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カミラの特命

 8月15日。

 王国軍と合衆国軍の戦いは再び散発的なものとなります。思い出した頃に銃を撃ち、砲を放ちます。ですが壁を超えようなどと考える者はいませんでした。


 そうは言っても、状況が好転したというわけではないですが。

 物量では相変わらずこちら側が劣勢で、逆攻勢に出る隙がありません。少なくとも組織的な反撃は不可能です。


 そんなことを思っていた、その日の午後。


「カーミラッ! ちょっといいかしら?」

「はい?」


 いつもの調子の、いつものハーコート少佐が登場です。戦時下にも拘わらず元気そうで何よりです。


「あのねカミラ、お願いがあるんだけど」

「なんでしょう?」

「敵陣、突破してきて!」


 ………………。


「はい?」

「お願い! そうじゃないと砦が落ちちゃうから!」

「え、あのあの」


 待ちましょう。いつから時間が消し飛んだんですか。




---




 とりあえずいつものようにコーヒーを与えて少佐を落ち着かせ、順番に事を話させます。


「最初から説明すると、この砦はこのままだと落ちるってこと。これはわかるよね?」

「……えぇ、まぁ」


 生死にかかわることを何でも無いように言ってしまう少佐の精神は凄いと思います。私はそこまで呑気に珈琲を飲むことはできません。……そのコーヒーを淹れたのは私ですけど。


「でね、勝つためにはどうしても援軍が必要じゃない?」

「そうですね」


 彼我の戦力差は絶大。如何に武器と士気で勝る合衆国軍でもこの数の差は覆せません。

 故に同数程度の戦力が必要になる、ということです。それは士官学校に出ていない私でもわかります。


「だからカミラに、援軍の派遣を要請するようにしてほしいの」

「……」


 あの、状況わかってるんでしょうかこの少佐。


「あー、カミラがそういう顔をするのは私の個人的な性癖で言えば嬉しいんだけど今はやめよう?」

「なにカミングアウトしてるんですか」


 そんな特殊な性癖あるなんて聞いてません。


「コホン。まぁ難しいのはわかってる。でもこれは重要な事なの」


 先ほどの軽い雰囲気を打ち消して、少佐は珍しく真面目に語ります。


「私たちはこのままだと負ける。負けて、死ぬ。生き延びるためには戦い、そして勝つしかない。だから勝つためにあらゆる手段を講じなければならないの」

「……」


 負ければ死ぬ。至極単純な、戦争の世界です。


「だからカミラにお願いするわ。人狼族故の、類稀な戦況把握能力に優れるカミラにお願いするわ」


 数秒置いて、少佐は言葉を続けます。

 命令じゃなくて、お願いです。私には拒否する権限がある、ということでしょう。危険な任務であることには変わりないのですから。


「敵の包囲網を単独突破して、味方の援軍を呼んできてほしいの。出来る限り早く、ね」

ネット小説大賞一次選考落ちましたけど頑張って続けます

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