一話.「制裁」その1
医療従事者ではないのでおかしい描写があるかもしれません。有識者の方教えてください。
登場人物ふりがな
上杉凛香 うえすぎりんか
宮秋潤 みやあきじゅん
佐伯卯利愛 さいきうりあ
原木美愛葉 はらきみあは
2020年、新型コロナウイルスにより、日本全国の学校が休校になった。その影響でどんどんと学校に通いづらくなった子供が増え、そんな子供達の溜まり場となったのがトー横。
トー横に泊まり、オーバードーズや性犯罪、リストカットに手を染めたりしている子供たちのことを、世間ではトー横キッズと呼ぶようになった。
当然、警察や更生施設のスタッフはトー横キッズたちを野放しにせず、柵を建てたりするなどして取り締まりを強化。
その影響で補導されるトー横キッズが爆増した。
泣き叫びながら引きずられ、補導されるトー横キッズ。
そんな彼ら、彼女らは、本来ならば犯罪にも自分を傷つけることも知らずに普通に学校に通い、友達ができて、普通の学生生活を満喫していたのだ。
警察に補導され、世間には救いようのない哀れな子供というレッテルを貼られ。
_____果たしてそれでトー横キッズは救えているのか?
上杉凛香。
冥王星総合病院で精神科医を務めている。
とても評判が良く、優しくて朗らかな医師。
しかし、それはただの表の顔である。
裏では正体を隠しながら、日々トー横に通っている。
そこにいる、子供たちを救うために。
医師としての知識を用いて、子供に悟られないように診察する。
そこで、あまりにも度をこしている健康状態であれば冥王星総合病院に搬送し、救う。
別名、トー横キッズの救世主。トー横界の女神。
トー横キッズを救う際の姿は、周りに正体がバレないように顔に濃いメイクを施し、地雷系の服を身に纏う。
冥王星総合病院では、ちょっとした有名人にもなっていた。
当然、病院のスタッフは彼女があの朗らかで優しい精神科医、『上杉凛香』とは気づいていない。
2040年、11月13日午後10時32分。
「患者、佐伯卯利愛14、女性、OD、血圧110の70脈拍89、ジャパン・コーマス・ケールII、−100。両腕にリストカット痕あり。深く切り裂いた影響で動脈がきれている。」
救急隊員が言ってることに耳を傾けながらトー横先生はストレッチャーをおす。そして、佐伯卯利愛という女性を再度診察する。
反射は問題ない、けど…この子、喘息持ちだね。その発作も同時に起きてる。
いつものようにトー横をぶらついてたら、腕から大量の血が吹き出しているこの子を見つけた。
軽いリストカットくらいなら見逃しているものの、さすがに命の危険があると判断し、救急車を呼んだ。
足の露出が極端なミニスカに、黒くてモコモコしたパーカーを着ていて、濃いメイクが顔に施されている。きっと、濃いメイクを取ったら明るくて綺麗な顔立ちだろう。
その顔には今、酸素マスクがつけられており、苦しそうにもがいている。
「あっ!卯利愛ちゃんわかるー?腕痛い?」
「あ、あ、う…んあ、」
意識があんまりはっきりしてないね。一刻も早く腕の動脈切れてる。手術しないと!
「わかったわかった。腕の手術するからね。」
近くにいた看護師の渡木に言う。
「外科に連絡して。早く。」
慌てたように内線電話を取り出して渡木は、外科に連絡をとり始める。
「あーあと、研修医の、遠藤くん。市役所に連絡して佐伯卯利愛さんの親御さんの連絡先探してくれない?そして探せたら連絡して」
「はい!わかりました!」
遠藤がスマホを操作し始めるのをみたら治療にうつる。
何回も何回もこの手の患者は見てきた。
もう、慣れたくないのに慣れてしまったこの手の治療、患者。
「終わった?トー横先生。」
「なんとか。あー疲れた。」
渡木という看護師は、砂糖入りのコーヒーを差し出してくる。
「あー大丈夫。あたし、ブラックしか飲まないから。」
「先生おっさんみたいなこと言うんですね。まだまだお若いのに。そういや先生は研修終えたんですよね?なんでどこの病院でも働かずにトー横に入り浸っているのですか」
だって中身アラサーなんだもん。ブラック好きだもん。
てかまたこの質問か。作った設定言っとこ。
「親の病院後継がないととかで医学部うけて、国試受かって研修も終えたんすけどめんどくさくなっちゃって。
病院逃げ出して暇つぶしにぷらーっとトー横行ってるだけです。」
「そうなんですか…医者の子って大変。」
「そういえばさっきの患者の手術は?容態は?」
「ああ、あの子ね。手術成功して、安定してたんだけど暴れだしちゃって。鎮静剤打ってリストカットもODもしてたからひとまず精神科病棟、解放病棟の方に入院させてたはず。」
「おっけーです。ありがとうございます。んじゃお暇しますね。」
「ああ!ちょっと!先生!もう少しゆっくり」
自動扉が閉まり、いつのまにか"トー横先生"はいなくなっていた。
"佐伯卯利愛"
なかなか珍しい名前だね。可愛らしい響き。まぁキラキラネームとやらの部類に入りそうだけど。
自分で名乗っているだけなのか、本名なのか。
まぁそれも明日、市役所が開いたら調べてくれることだし。
明日、"上杉凛香"として彼女を診ることになるしな。多分。じっくり医療技術で更生させていきますかね。
今、私は佐伯卯利愛の情報を得るべく、またトー横にいる。
はあ、まったく。タバコ臭いことこの上ない。肺が腐りそうだ。
私はここにいる子達のように極端に短いスカートと厚底を身につけ、ものすごく濃い化粧を顔に施している。
別に好きでこういう服装をやってるわけじゃない。
ここにいる子達を救うためだ。
普通の服装じゃ警戒されるに決まってる。
それと、病院にいる人達に正体がバレるのを防ぐため。
しばらく歩いていると、目的の人達を見つける。
おっ。いたいた。絡んでた子達だ。
そこには、何やら気まずいような、やばいような空気が漂ってる。
そして、ビルの上を見上げてる。
いったい何してるんだ?ビルに何かあるのか?
気になってビルの上を見上げてみると、1人の女の子が屋上にいた。鉄柵に、手をかけて。
何をしようとしてるのか即座に気がつく。
はっ!!自殺しようとしてる!!本当にまずい!!
彼女たちに気づかれないうに、まだ営業しているビルに侵入する。最悪訴えられるが、そんなこと気にしてる暇はない。地獄のような階段を駆け上がる。
厚底はやっぱり動きづらくて、運動不足の足は悲鳴をあげている。いっっった、厚底脱ぎたい。
咄嗟の判断で厚底を脱ぎ散らかすと、また駆け上がる。
息切れになり、本当にしんどい。
でも、もう。いや。死ぬのを見るのは。いやだ。
階段を登り終えると、大きな鉄製の扉が立ちはだかった。その扉を開けるための鍵は壊されていた。
思いっきり扉を開くと、女の子に気づかれないように駆け寄ろうとする。
女の子はぶつぶつ何かを唱えていて、涙を流している。
自分のてを合わせ、絡ませると、なにかに祈るように空を見上げる。
そして、鉄柵に足をかける。
飛び降りた瞬間、
ギリギリ私は間に合った。女の子のお腹を片腕に抱える。女の子はやせ細っていた。栄養失調で、骨が脆そう。私も体力の限界で、今にも腕を離しそうになる。だめ、私の腕には今、命が乗っかっている。大切な、無限大の可能性が広がっている若者の。
私は自分も鉄柵を超えて宙にいることに気づいてなかった。ビルの下が見える。
ああっっっ
やばい、落ちる。死ぬ。良くて両足骨折かな。いやいや、分析してどうする。嘘。なんで。
目をつぶる。もう死ぬことしか出来ない。せめてこの子だけでも。ごめんね、助けようとしたんだけど。
私は自分の命をこんなにも早く諦めれるんだ。
もう人生おわ______
「あっぶないっ!!」
その時、細身の男性が片手で私を抱える。本当に、間一髪だった。
っはあ、はあ、はあ、本当に死ぬとこだった。
「大丈夫?」
甘くて、優しげな声で私にそう問いかけてきた。
助かった……
「女の子大丈夫です。しっかり抱えてます。」
「わかった。今引っ張りあげるから、少し待ってて」
「はあ、助かった。本当に死ぬとこだった。」
男性と私に保護された女の子、原木美愛葉は、念の為と男性がよんだ救急車で運ばれて行った。おそらくうちの病院に。
事態が終わったあと、私は男性にまだ営業しているファミレスに連れてかれた。
「まずはお礼を言ってみたらどうでしょう」
「忘れてた!!あの、本当にありがとうございます」
細身で、マスクをしている、髪型マッシュの、いかにも怪しい男性。
マジで誰やねんこいつ。
命を助けてくれたことにものすごく感謝してる。というか彼がいなかったら私死んでた。
「そうそう、あなた上杉凛香でしょ。冥王星総合病院の医師の。」
は?!え、、、、、、、、、、????
なんで?なんで?なんで?
なんでこいつが私の正体知ってんの!?何者?!
突然言われたことに、すごく衝撃をうける。
戸惑いを隠せず、挙動不審になってしまう。
「あたしが医師〜?何言ってんのおじさん?」
「じゃあトー横の子らとしてみなして、念の為病院に連れていきましょうか。オーバードーズやってる可能性もあるし」
なにこいつ!!?
とりあえず急いで逃げ出さないと。
私の正体を知ってるなんて。うやむやにしないと。
バレたくない……!!
「トー横キッズじゃないですううただの通りすがりの地雷系女子です!おにいさん!」
男性はため息をつく。
「はあ、馬鹿では無いと思ってるんですけど」
マジでふざけんな。人をバカ扱いしやがって!!
またため息をついて言った。
「目、鼻、口、輪郭、ほくろ。濃い化粧で誤魔化しているけど、全て冥王星総合病院の精神科医、上杉凛香と一致しています。それでも否定するの?」
本当に何言ってんだこいつ?
てか化粧で誤魔化しているのになんでわかるの!!きっしょ!!
「さああどうでしょう」
「目が泳いでる。冷や汗。誤魔化しても無駄ですよ」
なんなのこの人!!!観察眼やば!!
「似てるだけじゃないですか?」
「っはあ、僕の目をバカにしないでもらっていいですか。当然知ってるだろうけど、顔が全く一緒の人はね、一卵性双生児以外ありえない。上杉凛香は双子じゃない。」
どんだけ詰めてくるの。
「そういうあなたは誰なのよ!!」
「僕?宮秋潤。あなた知ってるでしょ。冥王星総合病院の精神科医。ほら、自殺に関すること専門の。」
男性はマスクを取る。
髪型は違うが、脳裏に浮かぶ。
冥王星総合病院の精神科医にこんな奴がいた。誰からも信頼されていて、優しい精神科医。
宮秋潤。これは、彼の裏の顔?
私と同じよに。
「あっ!!」
「知ってるでしょう。ということであなたは上杉凛香と認めたってことで。まぁ少なくとも冥王星総合病院の精神科のスタッフは確定ということで」
「なっ!!!もういいわ。そうよ。私は上杉凛香。冥王星総合病院の精神科医。んで、このことをみんなにばらまくの?」
「ああ、やっと認めた。別に。興味無い。あ、店員さん、このチーズケーキとホットコーヒーください。」
もうっ!!なんなのよ!!本当に!!
「なんでアラサーの女がそんな服装してトー横うろついてるのか僕は聞きたい。なんなら今すぐそのケバい化粧のけて欲しい。顔に粉を塗りたくるのの何がいいんだか。」
本当になんなのこの人…!!ムカつく。
「私だって好んでこんな化粧してるわけじゃないし!てかアラサーでもやっていいでしょ!!ていうかあんただって金色のだっさいネックレスにクールな服、黒髪マッシュに黒マスク。アラサーがやるには遅すぎるわ。何よそれ」
「あなた、世界の黒髪マッシュに謝れよ!失礼だろ!てか僕だって好んでこんな格好してるわけじゃないし」
「あなただって顔に粉を塗りたくるの何がいいっていってたでしょうが!!それの方が失礼だわ!!女性に謝れ!!」
「はいはい。ごめんなさーい。はあ、女ってめんどくさい。」
「むううう!!」
「お客様、チーズケーキとホットコーヒーでございます。もう少しお静かにしていただけると幸いです。」
店員が宮秋が頼んでたものを持ってきて、テーブルに置く。
「あっすみません」
……
店員が去った後、気まづい沈黙が訪れる。
「今日はありがとうございました。」
「え?」
突然礼を言われて戸惑う。というかありがとうございましたはこっちのセリフよ…
「助けてくれてありがとうございましたってこと。」
「それ私のセリフなんですけど…」
「僕の命をって事じゃなくて、あの子の命をってこと。」
「なんであなたが礼を……?」
意味がわからなくてそう訊ねる。
「あの子、予測できなくて。自殺するほど心身が削れてるとを見抜けなかったんですよ。」
大きな安堵と悔しさが含まれた口調でそう話しだした。
その時本当に、噂程度にしか聞いたことがないことを思い出した。
このトー横では、自殺する少年少女があとを絶たなかった。しかし、数年前からはここの自殺発生率が極端に減っていった。それは、ある男の登場により引き起こされたのだ。その男は自殺しようとする少年少女を引き止め、その甘くて優しい声で更生や社会復帰をさせてきた。その正体は謎に包まれており、名前はおろか、顔も知ってる人もいないという。
「もしかしてあなた、『自殺少女のジェントルマン』?」
噂で聞いたニックネームをくちにしてみる。
「だっさい名前ですね。まぁそうですよ。僕が自殺少女のジェントルマンとか言われてる、自殺しようとしてる少年少女を止めてきた人です。」
みんなから信頼されていて優しくて腕もいい、冥王星総合病院の精神科医、宮秋潤。
宮秋の裏の顔が、トー横で自殺しようとする少年少女を助けていてたなんて。
宮秋がそんなことしているなんて聞いたことなかった。
おそらく、私と同じように隠していたのだ。
宮秋がそこまでして救おうとする理由はなんだろう?
「これからよろしくお願いしますね、トー横界の女神、上杉凛香」
右手を差し出してくる。
意図を察して、私は思いっきりその手を握る。
「ええ、こちらこそ。自殺少女のジェントルマン。宮秋潤。」
私と宮秋は目を合わせて、暗黙の了解で誓う。
『トー横の子供たちを救う』
一人で戦い、救ってきた私達はお互いを知り、相棒を見つけた。
トー横キッズの救世主たちが繋がった瞬間だった。
誤字、書き方
変なとこあったら言ってください。
読んでくれた方ありがどうございます




