15日目~19日目
15日目
暇すぎる。
あんまり暇すぎるため、フィオさんが貸してくれた小説を読んでいる。
文字は日本語じゃなかったが、何故か読めた。
しかも、小説を参考にして簡単な文章をつくることもできた。
マスタードラゴンの加護か知らんが、この調子ならこの世界での読み書きに支障は無い様子。
正味な話、どうせなら魔法の才能を授けてくれる加護とかも欲しかったがね。まあ、無いものねだりか。
ちなみに、ドラゴンの雛は馬鹿みたいに血を飲み続け、満足したら俺の布団に入ってきて寝てしまうのだが、このチビ助、手や足に血をつけたまま布団に入ってくるせいで、気づけば俺の布団やシャツは血みどろ。
飲み終わったら口を拭いてやればいいだけの話だが、小説に夢中で気づかないことがしばしば。
こればかりは小説の面白さを呪うしかないか。ハンス王子とその弟ビクトールの禁じられた兄弟愛の行方が気になる。
身体がなまりそうなので、明日から筋トレでも始めようと思う。
16日目
今日も暇。
何となく筋トレを始めてみたが続かない。めんどい。
ひたすら小説を読む生活。
ドラゴンについて、新しい経過といえば排泄をしたことぐらい。
フィオさんづてに、爺さんへ報告すると、ドラゴンの糞尿は俺のとは別に取り置け、とのこと。何でもドラゴンのそれらは薬品の調合や魔法素材?に使われる貴重品らしい。
ともあれ、相変わらずサンドウィッチが美味かった。フィレオフィッシュ的なさっぱりした味つけ。
フィオさん、今日も色々とありがとうございます。
17日目
フィオさんから借りた小説を読み終わってしまった。
ハンス王子がビクトールとアーッ!する生々しいシーンを除けば、傑作だった。
で。
暇すぎるので、ドラゴンの名前を考えてみた。
第一候補 エメラルド
目が緑だから。
第二候補 ゴッツ
強そう。
第三候補 ヨッシー
俺のネーミングセンスの無さは異常。
名前を考えるのはまたの機会にしよう。
18日目
昼寝したら、嫌な夢を見た。
あまり覚えていないが、何か生物を喰い殺す夢だった。
そのせいで午後からはずっと気分が悪かった。
気のせいか、口の中が生臭い。
挙句、フィオさん特製のサンドウィッチを口にすることもできず。
フィオさんには申し訳なかったが、今日はもう寝ることにする。明日の朝、食べよう。
ドラゴンの雛はやたらと血を飲んでいた。
19日目
朝、起きたらサンドウィッチが無くなっていた。
ドラゴンの雛が全部平らげてしまったらしい。爺さんが用意しておいた大量の血も一晩で飲んでしまった様子。あれ、二週間分はあるはずだったのだが。
心なしかドラゴンの身体もかなり大きくなった。
あと、ドラゴンが火を噴いた。ライターぐらいの火力。
火噴いたヤターと思って再びフィオさんづてに爺さんまで報告すると、爺さんが部屋の中まですっ飛んで来た。
で、そのドラゴンは貴重な種類だの、成長速度が速すぎるだの、色々まくしたてられたのだが、何よりも部屋から出ることを許されたので、俺は今、えらく開放的な気分でこの日記を書いている。
明日から労働だ!
爺さん曰く、ドラゴンは刷り込むには十分すぎるほど成長してしまったらしい。神がかり的な速度で。
ちなみにドラゴンは今、俺の横で寝てます。四六時中すりついてきて、少し甘えん坊な気がするが、まあ子どもってこんなもんか。
明日あたり、また爺さんに話を聞いて、このチビドラゴンについての情報をまとめてみようと思う。
今日はもう寝ます。