなく紛れ込ませてある。

少し味の濃いその皿をノイスが配って回り、皆焚き火を囲みながら早めの夕食を片付ける。

スライの皿は、少し他よりも多めに盛って置いた。本当にささやかな話ではあるのだが。



やがて夜が訪れ、明日早朝の出発に備えて早めに眠る事となった。

念の為の見張りの担当は最初の時間になり、皆が眠る準備を終えて眠りにつくのを眺めていた。

オルビアは馬車の近くで眠る事にしたらしく、見える範囲には見当たらない。


焚き火を囲んで眠る皆の輪から少し離れ、呆けたように黒い地平線を眺めているとレイスが足音を忍ばせて、荷馬車から降りてきた。

「明日からまた歩くぞ。早く寝たほうがいい」

それを聞きながら彼女は俺の隣に座り込み、少し笑いながら顔を覗き上げてくる。

「…リューン様、あの時、なんて言ったんですか?」

「あの時ってどの時だよ。何か言ったか?」

しかしその視線に耐え切れず、顔を背けた。


「聞き間違いじゃないですよね?」

「あぁそうだよ。聞き間違いじゃない。早く寝ろ」

言い訳しても仕方がないだろう。しかし、できれば勘弁して欲しい。

自分で言った事とはいえ、確認されると堪らない気分だ。

隣に座り込む彼女が少し体を寄せる。


「待ってて、良かったです…」

「…ああ、待たせたな」

彼女は微笑みながら軽く俯き、少し離れた焚き火を見詰めている。

俺もそのまま何を言うでもなく、ただ2人で薪が燃えていく様を眺めていた。

彼女の指に嵌められた指輪の透けるように青い石が炎と混ざり合い、薄い紫色に輝いている。


見張りなどそこいらの子供にでも任せたほうが余程意味があっただろう。

焚き火の火がその大きさを変え始める頃、俺の割り当ては終了となる。

一際大きい音を立て薪がはぜる音で、俺は立ち上がる。


「そろそろ交代だ。寝よう」

「…はい」

彼女の右手を掴み、立ち上がらせる。


何を言うでもなく微笑む彼女が馬車に戻るのを待ち、次の見張りとなる弓使いを起こしに歩いた。





翌朝から、改めて護衛を勤めながら馬車が進む。

野盗に襲われるような事もなくそのまま10日を経て、俺達はパドルアに帰着した。


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