表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

父の死

栄男の父・正信に、赤紙が届いた。

正信は、戦場へ向かうのだが……。

「畜生ッ!」

 正信は右肩を撃たれた。おびただしい量の血が、どっとあふれ出た。

「アメ公めぇ……!!」


 彼の勢いは、負け続ける日本軍に遡るように、増していった。

「ぬおおおおお!」

 銃を一発撃てば、敵は一人倒れる。が、仲間も一人死ぬ。

 戦友は爆風に足をもぎ取られた。

 血しぶきの中、足のないままグルリグルリと廻った。

 やがて、静かに倒れた。

 静寂は一瞬だ。また敵の爆撃は始まった。

「くそうっ!負けてたまるかッ!」

 正信は勢いよく飛び出し、銃声を鳴らし続けた。

 しかし、後ろではまた、一人死んだ。

 心臓から足の底まで、銃弾が貫いている。

 声を上げて、倒れる者もいる。目玉は焼けていた。

 まだ若い兵士は、「お母ぁさん……」と叫び、倒れた。胴体の形はほとんど無かった。


 正信は思うのである。


(家族が家で待ってるが、ここで死ななければ、俺は戦友にどうやって詫びれば良い?どうも詫びることは出来ない。俺がここで死ねば、日本はきっと……)


 手榴弾を握った。

 倒れた仲間の者も、拾い集めた。

 すっと大きく息を吸って、勢いよく飛び出した。


 疾風のごとく彼は駆けた。

 銃弾が体に食い込む。

 痛さなど、無い。

 ただ、自分の目の前には、死の道が広がっていた。


(栄男……栄男……栄男……)


 心の中で、叫び続けた。長男のことを。

 もう自分は帰れない。日本のために散るのだ。

 日本の勝利の、先駆けとなるのだ……と。



「ぬおおおお!万歳!」


 ドンッと大音がし、大地は砕け散った。


 彼は、先駆者となったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ