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開戦
ザカザカしたラジオの音声から、開戦の情報が流れた。
栄男の手を握りしめていた勲も、万歳!と叫び、大喜びしたのだった。
その途端、辺り一面が、万歳!の声であふれた。歓声が飛び交い、暗い気分になど鳴る者は、一人としていなかった。
栄男もその一人である。
「あっ、やべぇ・・・。忘れてた」
栄男は、万歳と叫び続ける勲の手を無理矢理引っ張った。
「痛ぇよ・・兄ちゃん」
「いいから。父さんと母さんがまってるぞ」
しかし、尚も勲が抵抗するので、栄男はぐぐっと手を握りしめてやった。
「あうっ!」
と勲は声を漏らし、涙目を浮かべて栄男に続いていった。
家には、母親の登美子が料理を作って待っていた。
「おかえり」
「ただいま」
と、二人は短く言って、それぞれおかずのジャガイモに手を伸ばした。
「こらっ!二人とも」
二人は勢いよく口に放り込み、ハフハフ…とやってみせた。
「熱い、熱い!」
開戦を重く考えていなかったこの二人が、後にどうなるか、誰も知らなかった。




