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62日目~64日目

62日目



 騎乗訓練の実習だったが、何か教官から「君に教えられることはもう無い」と言われた。

 まあ、爺さん家に飛んで行った時、きりもみ飛行も宙返りもマスターしてしまっていたので、ディノとの飛行は今や自由自在。最高速で曲芸飛行も何のその。

 で、実質、単位取得らしい。来週から来なくて良いそう。ヤター。


 しかし、何故か教官から、プロのドラゴンレーサーになるための進路やドラゴンレースの競技ルールやマナーについて、熱弁された。

 どうやら俺をドラゴンレースの選手にする気満々らしく、俺はやんわりとその話を流して、空へと逃避。

 正直、プロのレーサーとか面倒くさそう。

 仮にこの世界で職に就くとしたら、適当にドラゴンの治療師とかで良いです。あるいは爺さん家で農作業かな。


 で、今日は食堂で周囲をよく見渡して、生徒たちの胸元に黒いバッジが光っているのに気づいた。

 先日の話の通り、生徒の大半が協会派っぽい。

 どうでもいいけど、服装といい、バッジといい、協会のイメージカラーは黒なのか。

 偏見かもしれんが、何となく陰湿。今日もあいつら、絶賛ストーカー中だったし。


63日目



 命令基礎で今までの課題を復習するテスト。

 順番待ちがダルかったが、テストは無事にパス。毎度のことだが、楽勝。

 俺は楽でいいのだが、ディノは命令基礎の実習が一番退屈らしく、テスト中でも欠伸を連発する始末。

「ティアマトのおっさんと戦いたい」だと。勘弁してくれ。


 が、実習の後に事案発生。

 食堂に向かっている途中、中央広場で協会バッジを胸に光らせた先輩集団に絡まれた。

 自分でいうのも何だが、東洋系の顔立ちで黒髪の俺は巣の中で浮いていたし、実習では群を抜いて成績優秀。

 それでいて立派な貴族でも無い自分は、いつかは誰かしらに絡まれるだろうとは予想していた。

 逆に今まで何も無かったのが奇跡なぐらいだ。

 理由としては、ジルさんの後ろ盾があったか、あるいは、四六時中一緒にいるディノの存在が牽制していたためか。

 というのも、大抵の生徒たちは基本的なドラゴンの世話はするが、一緒に食事を取ったり、昼寝をする者はまずいないし、書庫で一緒に読書するなど論外だ。

 ある程度成長して、隷属魔法によって主従関係を教え込んでからは、距離を置くようになるのが普通。

 まあ、ディノの場合は生まれて二か月程度だし、実質幼竜みたいなもの。べたべたしてくるのは普通といえば普通かもしれないが、傍から見たら、俺は成竜をいつも脇に従えている変人に見えるだろう。近づきがたいのも分かる。

 おかげ様で誰からも避けられている気がするし、友達なんて(ry。

 ちなみにディノの身長は現在3メートル強。マナディストリビューション()を使ってから、また成長速度が加速した希ガス。

 最近じゃその大きさの所為で本が読みづらいと嘆いているため、ディストリビューションで視力を底上げさせているほどだ。


 閑話休題。

 で、今日絡んできた生徒たちはそんなディノに臆することも無い様子だった。

 というのも、竜の巣でも見たことの無い、禍々しげな黒ドラゴンを連れていたのだ。

 大きさ的にはディノと同じかそれ以上。ごてごてした首輪に、赤い目が鋭く光っている、いかにもダークドラゴンという感じのドラゴン。


 後でアメルに聞いて知ったのだが、あのドラゴンはドラゴン協会が独自で育成している「兵器ドラゴン」らしい。協会の人間が、従順な「同志」である生徒にだけ、横流ししているとかいないとか。


 そんな兵器ドラゴンがまずディノを威嚇、そして先輩諸氏が俺を取り囲むと、「調子に乗るな」、「目障りだ」等々の言葉でリンチ開始。

 集団の中には特別実習で見たような顔も混じっていたな。ティアマトとのブレス合戦に巻き込んで、恨みでも買っていたか。

 

 個人的には騒動を起こしたくなかったので、ディノに乗って、すぐその場を離れようとしたのだが、運悪く?バトラーを連れたアメルと遭遇。

 当然、アメルは眉を吊り上げながら、年上の先輩集団を非難してきたワケで。

 俺は学級委員にかばわれるイジメられっ子のごとく、アメルにかばってもらった訳だが、今思い返してみると、協会になびいている生徒たちにムカついていたアメルの私怨が混じっていた気がしないでもない。

 

 それからアメルは先輩集団に対して、「イジメ行為や巣外ドラゴンの連れ込みが所長に知れたら処罰される」等、注意したのだが、先輩集団は鼻で笑った。

 案の定、竜の巣がすでにジルさんの手から離れつつある、ということを先輩集団は見越しており、アメルの脅しに屈することも無かった。


 で、アメルを突き飛ばそうと先輩の一人が手を挙げた瞬間、アメルは柔道に似た謎の体術を繰り出し、あっという間に生徒を投げ飛ばした。CQC的なアレ。

 それから次々に襲い来るイジメっ子たちをアメルは投げ飛ばしていき、俺は目がテン。

 ベギ○マみたいな閃光魔法も華麗に避けていくアメルのスタントアクションに見入った。

 そうして何故か、俺VSイジメっ子、だったはずが、アメルVSイジメっ子の構図に。


 それから、投げ飛ばされて業を煮やしたリーダー格の一人が兵器ドラゴンに「あいつを捕まえろ!」と命令。

 同時に、アメルへ襲い掛かろうとした兵器ドラゴン。

 しかし、咄嗟にディノが前に立ちはだかると、ガキンッと良い音を立てながら、自前の爪で弾き返して兵器ドラゴンを退けた。

 特に命令もしてなかったけど、俺をかばったアメルに対するディノの良心らしい。

 あのドラゴンに握りつぶされたら、さすがのアメルもヤバかったかもしれないのでナイス判断。まあ、アメルがすでに過剰防衛で生徒たちをヤバい目に合わせていた気もするけど。

 

 それから敵わないと判断したのか、リーダー格のヤツが「ただじゃ済まさねえぞ!」的なセリフを吐き捨てて、イジメっ子の先輩たちはドラゴンと一緒にどこかへ逃げていった。


 残されたアメルとディノのドヤ顔、何もしていないバトラーの謎の雄たけび。

 そしてポカーン顔の俺。


 その後、何故かアメルと食事を共にすることになり、巣内で協会を擁立している協会派とジルさんを擁立している所長派の対立が激化していることや、ドラゴン協会が保有している兵器ドラゴンの件など、物騒な話を色々と聞かされた。

 さらに今後、ドラゴン協会が圧倒的多数の協会派の生徒たちに働きかけて、ストライキやデモ等の強行手段に出る可能性がある、という情報も伝えられた。

「一緒にあいつらを駆逐するのよ!」というアメルの熱い意思も。


 こうして俺は所長派として協会派と対立することになったとさ。

 …て、なんじゃそりゃ!


64日目



 今日は特別実習。

 といっても、大半の生徒が欠席だったので実習の体を成していなかった。

 アメルが昨日言っていたように、協会派の生徒たちがストライキを起こし始めているらしい。

 まあ正直、特別実習はただの弾幕ゲー&無理ゲーなので、元から実習の体を成していなかった気もするけど。

 

 俺とディノはティアマトの攻撃を避けながら、隅っこで実習を見学していた。

 本当は実習の後、ジルさんの個別指導を受ける予定だったのだが、最近の巣内での騒動で忙しいらしく、中止になってしまった。

 そんなこんなで、今日は隅っこで実習を見学することに。

 本当は部屋に戻っても良かったのだが、欲求不満のディノが「せめてティアマトのおっさんを見たい」とか言うので見学させてもらうことに。

 というか前から思ってたが、「ティアマトのおっさん」って表現はどうよ。


 で、実習の方は、というと。

 やはりアメルを始めとして、生徒たちは苦戦していた。

 いつもの通り、開始10分と立たずに皆、瀕死状態。もう見慣れたけど、やっぱ地獄だね、アレは。

 当然、アメルもバトラーと一緒に、俺たちのすぐそばに吹っ飛ばされてきた。

 目を回すバトラーに必死で声をかけるアメル。


 そんな状況の時、何となく思い付いた俺。

 回復するついでにバトラーにマナを分けてみたのだ。

 気まぐれに、とは言わないが、昨日のこともあるし、一応お礼のつもりで軽く分けたつもり。

 

 だったハズなのだが、何故かごっそりとマナを持っていかれました。軽く疲労感が出るレベル。

 もちろん、マナの相互交換ができないこと、マナが消費される可能性を考慮に入れ、マナの元栓を慎重に緩めたのだが、思った以上に流れ出してしまってびっくり。

 オリジン種のポテンシャルの高さ故か、吸い取られるようにマナを持っていかれたワケで。


 ともあれ、結果的にバトラーが超進化したことは言うまでもない。

 騎竜なのでディノほど巨大化しなかったが、2メートル位だった身体は3メートルを超えるほどに成長。

しなやかな体躯は強靭で、かつ均整の取れた筋肉を帯び、爪牙も鋭利に変化。

 顔つきも随分勇ましくなった。

 で、そんな変化に唖然とするアメル。


 ヤバい、俺が何かしたかバレるかなー、と心配していたら、何か目を輝かせて「私とバトラーの絆が奇跡を起こしたのね!」とか叫んでバトラーに抱きつきました。

 アメルが馬鹿でよかった!と思ったのはあれが初めて。


 で、それからバトラーは進化した能力を万遍なく発揮した。

 進化後は、バトラーは透明化するだけでなく、周囲に重力場を発生させて、攻撃を無効化する能力を得て、ティアマトの攻撃を難なくかいくぐった。

 さらに、オリジン種の代名詞であるブレス能力も得て、騎竜ながらも強力なコールドブレスでティアマトの目元を凍らせ、最後は重力場を纏った体当たりでティアマトを吹っ飛ばした。

 言うなれば、グラビティチャージ。


 他の生徒はポカーンとしながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶアメルとバトラーを見、ジルさんは呆れたように笑いながら俺の方を見てきた。

 何か…すいません、ジルさん。


 ちなみに、思っていた通り、バトラーに分けた俺のマナは戻らず、バトラーは超進化したままです。

アメルはバトラーの急成長に泣くほど喜んでいたが、あれが俺のチート能力と知ったらどんな顔をするか。

 プライドを深く傷つけるに違いない。悪い意味でまた泣くな、たぶん。


 …疲れたので今日はここまで。

 何というか、身体の芯が疲れている感覚。マナの使い過ぎには注意だ。

 特に今後、オリジン種にマナを分けるような場合は気をつけよう。



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