それぞれの気持ち
1ヶ月半ぶりの更新。でも短め。色々ごめんなさい
アイリアにとって、最大の懸案事項は払拭された。
カミラの安全。カミラの未来。それは彼女が敵の中央を突破したことで守られた。
「あの子がこの世で最後に見た光景が、陥落する砦と、自分に群がる男たちだったら……嫌だもんね」
守れた。大切な人を守れた。
軍人にとって、これ以上の喜びはない。アイリアもその例外とはならない。
「……じゃあ、せめて足掻きましょう。カミラが増援を連れてくるまで!」
アイリアの鼓舞は、サラゴサ砦中に響き渡る。
でもアイリアはわかっている。彼女は士官で、だからこそわかっている。
この砦は、まだ陥落してないだけ。
陥落は時間の問題で、そして増援の見込みが全くない事も。
しかし彼女は戦うことを決める。
ただ1人の大切な人物が、敵に捕捉されないよう、全力で敵の目を引きつけなければならないのだから。
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「少佐……」
砦を出撃してから1日経ちました。
そして私はまだ増援がいる最寄の砦にはいません。雨に濡れかけて読みにくくなった地図を片手に、まだ馬腹を蹴っています。
ですが私も馬も適度な休息は必要。
急ぐ気持ちを抑えて、私は野営します。王国軍はまだ砦にいるでしょうから、敵の追撃はない……そう信じて野営します。
「少佐、無事ですか……」
でも、口から零れるのは少佐の身の安全の事です。
だって、育ての親です。なんだかんだ言って、私の育ての親なんです。
粗暴で、ずぼらで、適当で、デリカシーがなくて、寝坊常習犯で、サボってばかりで、仕事の出来ない証左でも……大切な人なんです。
「少佐……ハーコート少佐……!」
私は膝を抱えて、木の下で泣きそうになる気持ちを抑えます。
泣くのは、まだ早いから。
増援を呼んで、砦のみんなを助けて、少佐をどやすまで、泣いてはいけないんです。
まだ任務は、始まったばかりだから。