#24 逃走
―地下3階 12/24 午前11時 残り24時間―
部屋から出てすぐのこと。
俺達は追われていた。
・・・巨大なゴリラのようなロボットに。
今の光景はさながらコメディ映画のようだ。
「いやいや、何なのこれ!?」
先ほどの部屋でシャッターの操作出来るプログラムを手にいれたので、閉めながら逃げているのだが、
ガシャァァァン
両腕でシャッターを一撃で粉砕。
「ここに細い通路があるわ!そこなら追ってこれないはず!」
夕姫が手元の地図で指差したところは、とても細く、あの巨体では通れそうもなかった。
「でもどうやってそこまで行くの?」
指差したところは今逃げている方向とは反対側の方向だった。
かと言って妨害して反対側に回ろうとしても、圧倒的な力でねじ伏せられてしまう。
唯一の救いは、今のところ追いかけてくるだけしかしてきていないことだ。
「何か策はある?」
「・・・ある」
「さっすがりゅうくん!まあ任せるよ!」
ないとは言えなかった。
もしないと言えば夕姫の取る行動はただ一つだ。
走りながら、頭をフル回転させる。
何か、何か策は・・・
ふとマップを見る。
確か、操作出来ないシャッターに阻まれて通れなかった通路が無かったか?
そして、それは途中で僕達が逃げた通路に連絡していなかったか?
「夕姫!こっち!」
夕姫の手を引く。
「えっ、こっちって確か・・・」
戸惑う夕姫の手を引き、ひたすら走る。
そして目的地の近くの部屋の前で立ち止まり、ドアを開ける。
「夕姫、・・・ごめん。」
「えっ?」
「ちょっと!りゅうくん!!!そんなの!!!」
夕姫を危険な目に遭わせたくない。
ただそれだけだった。
夕姫を部屋の中に押し込み外から電子ロックを掛ける。
普通にドアを打ち抜けば出て来れるが、これでしばらくは時間が稼げるだろう。
あとは・・・
後ろから迫ってくる音を聞いて一目散に走り出す。
・・・あった!
開かないシャッター。
夕姫ですら壊せなかったが、やつのバカ力なら壊せるはずだ。
シャッターにもたれかかると、既にあのロボットがすぐそこまで来ていた。
僕に狙いを定め、腕を振り上げて突進してくる。
不思議と恐怖はなかった。
僕にはそれがスローモーションに見えたからだろうか。
ギリギリまで寄せて、腕を転がって避ける。
ガッシャァァン
シャッターにロボットの腕が貫通していた。
あんなのまともに食らえば、全身骨折どころじゃ済まないだろう。
だが、目的は完遂した。あとは何とか穴をくぐってシャッターの向こうへ行けば・・・
ロボットが穴から腕を抜き、間髪いれずに叩き潰そうとしてくる。
またその動きがスローに見え、腕の軌道が正確に見える。
腕を避けて、シャッターに出来た穴目掛けて走り、飛び込む。
「やった・・・!」
とりあえず作戦が成功して安心する。
しかし、すぐにでもこのシャッターを壊してあのロボットが来るのではないか、という恐怖に駆られる。
急いで逃げようと思い、反対側を向くがそこで僕は目を疑う。
通路が伸びているであろう場所はなく、そこには他とは異質の空間があった。
今までの無機質な空間とは違う、黒い壁、白い扉。
道を間違ったのかと思ったが、マップを再確認して間違っていないことを確認する。
一体何なんだここは・・・。
後ろであのロボットらしき音がする。
とりあえず、白い扉の先へ逃げ込もう。
幸いロックは掛かっておらず、扉を開けることが出来た。
扉の中は扉の外と同じ黒一色の空間で、天井から無数のライトが眩しいぐらい照りつけていた。
そんな異様な空間の中で佇む人間が1人。
「ごきげんよう」
「・・・お前はッ!」
見覚えがあった。
地下6階で会った秘書のような女性。
僕達を眠らせた謎の相手だ。
「そして、さようなら。」
僕に向かって銃口が向けられた。




