第6話:赤ん坊、冒険者パーティの正式メンバーになる
双頭の狂狼を撃破し、冒険者たちは呆然と俺を見つめていた。
「……お前、本当に5歳なのか?」
レオンが改めて俺の顔を覗き込む。
「何度聞かれても変わらない。俺は5歳だ」
俺が淡々と答えると、レオンは頭をかきながら苦笑した。
「……信じられねぇな。普通、5歳児がこんな戦い方をするか?」
「いや、しないわよ……」
横から、冒険者パーティの一員であるミレイユが話に割り込んできた。
彼女は20代半ばの錬金術師で、王都のギルドにも所属しているらしい。
「私、一応王都の錬金術ギルドで研究してたけど……あなた、私よりよっぽど凄いことやってるわよね?」
「まあな」
「まあな、じゃないわよ……! あの戦い、どう考えても熟練の錬金術師じゃないと無理でしょ!」
ミレイユは信じられないといった顔をしていたが、俺は彼女の反応を無視して、倒したケルベロスの素材を解析していた。
——この毛皮、相当な強度があるな。
《万能錬金術》を発動し、解析を進める。
───
【名称】狂狼の魔鋼毛皮
【特性】通常の金属よりも硬く、魔法を一定量吸収する性質あり
【利用法】防具の素材、武器の強化
───
「……これ、使えるな」
俺はすぐに《錬金生成》を発動し、毛皮を加工する。
——《錬金生成》「魔鋼装甲」
俺の前に、黒い輝きを放つ防具が現れた。
この防具を装備すれば、物理攻撃だけでなく魔法攻撃にもある程度耐えられるはずだ。
「おいおい、またなんか作ったのか?」
レオンが呆れたように俺を見る。
「まあな。俺用の装甲だ」
「……ちょっと待て、アーク。お前、この防具を作るのに何分かかった?」
「5分くらいだな」
「……もう何も言えねぇ」
レオンは肩をすくめた。
ミレイユも頭を抱えている。
「ねえ……この子、私たちより強くない?」
「たぶんな」
「……」
一同が俺の実力を再確認するように沈黙した後——
「アーク、お前、本格的にうちのパーティに入らねぇか?」
レオンがそう提案してきた。
「……どういう意味だ?」
「これまでは一緒に行動してるだけって感じだったけど、正式にパーティメンバーとして迎えたいってことだ」
レオンの言葉に、他の冒険者たちも頷く。
「アークがいてくれたら、このダンジョン攻略が一気に楽になる」
「っていうか、もはや俺たちが足を引っ張ってる気がするんだが……」
「お前らなぁ……」
レオンは苦笑しながら、改めて俺に向き直る。
「どうだ? 一緒に冒険しねぇか?」
俺は少し考えた。
◼️ 俺がパーティに入るメリット
1.外の世界の情報が得られる。
2.新たな強敵と戦う機会が増える。
3.大人との関わりを深められる。
悪くない提案だ。
ただし、俺にも条件がある。
「いいだろう。ただし、俺は自由に動く。指図はされない」
「ハハッ! もちろんだ!」
レオンは豪快に笑い、俺の手を握った。
「じゃあ、改めてよろしくな、アーク!」
「よろしく」
こうして、俺は正式に冒険者パーティの一員となった。