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いつもの風景に

登下校の折、黒髪と茶髪の二人の少年はアスファルトの上で息も絶え絶えの雉猫を見つけた。

そのまま通り過ぎようとしたが、付近の電信柱の陰に一匹の子猫が震えるようにして隠れていた。

子猫は頼りなさそうにみゃーみゃーと小さく鳴いているが、その鳴き声はか細く母親は聞き取ることができない。


黒髪の少年は瀕死の猫を見下ろしている。


黒髪の少年のポケットにはいつもナイフが忍ばせてあった。

一度も使ったことのないそのナイフをポケットの中に確かめながら

少年は傍らの友人に問い掛ける。

「俺って自分勝手かな?」

茶髪の少年はこの事に興味がなさそうに目を空に彷徨わせている。

「そっかな」

少年は傍らの友人を見ることもなく、しかしその眼は先程までとは違い、黒みが増し遠く道の境界線を見つめている。

「そっかな」

茶髪の少年は再び同じ答えを繰り返した。

黒髪の少年はポケットで弄っていた折り畳みナイフを取り出す。しゃがみこんで雌猫の目をじっと見つめる。

片目は最早生きている物の其れではなく、一つ残った方の眼も端から血が滲んで周りの毛を赤く染めている。少年は手を伸ばすと猫の背に沿って毛羽立った体毛を整えるようにして擦った。温かみがなくごわついたその背中は安物の縫いぐるみみたいに思えた。少年は手を止めるとナイフを利き手に持ち替えて猫の首筋に持っていった。

良く手入れされた刃は不思議なほど猫の喉元に吸い込まれそのまま猫の首を切り取るようにぐるりと半周ナイフを回した。思った程血は出なかったがそれでも猫は暫らくすると動かなくなり不自然に止まったその姿勢はどうしようもない気持ち悪さが胸に迫らせ喉の奥から苦いものが込み上げてきた。

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