#27 黒幕
―地下1階 12/24 午後9時 残り16時間―
休息をとり、武器も調達した。
調達した武器はFA-MAS-G2。サン=テチエンヌ造兵廠製突撃銃の頭文字を取ったフランス軍制式ライフルの改良版だ。
また、グロック19、日本警察のSATでも採用されている銃も手に入れた。
両方とも僕の能力に対応した弾数の多い銃で、携帯性にも優れている。
それに伴って、元々持っていた銃も全て捨てていった。
地下2階を踏破し、僕達は地下1階へと辿りついた。
そこで、僕達が待っていたものは、ロボットの大群だった。
「な、何なのこの数・・・!」
僕達にはまだ気づいていないようだったが、先に行くには避けては通れないだろう。
レーダーでの反応を見る限り、ざっと50体は居た。
「夕姫、後ろから援護お願い。」
「え?う、うん。わかった。」
僕は深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
落ち着け。僕なら出来る。
「じゃあ、夕姫。行ってくる。」
僕は夕姫に合図をし、銃を構える。
そしてその瞬間、世界は静止した。
――――――――――――
「ふー・・・」
銃をリロードしながら片膝をつく。
敵はざっとレーダーに50体はいたが、あとから増援が来たので、その倍は倒したと思う。
おかげで何とか僕達は地下1階の最奥までたどり着くことができた。
「りゅうくん、大丈夫?」
夕姫が僕の様子を心配して近寄ってくる。
「大丈夫だよ。ちょっと疲れただけだから・・・」
僕はふらつきながらも立ち上がり、目の前の最後の扉になるであろうものを見つめる。
ついにここまで来た。
ここを超えれば、やっと僕達は地上に出られる。
これまでここで過ごしたことがついさっき起きたことのように、脳裏に浮かんでは、消える。
夕姫との約束。それを守るために。絶対にここから2人で生きて出る。
「夕姫、行こう。」
「うん!」
2人で扉を開き、部屋の中へと入る。
部屋に入って一番に目についたものは、天井。
強化ガラスか何かだろうか、天井は透明になっており、夜景が見える。
だが、所々に電灯は灯っており、夜景を邪魔しない程度には光源は確保してある。
数日ぶりの夜景だが、雪が降っており、とても綺麗だった。
・・・そういえば、今日クリスマスだった。
「君達が最初に辿り着くと思っていたよ。ようこそ、流生くん。夕姫くん。」
目の前に若い男性が立っていた。
金髪。スーツ。サングラス。まるでマフィアのような格好をしていた。
「お前は誰だ!」
僕は叫び、銃を構えて目の前の男を見据える。
この男が地下1階のボスなのだろうか?
「おっと、これは失礼。俺の名前は武藤清一郎。またの名をアルフレドと言ってね。ここ、タルタロスの管理者をやっているんだ。」
武藤は銃を向けられても余裕な様子で、笑みを浮かべながら話している。
「ここの管理者?ということは貴方が黒幕ということでいいのね?」
「まぁそういうことになるかな。折角だし、ここまで来たご褒美として僕に何でも質問してもいいよ。」
この男の余裕。銃を向けられても平然としている。
何かあるのか?でも、黒幕というなら聞きたいことは聞いておこう。
「じゃあ遠慮なく質問させてもらう。お前達の目的は何だ!こんなことをして何がしたい!」
「そう言ってくると思ったよ。僕達の目的を話す前に能力に関して説明しておこう。
君達が使ってる能力、それって何だと思う?」
僕達が使っている能力。最初の説明はナノマシンと言っていたような気がする。
「君達の中にあるナノマシンは"願望を形にする"素晴らしいものでね。例えば弟を守りたいという願いを叶える為に少女とは不釣り合いな力を与えたり、冷徹でありたいと願った女が自分を氷にしたりね。
でも、単体ではその願望を完全に叶えることが出来ないから、他の力を持ったナノマシンを吸収したりして能力を高めるんだ。これが、レベルアップのシステム。」
「肝心な所を答えてないわ。それを使って一体貴方達は何をしようとしてるの?」
「簡単なことさ。最強の能力を作る、これが目的。その最強の能力を何に使うかは後で考えればいいさ。」
人間にナノマシンを入れて能力発現させる。
そして、ゲームと称して人間を殺しあわせ、能力を高める。
ここはその人体実験場なのだ。
「貴方達は・・・そんなことの為に・・・」
「別にいいだろ?元々死にかけだった奴を連れてきただけだよ。どうせそのままだと死ぬし、生きるチャンスを与えてるだけ良心的だろ?」
武藤は何の悪気もなく笑う。
クックック。
そんな擬音が似合いそうな笑いだった。
「でも、流生くん。夕姫くん。君達だけは別だ。」
「え?」
「君達は意図的に連れてこられたんだよ。この実験場に。」




