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74日目~77日目

74日目



 ツカレター。昨日、今日と闘技場に篭ってディノと特訓。

 まあ、特訓といっても力をセーブしながら、完全体の状態での動作確認、脅し文句の練習等々。あとは本で地理関係を頭に叩き込んだ。

 完全体になったのは二度目だが、基本的にディノが身体を動かし、俺はディノに対する指令とマナの制御をする、という役割分担に落ち着いた。

 俺も身体を動かすことはできるが、翼の使い方が今いち慣れないためか、あらぬ方向へ吹っ飛ぶのでディノに丸投げ。

 マナの制御に関しては、俺が手綱を握らないと世界に大穴を開ける恐れがあるので、一番重要な仕事といえる。


 今さらだが、一つの身体で二つの意識を持つっていうのはホント難儀。

 たとえば、言葉を喋るときは俺が声帯?を使うのだが、セリフを練習している最中にディノが飽きて無駄に翼を動かしたり、尻尾を振ったりするのだ。

 本番ではおとなしくしているように釘を刺しておいたが、少々不安が残る。

 まあ、二つの頭がある、と考えれば、ディノと二人で記憶の分担ができるので、地理の記憶に関しては便利。ディノの方が記憶力が良い、というのはここだけの話。


 そんなこんなで、作戦の準備は一通り終えたのだが、大きな問題が一つ残っている。

 完全体の状態になると、俺の身体が無防備になる、ということだ。

 なので、相手の本拠地の近くや野外で完全体になるのはマズい。

 俺の体は丈夫にできているらしいが、どこかに拉致されたり、身ぐるみを剥がされる事態は御免被りたい。

 いつかのスライムのように、魔物に身体を凌辱されるかも知らん。


 竜の巣で完全体になって敵地に向かうのが理想的なのだが、それはそれで気がかりなんだよな。

 一日眠り姫の状態で、周囲に不審がられないか不安。

 それに、今日判明したのだが、完全体になる、もしくは完全体から人間の身体に戻るときは大体100メートルくらいの距離が必要らしい。

 なので、飛び発つタイミングや元の状態に戻るタイミングを見計らうのが面倒くさい。

 でかい図体だとホント目立つからなー。ファンタジーでよくあるみたいに、竜人化とかできれば楽なんだがね。

 まあ、ただでさえチート級の強さなのだから、無いものねだりか。

  

 

75日目

 

 

 結局、竜の巣で完全体になることにしました。

 周りには適当に気分が悪いと言って、一日寝込んでいることにする。

 フィオさんには一応、明日は「訳アリ」で寝込むが、たとえ意識が無くとも命には別条がない、という旨を伝えておいた。

 事情を察して、ただ頷いてくれたフィオさんに感謝。

 まあ、フィオさんの表情が事情を察したというよりも、無関心と表現する方が適切だったことは忘れよう(遠い目)。


 何はともあれ、明日はとりあえず魔術組織“黒い煤”を潰してこようと思う。

 まず、黒い煤を倒し、一回竜の巣に戻って、落ち着いてから明後日、ドラゴン協会の本部を叩く、という算段。

 今日は早めに寝て、明日に備えよう。

 緊張はしているが不安はない。特別実習の時の方が緊張しているくらいだ。


76日目

 

 

 マズい

 くろいすす たおす せいこうしたが 

 りゅうのす おそわれて

 おれのからだ ない


 にっきぶじ よかった

 もじ かくの ムズ!

 

77日目

 

 

 念写で日記を書くことに成功。昨日は爪先でペンを持って書いたもんだから酷いことになってしまった。

 今は知らない山奥の洞窟で日記に文字を念写中。改めて、マナの汎用性の高さにびっくり。

 

 昨日はどうやら、竜の巣がドラゴン協会の強襲にあったらしく、俺たちが戻ってきたときには建物は所々崩れ、協会の見張り兵士しかいなかった。当然、俺の身体もなかったワケで。

 締めあげた見張り兵士たちの話によると、ジルさんたちの動向を嗅ぎ付けた協会が、逆に竜の巣に攻めてきたらしい。

 タイミング悪すぎて草。


 爺さんたちは咄嗟のことに慌てることもなく、協会と結構良い勝負をしたらしいが、結局、爺さんたちは数の差で押されたっぽい。

 それから爺さんたちは逃げ、ドラゴン協会の主力たちはそれを追ってる最中だとか。

 例の協会のボス、アンガスも主力たちの中にいるらしい。アンガスもオリジン種も扱える達人だったとは知らなんだ。

 しかし、主将自らが先陣に出るとは、噂には似合わず、中々良い度胸をしている。

兵士によれば、アンガスのヤツ、自らの目でジルさんの死を確認したいのだとか。良い趣味してる。


 で、現在俺たちはジルさんたち、もとい俺の身体の行方を追っているのだが、中々捕まらない。

 というか、こんな姿なので派手に動けないし、いくらマナが多いからといって、雲の上から、初級の透視魔法、遠視魔法じゃ限度がある。透明化できる魔法プリーズ。


 まあ、孫たちを連れてる状況では、いくらあの爺さんたちも無茶はしないハズだ。

 どこか、安全なところに身を潜めているんだろうとは思う。


 兵士たちに一応、俺の身体のことも問い詰めてみたが、首を傾げていたので、ジルさんたちが保護してくれていると信じたい。

 フィオさんには少し事情を説明しているし、途中で捨て置く、ということも無いと思うが、あくまで希望的観測。

 こんな状況では、山道に捨て去られ、色々なモノが奪われていることも覚悟しなければ(白目)。


 まあ、協会のバックについている“黒い煤”はもう機能停止しているから協会の戦力を削げたことは間違いない。


 一応、昨日は予定通り、“黒い煤”に乗り込み、脅せるだけ脅してやった。

 “黒い煤”の研究所に向かう際は、人の目のつかない雲の上空を飛び、透視、遠視の魔法で研究所を視認。真上から奇襲をかけた。


 中に乗り込むと青白い顔をした魔術師たちが、色とりどりの魔術光線を放ってきたが、かゆいのなんの。

 雄たけびで全員失禁させてやった。


 で、“黒い煤”の設備、魔法陣等々を破壊し尽した後、“黒い煤”の重鎮たちを正座させて、“逆鱗”になりきったセリフでお灸を据えてやった。

 途中で何回も噛みそうになったが、その度に重厚な咳払いでゴリ押し。

 練習はしたものの、一人称を「我」にしたり、「であろう」とか、「許さぬ」とか、言い慣れてない言葉遣いが辛いんだよなあ。

 まあ、結果として、ヤツらも震え上がっていたので良しとしよう。


 というか、“黒い煤”の研究所、結構グロかったな。

 よく分からないドラゴンのホルマリン漬け?や、無数の管で繋がれている兵器ドラゴンの実験場、内臓が散乱した解剖室、血まみれの魔法陣とか鳥肌立った。まあ、厳密には鱗なので、鳥肌なぞ立つはずもないのだが。

 あれなら“逆鱗”に触れても文句は言えないだろう。ドラゴンの恨みを買うには十分だ。

 

 ともあれ、これから日も暮れて行動しやすくなるので、爺さんたち、および俺の身体探しを続行します。

 協会の奴らも見つけ次第、叩き伏せて早々に無力化しないと。

 しかし、アレだな。俺の作戦がまさかこんな面倒な探索になるとは思わなんだ。


 どうでもいいけど、今日は魔物(狼っぽいやつ)の生肉を食うハメになった。

 ドラゴンの身体なのでしょうがないのだが、まさか悪夢が正夢になるとは。

 夢じゃマズくて吐きそうだったが、ドラゴンの舌だと生肉も案外イケる。

 ディノは不満を言っていたが、お前、舌が肥えすぎ。

 竜の巣の料理はどれだけ美味かったんだか。



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