《地下世界:モンスター救出編》 第十四話:腐った不死者と赤茶毛のウォーランド(1)
まだ人々が寝静まっているカナンの街中。
その路地裏深くを突き進み、外壁を背にして一休憩。
「街人は身体を壊さないのかね。こんな昼も夜もない地下世界で暮らしててさ」
『人間は昼夜がないと身体を壊すんでしか?』
「長い期間まったく太陽の光を浴びないでいると、少なくても調子はおかしくなるな。個人差ってものあるだろうけど」
『だったら大人しく地上で暮らしていればいいでし。逆にあちしたちモンスターのほとんどが太陽の光を嫌うでし』
「……光か。俺も……光は大っ嫌いだ!!」
『光の彼方にバイバイでしからね』
「光の彼方怖ぇよ。光の彼方っていう曖昧さが怖いぇ。その先に一体なにがあるんだ? 天国か? 翼の生えた薄絹のお姉さん……ちゃんといるかな?」
『心配しなくても、アディ様は地獄でしよ』
「そういうヒドイこと言うお前も地獄だよ」
キアリーと一緒なら、地獄も悪くない……と思ったりもする。
アルスレイにローが戻るのは、あと五日ほど。その前に2000Gを持って建設途中のアルスレイの中に入り込みたい。時間がないから早急に動く必要がある。俺たちは商店が開くのを待っていた。
あの道具屋が開くのを───
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小一時間ほどキアリーと喋りながら時間をつぶし表通りに出てみると、すでに街は賑わっていた。
道具屋も開店している。
二つの金づちがXに重なり合っているイラストが描かれた看板。道具屋のしるしだ。
バンッと扉を開くと、カランカランッと音が鳴った。
「俺の名はアディ! 神だっ!!」
『武具屋のときから言おうと思ってたでしが、『客であり』が抜けてるでしよ?』
「俺はもはやその次元にはいない。純粋な神だっ!!」
『ただの危ない奴でし』
メガネと蓄えたヒゲが特徴の、太った店主が現れた。
ヒゲを撫でながら、にこやかに出迎えにやって来る。
「これはこれは、アディ様。いらっしゃいませ」
「……ん? 上機嫌だな、店主。───さては、あの水晶玉……高値で売れたな?」
「いやいやいや、さすがはアディ様。これはまいりましたな」
脅しをかけ、しかも「二度と来るか!」と吠えた俺を相手に、こんな態度をとれるなんて相当高くで売れたんだろう。
商魂たくましいのは、けっこうなことだ。
『●●●●●●、●●●●●●●●●?』
『連絡用でしからね。入るでしよ』
「店主、あの水晶玉は定期的に手に入る予定だ。なんならこの店優先に売ってもいい」
「本当でございますか!?」
「他の店には売らない……という契約を交わしてもいいくらい、本当だ」
「それは願ってもない話ですな」
「契約書を書くか?」
「───いやいやいや、その代わり……ということでございましょう?」
「さすが商人だ。話が早くて助かる。今日は別のものを売りに来たんだ。そいつを買いとってもらいたい」
「左様ですか。それでは、ご拝見を……」
「こいつだ」
俺は持ってきたものをずらっとカウンターに並べた。
すると店主の目が細まる。
「……いやいやいや。アディ様は本当に面白いお方だ」
そう言われても仕方ない。
何故なら、俺が持ってきたものは───
『足りない分は、商品をもらう。
こいつと。
こいつと、こいつと、こいつだ。
ああ、あと……こいつも』
───この店に初めて来たとき、半ば強引に持ち去った品々だからだ。
「いくらで買いとってくれる?」
「本来ならこういったものは、半値と決まっておりますが……元値で買いとらせて頂きましょう」
上等だ。
それなら俺が予定していた金額を上回る。
「それと、いくつか訊きたいことがあるんだが───店主は賭け事はやるか?」
「いやいやいや、痩せても枯れても私は商人。仲間内でつき合い程度にやることはありますが、本気でのめり込むことは決してありません」
「ルールは知っているわけだ」
「チェスにカードにダイズ。一応、ルールくらいは心得ておりますよ」
「ポーカーは?」
「もちろん。この街で一番メジャーな賭け事といえば、ポーカーですからね」
やっぱりポーカーはあるのか。
ダイズはよくわからないけど。
「店主、ポーカーのルールについて教えてくれるか?」
『あちしがお風呂で教えたとおりでしよ?』
『●●●●●、●●●●●●●』
『そうでしかね?』
『●●●●●●●、●●●●●●●●●●●●●』
『ローカルルールでしか?』
『●●』
「ポーカーをなさるおつもりですか?」
「仲間内でつき合い程度に、な」
店主が教えてくれたポーカーのルールは───
・ 原則的に親はなく、一対一。
・ 役の強弱は、俺の知る一般的なポーカーと同じ。ただし、ジョーカーは含めない。
・ 五回勝負がワンセット。ただし、とり決めた手持ち金が0になれば、そこで終了。
・ 先攻後攻はコインの裏表で決定。
・ 負けたプレーヤーがカードをシャッフルし、配る。
・ ドロー(場に捨てたカードの枚数分、ストックから引くこと)が終わり、手札を確認した後、先にドローしたプレイヤーが賭け金を決定。続いて交渉が行われ、あとにドローしたプレーヤーが賭け金を出した時点で交渉が打ち切られ、お互いの手札をオープン。役の強弱で勝敗が決定される。
・ 原則的に、ドローは一度きり。
・ 原則的に、ドロップ(棄権)はできない。
・ イカサマは見抜かれなければ、ルール上は許される。ただし、マジックアイテムの使用は不可。
・ イカサマが見抜かれた場合、とり決めた手持ち金のみならず有り金のすべてを相手に支払わなければならない。その時点で即終了。
・ 観客がいた場合、勝負に関して一切の口出しはできない。
───こんな感じだった。
イカサマありが前提なんてナメてるな……と言いたいところだけど、俺もギャンブルのイカサマはバレなきゃいいと思ってるタイプだ。そこに異存はない、が───
「マジックアイテムの使用は不可なんだろ?」
「はい。それは絶対のルールでございますからね」
「なのに何故魔法の使用不可はルールにもり込まれてないんだ?」
「カードの役を変える魔法なんて、ございませんから」
『●●●●●●●●●●●、●●●?』
『あちしも聞いたことなんでしね』
「でも、魔法で相手プレイヤーを前後不覚にすることくらいはできるだろう?」
「それでは強盗と変わりありませんな」
なるほど。そりゃそうだ。
「先にドローしたプレイヤーが賭け金を決定……これはわかる。そのあとの交渉ってのはなんだ?」
「ここがポーカーの一番の醍醐味でしょう」
俺の知ってるポーカーに交渉なんてものはないぞ?
異世界ルールか?
「あとにドローしたプレイヤーは、相手の賭け金を見たあと、交渉を持ちかけます。例えば、ここで追加ドローやドロップを申し出たり、賭け金の増減を申し出たり……交渉内容は無限にございます」
「交渉内容は、無限……?」
つまり、この交渉ってのは心理戦になるわけだ。
相手の賭け金の大小で、相手の役、そして思惑を読みとるのが基本か。
「この街には賭場はありませんので賭け事は酒場で行われますが、『追加ドローさせてやるから酒代はお前持ち』なんていうのは、よくあるセリフでございますよ」
「ほう」
こうなると役は一緒でも、俺の知っているポーカーとはまったく違ってくるな。
交渉内容は無限……交渉の定石となるものを知らない俺にとっては、かなり不利なルールだ。
「交渉に伸るか反るかは先プレイヤーの自由なんだろ?」
「左様ですが、しかし伸るにしても反るにしても、ここで交渉に渡り合うのがポーカーの醍醐味ですから」
「……そうか」
あといくつかの細かい例を訊ね、俺は道具屋を出た。そしてまた路地裏深くに潜む。
「キアリーに聞いたポーカーのルールとは、だいぶ違ったな」
『申し訳ないでし。交渉もイカサマも初めて知ったでし。これがアディ様が言ってたローカルルールっていうものでしかね?』
「いや、俺はローカルルールのことは、この街独自のルールがあるんじゃないかって意味で言ったんだけど、これはむしろ、人間のポーカーのルールって感じだぞ?」
『同じポーカーなのに、人間とモンスターでルールが違うのは不思議でし』
「俺は人間もモンスターもポーカーやってるってことが不思議だし、そもそも人間とモンスターで喋る言葉も書く文字が一緒ってのが、すっごい不思議だよ」
『そこはつっこむな……って、アディ様、言ってたじゃないでしか』
「そうだったっけ?」
『脳みそ腐ってるでしね。頭バンバンしたら思い出すでしよ?』
「俺の頭は家電製品じゃねぇよ」
道具屋で手にした金額は350G。
これを今日中に2000Gにしたい。
アンリアラに連絡がとれず他にお金の工面のしようがない以上、考えられる第一手段が───博打。
この世界のポーカーは俺の知っているポーカーだと考えてはいけないだろう。初めての酒場で初めての博打。普通にやって勝てる見込みは二割以下だろうな。しかも賭け金が少なければ2000Gには達しない。
達しなければ、それも負けと同義だ。
「俺たちの強みを活かそう、キアリー」
「強み……でしか?」
「二対一。俺と、俺の影に潜んでいるキアリーVS相手ってことだ。イカサマありが前提なら俺たちは全力で相手のイカサマを見破り、有り金を全部頂くぞ」
「イカサマするでしかね? イカサマをするリスクは大きいでし。普通に勝負する人間もいるんじゃないでしか?」
「それならそれでいい。でも相手は選ぶ。場所は酒場なんだ。金を持ってる酔っぱらいを探そう」
こっちのイカサマ───俺の影にキアリーが潜み視覚を共有していれば、俺が自分のカードに目を落としていても相手の動向は探れる。視界の範囲でなら、例えば俺が右を意識していてもキアリーは左を意識できるそうだ。
これは大きな強み───利点になる。
できればイカサマしそうな奴を見つけたいところだ。
酒場が開くのは夕暮れ時とのことだった。
太陽がないのに夕暮れ時の意味がわからなかったが、どうやら街人は地上世界の時間感覚で動いているらしい。
俺たちはそれまでの間、ポーカーの傾向と対策を練った。
俺は、じめじめした暗い路地裏の地べたに座りながら。
キアリーは俺の影の中で、優雅にお風呂に入りながら。
勝負の時間は、刻一刻と迫っていた。
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街の中心部から離れ街道からも外れた、土の地面に建つ酒場『陽気なアヒル亭』前。
西部劇にでも出てきそうな木造の外観だが、やけに大きく造られている。カナンの街には酒場は一つしかないらしいので、その役目を一手に担っている為だろう。
店内からは、「いらっしゃいませー」という快活な女性の声がする。もしかしたら網タイツを穿いたバニー姿のお姉さんがいるのかも知れない。
「ふっ、小賢しい人間どもめ。こちとら本物のうさ耳娘が三人もいるんだ。惑わされんぞっ!!」
『なに言ってるんでしか』
仕事を終えた街人が、「楽しみはこれからだ」といったウキウキした顔で、どんどん酒場の中へ入って行く。
では、俺たちも突入するとしよう。
気合のかけ声を放つ。
「準備はいいかっ!! キアリー!!」
『OKでし!!』
「歯ぁみがいたか!?」
『みがいたでし!!』
「耳の裏もちゃんと洗ったか!?」
『洗ったでし』
「お肌ツルツルか!?」
『ツルツルでし!!』
「すっぽんぽんか!?」
『服は着てるでし!!』
「よし! 行くぞっ!!」
俺は酒場の扉に飛び蹴りを喰らわせ、ダンッと店内に着地した。
「俺の名はアディ! 神だっ!!」
『またそれでしかっ!!』
俺の登場に一瞬だけ場が凍ったが、またざわざわと賑わい始める。すでに酔っている……と、思われたようだ。
店内の造りは素朴なものだった。カウンターはあるが、木板の床に、丸いテーブルと椅子が乱雑におかれているだけ。
壁には無造作に杭でうち込まれた獣の皮が何枚も飾られていた。熊のようなものもあれば虎のようなものもある。ただの装飾品というよりは、魚拓のような、ちょっとした自慢というか、コレクションめいたものなのだろう。
酒場の主が撃ちとったものなのかも知れない。
外観から見た通り、店内はだだっ広かった。
そして、客の数も多い。
テーブルの数が間に合わず、代わりに樽をテーブルにして立ち飲みしている客もいるくらいだ。
奥に入って行くと、ポーカーをしている連中がけっこういた。一つのテーブルに、三人も四人も、豪快に木樽ジョッキの酒を呷りながら、カードを切っている。
「わぁっはっは」と楽しそうに。
酒場だから、ごろつきのような輩がいるのかと思いきや、客はみんな街道で見かけるような普通の街人ばかりだった。
想像とは随分と違うな。博打をやっているんだから、血走った目でカードとにらめっこしているものと思っていたのに、これでは博打というより、ただの娯楽に近い感じがする。
「……ちっ。仲良くカードゲームなんかしやがって」
『すごいやっかみでしねー』
「こっちは切羽詰ってるからな。遊びじゃあない」
『いいじゃないでしか。相手が遊び半分のほうがカモりやすいでし』
「まぁな。でも、テーブルにおかれてる金を見てみろ。たかだか10Gや20Gだ。話にならん」
本当に街人にとってポーカーは娯楽程度の感覚なんだろう。
サラリーマンが同僚を集めてやるマージャンに似た気安さがある。
酒飲みながらだしな。
パイン兄さんは6000Gを「生活費としてはデカい金」と言った。
だったら2000Gも生活費としてそこそこの金額のハズだ。
それを酒場でやるような博打で稼ごうという考えは少々、甘かったのかも知れない。
『2000Gは遠いでしね』
これだけ人間が集まってるんだ、博打狂いのバカの一人や二人いそうなもんだけど……。
『あの人間のテーブル、皮袋がおいてあるでしよ?』
「おっ? どれだ?」
その赤茶毛の男は、一人でテーブルに突っ伏して眠っていた。
テーブルには十を超える皮袋と、四本の空の酒瓶。五本目は、半分残っている。
バカがいた。
とびっきりのバカがいた。
「あいつにしよう」
『了解でし』
赤茶毛の男のテーブルに近づき、俺は大きく息を吸い込んだ。
「起きろっ!!!!」
ビクッとして、それからゆっくりと赤茶毛の男が顔を上げる。
「……へぁ? おおっ! へっへぇー、やるってのかい? ひっく」
若者のように見えたけれど、よく見れば中年だった。三十歳半ば───といったころだろうか。赤茶の髪の毛に、不精ヒゲ。ややたれ目のしまりのない顔。チャラ男がそのまま歳をとるとこうなる───という、いい見本のような男だった。
「あぁー……ん? うぉ! 臭っ!!」
「お前の酒臭い息よりマシだっ!!」
「なんだぁ、それ? 包帯……怪我人かぁ? へっへぇー……でも、手加減する気はぁねぇぞ?」
「俺の名はアディ。チャラ男の名は?」
「チャラオゥ? ひっく、俺ぁ……ウォーランドってんだ」
「ずいぶん稼いでるようだな、ウォーランド。俺にも稼がせてくれ」
「へっへぇー……そりゃ、お兄ちゃん次第さぁ。まぁ、やるってんなら……ほら、座りな」
顎で着席を促すウォーランド。とりあえず言われた通り、注意を払いながらも椅子に腰かける。
椅子に細工は……さすがにないか。
念には念を入れて、鏡になるようなものにはチェックが必要だ。
『●●●●、●●●●●』
『了解でし。ちゃんと見てるでし』
「うぉぉおおぉぉぉい! オヤジィ!! もう一本追加だぁーっ!!」
ウォーランドが叫ぶと、大柄な身体つきをした泥棒ヒゲにスキンヘッドの店主らしき男が酒瓶を持ってきた。
テーブルに酒瓶を、ドンッとおく。
「飲みすぎるな、ウォーランド」
「なぁに言ってんだぁ、酒飲ますのがぁ、仕事だろうよ、オヤジィ」
ウォーランドは慣れた手つきで酒瓶のコルクを抜き、ゴクリと一口、酒を飲んだ。
「へっへぇー……で、お兄ちゃんはぁ、なに飲むんだい?」
「俺はいらん。博打するのに酒なんか飲めるか」
「ああぁ、そりゃダメだ、お兄ちゃん。ここは酒場だ。注文なしってのはぁ……ダメだ」
「それもそうだな。じゃあ俺は軽いのくれ、オヤジ」
「あいよ」
オヤジが木樽ジョッキの酒を持ってきた。
ほぼ無色透明だが、果実酒のようだ。
匂いを嗅ぐ。
……なんだこれ? 柑橘系の匂いが強くてアルコールの匂いがしない。
一口飲んでみる。
……本当に軽いな。まるでジュースだ。アルコール入ってないんじゃないか? 酔っ払うわけにはいかないから、ちょうどいいけどな。
「いやぁ、助かったぜぇ……みぃんな逃げちまうんだもんよぉ。せっかくツキまくってんのに、なぁ?」
「確かにツイてるみたいだな。見たところ、5000G以上は稼いでるんじゃないか?」
「へっへぇー、最近ツキまくりでよぉ。俺ぁ、勝利の女神様に愛されてんだよぉ、ヌポヌポさぁ……」
「ヌポヌポ?」
「あぁ、勝利の女神様とベッドで、ヌッポヌポだよぉ......ヌポヌポ」
左手の指で作った輪っかに、右手の親指を出し入れするウォーランド。その表情はだらしなさを通り越して、気が違っているようだ。
「お前みたいな下品な奴、初めて見た」
『あちしは初めてじゃないでし』
「黙ってろ」
「んぁ……?」
「なんでもない、気にするな。それよりウォーランド。どうしてこのテーブルには誰もいない? 他は満席だぞ」
「へっへぇー、だから言ってんだろぅ? 俺ぁツキまくりで、このテーブルも貸し切り、だぁ……ひっく」
「貸し切りね」
イカサマの仕込みは完璧、と考える。あるいはイカサマがしやすいように……か。
「俺に勝ちたきゃぁ……勝利の女神様に愛されなぁ。ベッドで女神様にツキツキで、俺もツキツキだぁ……」
「お前みたいな奴が性犯罪に走るんだ」
『他人のフリ見て我がフリ直すでし』
「黙ってろ」
「んぁ……?」
「なんでもない、気にするな。手持ち金300Gだ。合わせてもらおう。俺の手持ち金が増えた場合それを上限とする」
「へっへぇー、やる気だねぇ……お兄ちゃん」
ウォーランドの目の奥に、僅かな色がこもる。
「コイントスは任せた」
『いいんでしか? コイントスはアディ様がやったほうが……』
『●●、●●●●。●●●●●●●●●●●●●』
『アディ様が先攻なら、この人間がイカサマするのは確定でしか?』
『●●、●●●』
「んじゃあ、いくぜぇ……」
ウォーランドは自分のコインを指で弾き、左手の甲に落としたと同時に右手を被せた。
「へっへぇー……さぁ、どっちにする? お兄ちゃん」
「表だ」
わざとらしく思わせぶりに、右手をゆっくりと開けるウォーランド。
「いい目ぇしてるねぇ、お兄ちゃん。表だぁ。じゃあカードを配ってくれぇ」
ウォーランドに渡されたカードをシャッフルし、一枚一枚交互に五枚ずつ配った。
『●●●●●●。●●●●●●●●、●●●●』
『了解でし! 必ず見抜くでし』
周りのテーブルに目線を動かす。
俺たちが座っているテーブルと、周りのテーブルの違い。
それに、さっきの酒場のオヤジの行動と言動。
…………間違いないな。
この男、ウォーランドは必ずイカサマをする。
すでに条件が整っている。
そいつを看破して、5000G総取りする。
一回目。
手札は───




