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次元震

作者: 全然冥

ハジメマシテ

カクヨム様でも投稿しました。

この話は勿論フィクションです。

次元震


最近、同じ夢を何度も見る。

その度に私は魘され、汗をかき、ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら飛び起きる。


「またか。」

嫌な匂いが鼻に纏い着く。


それは溺れる夢だった。

夢の中で私は海に投げだされ、沈んでゆく。どこまでもどこまでも深い海の底まで。と、海中に泡が浮かんでいる、あの中には空気が有るに違いない。私は踠きながら泳ぎ、やっとの思いで泡にたどり着き、大きな息を吸い、そこで目が覚める。毎回同じだ。

「(何故、こんな夢を?)」


私は最近、万物理論を完成させた。


最初のキッカケは夢で見た泡だった。

超弦理論の言うところの振動する1次元の弦が

泡だとしたら?。私はそう考えた。

もし、この泡が内側に折り畳まれた次元を内包できるとしたなら?。しかし泡だと3次元、泡の膜でも2次元...。いや、待てよ、膜...。


閉じた膜構造は裏返す事ができる。


この内側を虚数空間、外側を実数空間と仮定し、この膜が振動し表と裏を入れ替える刹那の瞬間——その瞬間のみ虚数空間が他に影響を及ぼす...。


すなわち「共鳴」。


この「共鳴」は我々の宇宙ができた際に発生した。つまり水面に水滴を落とした様なものと仮定した場合....、もしかすると、この「共鳴」こそが物理定数の起源なのではないか...?。


うん、いや、うーむ...。


ブレーンワールドの5次元時空を考えてみるか?。そうかここにカラビ-ヤウ多様体を取り入れ、位相変化を非可換幾何で記述すれば......。


そう、ソリトン、ソリトン波だ。


同時固有状態を持つ波動関数を考えれば、特異点を回避できるかもしれない...?。


いや どうだろう...。


私の考えは広がり続け、遂に

私の夢であった

「万物理論」が完成した。


すべての法則は明確に記述され、未知は消え去った。

そう 、そうなる筈だった。


そして、それは起こった。


それは視覚では捉えられない小さな一点の挙動から始まった。まるで宇宙の律動の始まりのように。


ほんの僅かな異変だった。それでも、神経が敏感な者たちは、その微細な蠢きを感じ取っていた。


皮膚の表面を虫が這うような感触が広がる。それがまるで羽虫が触れるような感覚に変わり、次第に強く、明確なざわめきへと変わる。


続いて、耳鳴りが叫ぶ。

高く、鋭く、空間そのものが軋むような音が、鼓膜を貫く。


焦げた匂いが漂い出す。何かが焼ける前触れのように、微かに、だが苦く。


次の瞬間、

熱は裏返り衝撃が背骨を貫く。

脊椎がぬめりと引き抜かれたかの如く

痛みと快楽が絡み合い

熱さと冷たさが絡み合い

感覚が捻れ熱く凍った。


全身が慄く。

恐怖の兆しに、恍惚を求めて——


「「な、な、何が...何がっ...が...が!?」」


人々の声が谺する。


そして——


点が弾けた。


目には見えぬはずのそれは、まるで世界の理に逆らうように、震えながら膨張し始める。


波紋のように、球を描き乍ら衝撃が広がっていく。


空間が揺れる。


人々の身体が僅かに、

抗えぬ力に引き寄せられ、

ほんの一瞬、浮遊する。


——そして、落ちた。


それは終わりではなかった。


前後、左右、上下、空間の座標が崩れ、重力の向きが狂い、世界が回転する。


落ちる。

回る。

揺れる。


次元が、震える。


中心から、光は奔流となって溢れ出した。


それはまるで、次元の裂け目から解き放たれたかのように、あらゆるものを押し流していく。


眩い光が四方八方へと放たれ、

世界の輪郭が曖昧になる。


光は全てを覆い尽くし、

黒すらも飲み込み、

色の概念そのもが消えていく。


空間が歪む。

視界が捻れる。


まるで天地が反転したかのように、現実の座標が崩れていく。


重力が意味を失い、足元が消え、

意識は深い眩暈の中に落ち込む。


幾度となく

中心から光は広がる。


止まらない。


終わりが見えない。


——そして、世界が書き換えられた。


僅かばかりの時間が流れた。


生き残った人々は

あちらこちらを

あてもなく彷徨いながら、

行き先を無くし、

生きる術を失い、

途方に暮れた。


すると、今度は

空に奇妙な球体が現れた。

何事かと、人々は騒めき合い

不安に駆られた。


そしてそれは

光の輪を放ちながら、

形を変え軽く手を上げ、


「やあ、こんにちは。」


「僕は魔素っていうんだ。」


「さっきは....、そのう....ちょっとだけ、」

「ちょっとだけ世界を、壊しちゃって...、ごめんね。」


私は言葉を失った。


「お詫びと言っちゃ何だけど、」

「魔法を使えるようにしておいたから。」


目の前の現実がぐにゃりと歪む。

誰かが指を鳴らしただけで、火が点いた。

空間が捻れ、物理法則が揺らぐ。


「それでチャラっていうことで。」


呆然とする人々を尻目に、魔素はくるりと宙を舞う。


「じゃあ、またね。」


次の瞬間、球体は消えた。


私は凍りついた。

完全だったはずの理論に、新たな変数が入り込んだのだ。


——かつての世界は、既存の科学法則を失い、魔法の法則とねじれ合い、見知らぬものとなる。


思考の数だけ世界に法則が生まれた。


魔法とファンタジーの世界が

今や現実のものとなった。


私はあの夢を何度も夢見る。

やっと手にした夢が崩れ落ちる瞬間を。

何度も、何度も....。


私の夢は....。



.............

夢は泡と消えた...。



この作品に出てくる理論は作者がカッケーと思い利用しただけです。理論の構築、検証、裏付けも何もできません。元より理論の理解は言わずもがなや。イメージ。雰囲気だけです。質問されても、解ってないので

受付ません。昨今流行りのAIにでも聞いて下さい。

なお、本稿で言及した「万物理論」「超弦理論」「物理定数」「ブレーンワールド」「カラビ-ヤウ多様体」「非可換幾何」「ソリトン波」「波動関数」などの概念については、Wikipediaに詳しい解説があります。(2025年3月15日閲覧)

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