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59日目~61日目

59日目



 書庫でひたすら自習。

 したかったのだが、午後から早速アメルが現れ、何故か先日の特別実習の反省会が始まってしまった。

 …俺は特に反省すること、無いんですが。一人勝ちだったし。

 なんてことはおくびにも出さず、アメルの一方的な反省を聞くハメに。

 ティアマトの攻撃の性質をよく理解する必要があるだの、受け身になってしまったらダメだの、バトラーとの連携を鍛える必要があるだの、そういった感じの反省を延々と。


 しかし、今日のアメルは、あいつにしては意外と殊勝な感じだったな。

 どうやら俺が課題をクリアしたことについて、嫉妬しながらも一目置いているらしく、あわよくば、アドバイスでももらいたい、というような様子だった。

「あんな小さなドラゴン一匹でどうやって…?」チラッチラッ、みたいな感じ。


 まあ、アメル含め、他の生徒にはディノの変身は見られていない。どうやってクリアしたのか気になるところだろう。

 チートの変身で楽勝でしたー!なんて言えば済む話だったが、そんなこと言ったら面倒くさくなること請け合い。

 意識高い才女のことだから、俺の能力について根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。ジルさんも大概だったし、孫娘の方も察するに余りある。

 それにジルさんにも言ってあるが、あまり他人には俺の能力を知られたくないのだ。それこそ、例の完全体の一件もあることだし。

 そんなこんなで、先日の実習について、アメルには作り話で誤魔化した。


 死闘の末、ディノが信じられない力を突如発揮して、ティアマトをやっつけた、という週刊少年誌的な展開を捏造。

 俺とディノの深い絆が起こした奇跡→完全勝利ってヤツ。


 で、そんなアホみたいなつくり話だったのだが、アメルのアホみたいな意識の高さのせいか、「なるほど!」と目から鱗みたいな顔された。

 それから何を思ったのか、「私とバトラーに足りないのは絆よ!」

 などと叫ぶと、立ち上がってどこかへ行ってしまった。

 一応、どこへ行くのか聞いたら、「ドラゴンの厩舎! 今日はずっとバトラーのそばにいるわ!」だと。

 黄金色のことも忘れてやるなよー、と言ってやったが、聞こえていたかどうか定かじゃない。


 まあ、そんなこんなで、夕方からはまた勉強できたのでよかった。

 夕食も刺身だったし、ヘッドウィグの同好会でリーザさんと喋れたし、上々の一日。


 そういえば、リーザさんから聞いた話だが、ドラゴン医療学の演習で、ドラゴンの臨床実験中にドラゴンが暴走、何人かの生徒が瀕死の重体に陥ったらしい。

 麻酔魔法?が不十分だったらしく、責任問題になっているとか。

 オタクの方でも標本にする予定だったドラゴンの骨格が盗まれるという事件が起き、面倒なことになっている。


 先日のスライムパニックや厩舎の事故といい、最近物騒な事件が多いな。

 そして、それらの後処理に追われているであろう、ジルさんに合掌。

 

 というか、昨日から黒服の人間が巣内をウロチョロしていて鬱陶しい。

 書庫で勉強しているときも、異様に背が高くて、目がギラギラした男に睨まれたし、何なんだあれは。

 ディノも視線を感じてイライラするらしい。ホント勘弁。



60日目

 

 

 座学の授業にも黒服達がたむろしていた。

 飛行訓練の教官は特に気に留めていなかった、というかむしろ黒服たちと懇意な感じだったのだが、「ドラゴンの種と起源」の教官は黒服達にイライラしていた。

 年増のデキる女性、といった感じの教官なのだが、綺麗な眉間に思い切りしわを寄せて黒服たちを威嚇する感じ。さながらドラゴンの睨みつけ。

 そして、ついにしびれを切らした教官は、黒服たちに「小テストをするから出ていけ」という旨を告げて、黒服たちを教室から追い出してしまった。

 で、これが完全に抜き打ちテスト。言い換えれば、黒服達を追い出すための口実のテスト。

 昨日、書庫でしっかりと復習していた俺氏だったが、結果は振るわず。赤点不可避です。


 しかし、だ。

 小学生がいくら勉強したって、一週間や二週間で高校生の勉強が分かるわけない。

 俺はそのレベルなのだ。すなわち、空欄ばかりの解答用紙は予定調和、というか、避けようのない未来、というか何というか。

 ま、言い訳にしか過ぎないけどネー(白目)。


 というか、ドラゴン協会の人間がいよいよ目障りになってきた。

 食堂で食事をする時も、近くに座って俺のことを監察してくる始末。

 例の背の高いヤツは相変わらず怖い顔して見てくるし、その他大勢も俺とディノのことを指さしながらひそひそ話。

 ディノが珍しいのか知らんが、日常のささやかな楽しみである食事中までストーカーじみたことされるのは良い気がしない。

 モノを食べる時は誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで・・・(ry


 で、食事の後、ディノに軽く火を噴かせて奴らを威嚇したら、何人かがひっくり返った。良い気味。

 遠巻きに「き、貴様にはバッジを与えんぞ!異端者め!」とか言われたが何のこっちゃ。

 ストーカーに異端者とか言われたくない。


 


61日目



 今日は座学の勉強をする気が起きず、クラージアさんから借りた魔法の本を読んで過ごした。

 攻撃魔法や回復魔法、守護魔法、呪術魔法などが真面目に語られている本。

 羅列される厨二ワードに胸を熱くして読みふけってしまった。

 肝心の内容はあまり頭に入ってこなかったけど。


 で、夕方からヘッドウィグの同好会に顔を出した。

 のだが、盤面の前で「待っていました」と言わんばかりに仁王立ちしていたアメルに目がテン。

 そしてその後、流れでアメルと対局することに。

 何でも、アメルも「ヘッドウィグ七星」の一角らしく、四番目だか五番目だかに強いのだとか。(クラージアさん談)


 そして、「ヘッドウィグでは負けないわ!」とか意気込んでいたアメルを、ボッコボコにしてやった良い思い出ができました。

 いつになく俺は攻めて、アメルに攻めさせる余裕すら与えない試合運びを展開。

 最後、涙目になったアメルを見て、少し大人げなかったかと反省する位のガン攻め。

 それからはいつものようにクラージアさんやリーザさん(それと何故かオタクも)を交えてヘッドウィグの検討会。

 アメルも悔しそうに涙をにじませながら、検討会に参加してきた。ホント、へこたれないヤツ。

 

 で、途中で「協会バッジ」の話になった。

 昨日、食堂で協会のヤツらが言っていたアレ。

 話を聞くと、件のバッジはドラゴン協会を支持していることの証明&協会から庇護を受けている証明らしい。

 で、生徒の間でその「協会バッジ」を身に着ける者が多くなってきているのだとか。

 

 なんでも最近、竜の巣で不祥事が続いていることから、多くの生徒やその保護者である貴族の間で竜の巣の運営をドラゴン協会に委譲しよう、という考えが広まっているらしい。

 現在、竜の巣はドラゴン協会の資金援助のもと、ジルさんを筆頭としたドラグナーの運営陣が管理しているが、そういった二権分立的な関係を解消し、権限をドラゴン協会に全て集約しよう、という流れ。

 リーザさんやアメルの話によれば、最近竜の巣でドラゴン協会の人間がうろついているのは、そういった流れに乗じて、実習の監察や生徒たちへのネガキャンに勤しんでいるのが理由だとか。

 バッジの配布もそうした活動の一環で、生徒とその保護者の大部分を取り込み、合法的に竜の巣を乗っ取ろうという魂胆。


 しかし、アメルの話じゃ、最近の不祥事は協会側によって「仕組まれた」可能性が高いらしい。

 事実証拠は周到に隠されているが、ジルさんを貶めるための協会側の謀略。

 協会サイドに取り込まれた生徒たちが作為的に起こした事故もあるとかないとか。


 そんなきな臭い現状の裏には、どうやら政治がらみの協会とジルさんの対立があるっぽい。

 アメルが罵詈雑言と共に、憎々しい顔で協会の不満を並べていた。

 侵略戦争を支持する協会は有り得ないとか、ジェルミナ協定を破ろうとする愚か者どもとか、云々。


 …まあ、アレだ。

 とりあえず平和に生きていたいので、戦争はしない方向でお願いします。



 

 


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