第9話:錬金術ギルドの陰謀!? 王国に渦巻く思惑
俺は王国錬金術師ギルドに**「自由な立場で所属する」**という異例の契約を結んだ。
表向きはギルドの一員だが、俺自身の行動を制限されることはない。
——つまり、**「王国の庇護を受けつつ、好きに動ける」**という最高の条件だ。
「まったく……普通、こんな交渉が成立するわけないのに、よくもまあ認めさせたわね」
ミレイユが呆れたように言う。
「まあ、俺が研究に興味があるだけで、組織の指示に従うつもりがないことは最初に伝えたからな」
「とはいえ……ギルドの連中が素直に受け入れたとは思えないわ」
ミレイユが鋭い目で俺を見る。
「アーク、あなたの才能を欲しがる連中はたくさんいるわ。油断しないほうがいい」
「……だろうな」
俺もすでに考えていた。
王国のギルドが俺を囲い込もうとしているのは明白だ。
だが、もっと根深い思惑がある可能性もある。
「どこかで必ず試される」
そう確信していた。
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◼️ 王国錬金術師ギルドの裏側
ギルドマスター・グラハムと交渉を終えた俺は、ギルド内部を見学することになった。
「ここが王国最大の研究施設、『賢者の塔』だ」
グラハムが俺を案内する。
施設内には多くの研究員たちが忙しそうに動き回っていた。
ポーションの調合、魔道具の解析、新技術の開発——この場所では、あらゆる錬金術の研究が行われている。
「ここには、歴代の賢者たちが残した記録が眠っている」
「お前のような若き才能が、この知識を活かすことを期待しているぞ」
グラハムの言葉に俺は頷く。
確かに、ここには俺が知らない技術が眠っている可能性が高い。
それを解析すれば、さらなる進化が望める。
だが——
「……なんか、視線を感じるな」
俺は背後にうごめく影に気づいた。
明らかに俺を監視する存在がいる。
(やはり、ただの好待遇というわけにはいかないか)
俺の実力を探ろうとしているのか、それとも排除を狙っているのか——。
いずれにせよ、ここにいる研究員の全員が味方とは限らない。
「アーク、次にお前に見てもらいたいものがある」
グラハムはそう言うと、俺を研究室の奥へと案内した。
そこで俺が見たものは——**“巨大な魔石の結晶”**だった。
「……なんだ、これ?」
「『神秘の魔核』だ」
グラハムの声が静かに響く。
「これは、遥か昔の時代に作られた、未解明の魔石だ。通常の魔法では制御できず、解析もほとんど進んでいない」
「お前なら……これを解明できるのではないか?」
——なるほど。
俺を試す気か。
「……面白い。解析してやるよ」
俺はすぐに**《万能錬金術》**を発動し、魔核の構造を分析する。
——《解析開始》——
すると、頭の中に膨大な情報が流れ込んできた。
【神秘の魔核】
【特性】未知の魔力を内包。時折、生命反応を示す。
【警告】解析の際、高確率で魔力暴走の危険性あり。
「……生命反応?」
俺は違和感を覚えた。
魔核が……生きている?
「グラハム、これ、本当に魔石か?」
「何を言っている?」
「これは……魔法生物の核じゃないのか?」
俺の言葉に、研究員たちがざわめき始めた。
「な、なんだと……!? それは本当か?」
「いや、魔核はただのエネルギー結晶のはず……!」
「違う。これは”生きている”。それも、今はまだ眠っているだけだ」
「もし無理に解析を進めれば——“目を覚ます”かもしれないぞ」
その瞬間——
——ゴゴゴゴゴゴッ……!!
研究室全体が揺れ始めた。
「っ!? 何だ、この振動は!?」
「魔核が……暴走している!?」
「いや、違う……“覚醒”しているんだ!」
俺がそう言った瞬間、魔核が眩い光を放ち——
“黒い霧”が部屋を覆った。
そして、その霧の中から——
「ギ、ギャアアアアアア……!!!」
——“何か”が生まれようとしていた。