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31日目~33日目

31日目



 今朝早く、爺さんの家にお迎えが来た。(もちろん爺さんに、ではなく俺に)

 そうして俺は一か月お世話になった家を後にして、“竜の巣”へ向けて出発したのだ。

 ちなみに移動手段は、というと大仰な護衛つきの馬車、もとい鳥車に乗って、ひたすら西へ移動している。


 ひとまず今日は何事もなく、中継地点の村に着くことができた。

 周囲に田畑の広がる、のどかな集落って感じの村。

 しかし到着して早々、村の人たちは俺や護衛さんたちを凄く警戒した様子だった。

 一応、俺たちは“竜の巣”から遣わされた国の使節団。護衛さん曰く、田舎の人々は国の軍隊やら魔術師、ひいてはドラグナーなども含め、“国家の人間”を快く思っていないらしい。

 何でも、そういった人間たちは皆、地方から税で巻き上げた金で私腹を肥やしている、と思っているんだとか。

 まあ実際のところはどうか知らないが、お国の人間と一般市民の軋轢はよく聞く話。

 正直、そういう面倒な話には巻き込まれたくないが、一応、これから国営の訓練所に入る身としては無関係ではいられない…のかな? まあでも、気にしないのが一番。

 

 で、さっきまで村の子どもたち相手にディノを触らせたり、飛ぶ様子を見せてやったりして遊んでいた。

 いやーな顔をしている大人たちとはうって変わって、子どもたちの目線はディノに釘づけだったので、こっそり呼び出して遊ばせてやったのだ。

 やっぱどの世界でも子どもたちはドラゴンに憧れを抱くものだよな。

 「かっけー」とか「すげー」とか言われると俺も嬉しくないわけでもなく。

 ちなみに、ディノはまだ幼獣の域だが、すでに形がドラゴンっぽいのでウケは良かった。


 宿で出された料理は知らない肉のソテーとパン。不味くも無いが、フィオさんには遠く及ばず。

 フィオさんのこと思い出したら何か切なくなってきたので、もう寝ます。


32日目



 村を出発して、さらに西へ。

 護衛の一人から、何で昨日、村の子どもたちにドラゴンで遊ばせていたのかを聞かれた。

 逆に俺が何でそんなことを聞くのか、聞き返したかったが、とりあえず、子どもたちが遊びたそうな顔をしてたから、と適当に答えた。

 そしたら、「それだけですか?」と何故か驚かれた。

 何でも、護衛の知るドラグナーって人種は平民相手に自分のドラゴンを触らせるなんてもってのほからしい。

 別にドラゴンに害があるわけじゃないが、

「平民などに私の崇高なドラゴンを触らせるか!」

 という感じの高飛車が多いらしい。

 というか、基本的にドラグナーは世襲貴族とか由緒ある血族しかなれないので、必然的にそうなるっぽい。

 で、護衛さんの話を聞いてからというもの、“竜の巣”への期待が一気に萎えた。

 そんな上流階級の人間たちの中で、うまくやっていける自信が無い。

 後ろ盾もなく、血縁も無い、ただの異世界人がキャンパス(訓練所)ライフをエンジョイできるだろうか、いやできない。(反語)

 …まあ、でも嫌になったら逃げだすのも手だ。

 色々手配してくれたのに悪いが、土下座でもすれば、また爺さんのところに置いてもらえるだろう。…たぶん。


 そんなヘタれた思考を巡らせつつ、今日はもう寝ます。

 ちなみに今日は野宿。たき火のそばでこれを書いているのだが、火の光がディノの鱗に反射して凄く明るい。って、どうでもいいことか。


33日目



 出発後、三日目にして、初めてのハプニング発生。

 というか、異世界に来て初めての戦闘。

 今日の昼どき、テンペストオークという名の魔物の群れに遭遇しました。


 しかも、テンペストオークというのは普通なら一体や二体で襲ってくるオークの上位種らしいが、何を血迷ったか、群れとなって襲い掛かってきたのだ。

 一体や二体なら護衛さんたちだけで迎撃できたらしいが、何匹も、となるとキツいらしく幌の中でも押されているのが分かった。

 そこで俺は密かに訓練していたディノの「フレアブレス(自称)」を発揮する時だ、と思い、幌を飛び出して護衛さんたちに加勢したのだ。


 結果。

 オークたち相手にオーバーキルしました。

 

 正直言って、ディノのフレアブレスを見くびっていた。

 たまに簡単な火炎放射をやらせていたぐらいだったので、本気のブレスをさせて実感しました。

 うん、あれは“業火”です。


 ディノには「思いっきり吐き出していいぞ! 護衛さんと鳥車燃やさないように!」と伝えてブレスさせたのだが、かなり広範囲に炎の業火をまき散らし、そして器用にテンペストオークだけを消し炭にしたのだ。

 ディノ曰く、どうやらディノのブレスは自前のマナによって操作できるらしく、どこにも引火させることなく、事なきを得た。

 で、護衛さんたちから凄く感謝された。

 もちろん悪い気はしなかったが、興奮して頭がよく回っていなかったので、生返事しただけだった…気がする。

 正味な話、幌から飛び出したときはめちゃくちゃ緊張したのだ。

 落ち着いた今でさえ興奮が覚めないくらいには、生命の危機を感じていたと思う。


 …ともあれ、今日の英雄はディノ。

 護衛の皆さんから感謝の証として食料を分けてもらい、いたく上機嫌になっている。

 「また戦いたい」なんて言ってるが、できればもう戦闘は御免被りたい。ホントマジで。



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