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神の隠し子〜教会の前で赤子を拾った退役聖女ですが、どうやらこの子狙われているようです。〜  作者: メアリー=ドゥ


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敵の姿を視認致しましたわ。


「少し雰囲気が変わりましたね」


 領主の館の門を戦鎚で破壊し、前庭に足を踏み入れたオーディアは、昔に慣れ親しんだよどみをそこに感じていた。


 街中には多少の灯りがあり月光が差していたが、館の敷地に入ると、闇に慣れた目でも一気に視界が黒く狭まったような感覚に陥る。


 空を見上げると、薄い黒雲のような瘴気が揺らめいていて、月が赤く見えた。


「何となく、『魔性』の気配がするな」

「何となく、見張られてる気がするね」


 双子の言葉に、オーディアは頷いた。

 

 明るさに関しては、『称号持ち』が戦闘時に身に纏う極小結界が常に薄青の光を放っている為、自分の周囲の視界についてはさほど問題がない。


 が、瘴気による視界の閉塞感は、どれ程夜目が利いても目が慣れる類いのものではなく、晴らす為には瘴気をある程度吹き払うか、その源となる存在を消滅させる必要があった。


 振り向くと、傀儡人形にはどうやら館の敷地に入る権限がないらしく、壊れた門の前で見えない壁に阻まれたように動きを止めていた。

 代わりに、館の中に入ってイーたんの炎の援護もなくなった為、コウモリ達が相変わらず羽音を立てながらこちらに迫ってくる。


 が。


「同じ場所に留まれるのなら、こういう芸当も可能ですよ」


 オーディアは、背中に負った銀杭の予備を納めたバックパックに手を伸ばし、サイドポケットから酒瓶のようなボトルを引き抜いて、空中に放り投げた。


 コウモリの動きに合わせて戦鎚を振り抜くと、瓶が勢いよく砕けて、中の液体が飛び散る。


 中身は、聖水である。

 飛び散った液体に突っ込むと、コウモリ達の大半が青い炎に包まれて焼け落ち、空中で瘴気の煙になって消えていく。


「クーロ、シロン」

「「何? オーディア姉ぇ」」

館ごと全部(・・・・・)燃やしましょう(・・・・・・・)。吸血鬼はそれなりに火に弱いですし、傷口を焼けば再生が鈍くなります。わたくしはその間、コウモリを防いでおきます。後は炙り出して終わりです」


 オーディアの言葉に、双子はあっさり頷いた。


「分かった。壁をぶち抜くね」

「分かった。派手に燃やすよ」


 双子が準備に向かうと、オーディアはパイルバンカーから銀杭を天に向かって打ち出し、形成された聖気の鎖をヒュンヒュンと頭上で振り回して円を大きく空中に描き始めた。


 やがて、屈んだ双子の髪や服の裾をはためかせる勢いの風を生む程の高速で、鎖が回転を始める。

 その回転に、頭上から迫り来るコウモリ達は巻き込まれて吹き飛び、あるいは風に煽られて隊列を維持出来なくなって散っていった。


 その間にクーロが、館の窓に槍の先端を叩きつけてガラスを破る。


「シロン、穴空いた」

「オーライ、クーロ」


 クーロは槍を引き抜きつつ、傀儡人形を吹き飛ばした時と同様に【聖光榴弾】からピンを引き抜いた。

 その間にシロンが窓から、先ほどオーディアが使ったものよりも小さな瓶を部屋の中に放り込むと、ガトリングの先端を窓枠に当てて、中に破邪銀の銃弾を叩き込む。


 一度の掃射で瓶が割れる音がしたと同時に、中にいた何かの苦悶が聞こえた。

 どうやら、弾丸が別の何かも撃ち抜いたらしい。


「あら? 中に何か居るみたいね、クーロ」

「多分さっき視線を感じた奴だよ、シロン」


 会話を交わしつつも手早く、シロンがガトリングの銃口を窓の穴から退ける。

 すると阿吽あうんの呼吸でクーロが窓から【聖光榴弾】を投げ込み、槍を構えて防御結界を展開した。


 今度は聖なる光と榴弾の炸裂が起こり、壁が吹き飛ぶ。

 室内が瞬く間に炎に包まれるが、壁の破片と炎はクーロの槍の防御結界に防がれ、彼女の影に伏せたシロンも無傷である。


 投げ込んだ瓶の中身は、サイエンが、燃えやすく飛び散りやすい調整をした油だった。


「やったよ、オーディア姉ぇ」

「行くの? オーディア姉ぇ」

「ええ」


 部屋の中から叫び声が聞こえ、次々に炎に包まれた何かが飛び出してくる。

 人の姿をしたソレが姿を見せると同時に、雑食のイキモノが焼ける臭いが鼻をついた。

 

 骨ばった漆黒の翼に鋭い牙、瞳孔のない赤い瞳を備えたソレが三体、炎を振り払いながらコウモリと共に宙を舞い始める。


 オーディアが冷静に地面に目を向けると、光源であると同時に敵でもあるソレから影が落ちていなかった。


「確定ですね。吸血鬼……おそらくは眷属でしょう」


 街中には傀儡人形しかいなかったが、流石に本拠地である館の中には、眷属化したモノらを配置していたのだろう。


 男性の姿をした吸血鬼(ヴァンパイア)が1体、女性の姿をした女吸血鬼(ヴァムプレイス)が2体。


 女吸血鬼一体の動きがおかしく、あれが弾を喰らった個体だろう。

 他には、それぞれの全身から煙のように薄く瘴気が立ち上っていることから、榴弾の聖光は全員を直撃したようだった。


「皆、髪色は茶色だね。ミルを置いてった個体とは違うかな」

「皆、格好が少し汚い気がするわ。旅人が犠牲になったのね」


 双子の観察を聴きつつ、鎖を巻き取って銀杭をパイルバンカーに収納しながら、オーディアは頷いた。


「あなた方に、意識はありますか?」


 先ほどの傀儡人形になっていた聖女の件もある為、オーディアは問いかけた。

 一応聖なる光に触れ、炎に焼かれたソレらの内、ギャァ、と女吸血鬼二体は牙を剥いたが、残りの一体はこちらに目を向けた。


『殺……セ……苦シ……』

「分かりました」


 意思の確認は出来たので、これ以上会話を交わす必要はない。


「ご安心下さい。ここに存在する吸血鬼は全て……戦女神の御名の下、サーチ&デストロイですわ」

 

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