表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/32

1日目~7日目

1日目



 俺は神栖竜。高校二年生。何が災いしたのか、異世界に召喚されてしまったらしい。

 ちなみに今、俺が書いているのは、「ドラゴン育成日記」という日誌。

 俺がこの世界に召喚されたとき、「マスタードラゴン」とか名乗るドラゴンがドラゴンの卵と一緒にくれた代物だ。

 どういうわけか、俺はドラゴンの卵を孵化させて、そのドラゴンの成長記録をこの日誌に書かなければならないらしい。

 しかも、一週間何も書かないでいると死んでしまうというオプションつき。なんじゃそりゃ。


 ドラゴンの卵とかどうしたらいいのかさっぱりなので、とりあえずこの日誌には俺の現状の整理を書いていこうと思う。(つまりただの日記)

 死にたくないしね。


 今日はもう寝る。

 夢なら覚めろ。


2日目



 昨日から、老人とその孫娘の住む家に居候させてもらっている。

 マスタードラゴンに墜落させられた森の中で、老人が俺のことを保護してくれたのだ。名前は通称(自称)ゲン爺さん。

 異世界召喚やマスタードラゴンの話をすると、爺さんは首を振って、ちょうど力仕事をする人間が欲しかったんだ、ややこしい話は後々聞こう、と強引に家まで連れてかれた。

 まあ、途方に暮れていた俺に本当よくしてくれているので感謝している。

 今日は早速、畑仕事を手伝った。手が死ねる。

 

 孫娘はというと俺をすこぶる警戒している。今も後ろの扉の裏から鋭い視線を感じる。

 ちなみに、孫娘さんの名前はフィオというらしい。爺さんに比べて、名前がファンタジー過ぎて草。

フィオさんは見た目12歳かそこらだが、料理がとてもうまい。

 今日の夕食で出た肉と野菜を使ったキッシュは絶品だったし、昨日のシチューみたいなスープも頬が落ちそうだった。

 料理がとても美味しかったことを伝えると、少し顔を赤らめた。(ような気がした)


 卵の方はまるで変化なし。まあ、一日や二日で孵るわけもないが、ドラゴンの卵だから何が起きても不思議じゃない。

 一応、ベッドの中で温めている。

 

 野良仕事で疲れたのでもう寝る。

 

3日目



 筋肉痛がやばい。

 現代人の高校生に畑仕事なんて土台無理な話だ。

 

 早速、爺さんに弱音を吐いたら「黙るかバルバドスゴルフィーの餌になるか、どっちか選べ」と言われた。

 何その悪魔。聞くのも怖かったので、黙って鍬を動かした。

 

 卵は相変わらず変化がない。

 ペンを持つ手が震えるので、今日はここまで。

 

 茸のパスタが美味かった。

 

4日目



 何とゲン爺さんは昔、ドラゴンを育てたことがあるらしい。

 その話を聞いて、フィオさんも目を丸くしていた。

 

 爺さんの詳しい経緯は聞けなかったが、困ったことがあったら何でも聞けと言ってくれた。

 爺さんによると、ドラゴンは変温動物なので卵を温める必要は無いとのこと。

 これで布団の中が窮屈じゃなくなる! とか思ったが、卵は何となく布団の中に入れたままにしておく。 温めたところで悪くなるわけじゃないしね。

 

 今日も筋肉痛がひどいが、昨日より少しはマシになってきた。

 明日は何やら野菜の収穫を手伝わされるらしい。どうか楽な仕事でありますように。

 

5日目



 疲れた。身体がもうくたくた。

 何でも、シルビスという人参に似た野菜の収穫を手伝ったのだが、あの野菜、引き抜くのがかなり難しかった。

 悪戦苦闘していた俺の横では、爺さんが涼しい顔でシルビスをもぎ取っていた。しかも片手で。

 やけになって変な声を出しつつ引き抜こうとしていたら、見かねたフィオさんがシルビスの摘み方のコツを教えてくれた。

 で、フィオさんに言われた通りに両手首のスナップをきかせて引っ張り上げると、面白いように引き抜くことができた。

 

 感謝したら、フィオさんは何故か怒ったような表情?になって収穫に戻っていった。

 俺、何か悪いことでもしたのだろうか?

 

 まあその後、調子に乗った俺が収穫前のシルビスまで取ってしまい、爺さんにこっぴどく叱られたのは良い思い出。

 

 明日も別の仕事があるらしく、ただただ憂鬱。

 まあ、居候させてもらってる身なので文句は言えないけど。


 卵変化なし。

 

6日目



 今日は昨日取ったシルキスを物々交換するため、近くの村まで爺さんと出かけた。

 で、生まれて初めて馬車というものに乗った。

 正確には馬車ではなく、鳥車。チョ○ボのような鳥の馬(ポップクリンというらしい)が曳いている、いかにもファンタジックな乗り物だ。

 ポップクリンは普段、フィオさんが熱心に世話をしていて、出かけるとき、くれぐれも怪我させないように、とフィオさんに釘を刺された。あのときのフィオさんの表情はまさに般若。思い出したくない。

 

 村では円滑に物々交換を済ますことができた。

 村人たちはゲン爺さんにあまり関わりたく無いような雰囲気だったが、気のせいだろうか。

 

 シルビスのソテー美味すぎ。フィオさん料理上手すぎ。

 卵、変わらず。

 

7日目



 今朝、何と卵が少し動いた。今も大体三十分刻みに動いている。

 爺さんに報告すると、桶に砂を敷き詰めて、その上に卵を立てておけ、とのこと。

 その際、卵の尖った方を上にしないと、奇形で生まれてしまう可能性があるらしい。

 トカゲか何かの卵も確か、動物極と植物極の関係で逆さにすると孵化しないという話を聞いたことがあるが、ドラゴンも似たようなものか。


 今日の午後は爺さんに言われたように、枕元に卵をセットしておいた。

 枕元にセットしたのは、いつ生まれても俺が親であると刷り込ませるためだ。爺さん曰く、この刷り込みが一番大事、らしい。


 しかし、ドラゴンの雛とは一体どんな姿をしているのか。

 卵は人間の子ども大あるから、大体の大きさの見当はつくが、グロいのは勘弁願いたい。

 朝起きて、ベトベトな生物が目の前で蠢いているのを想像すると、ちょっと憂鬱になる。


 クロブー肉?の香草焼き、美味し。

 



日にちが進むごとに、竜君(執筆者)の筆が乗ってくるため、一日あたりの文字数が増えていきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ