2話
プロローグ、1話と見ていただきありがとうございます!2話もぜひご覧ください!
俺の通う高校は家から徒歩20分の場所にある山の上に建設された県立校だ、以前神社だった土地を買い取って市が造ったものらしい。
そのため学校に行くためには必ず急な坂を登らなければならないのだが、これが意外と足腰を鍛えるのにはもってこいの環境になっている。
でも朝にいきなりこんなハードワークを強いるのはさすがにやめてほしい。
山登りを終え、校門を潜り玄関前の生徒指導の先生に挨拶をした後、靴を履き替え二階の端にある教室を目指す。
2-Fと書かれた教室に入るといつもの光景が目に入ってきた。
騒がしくも、青春という薔薇色に彩られ目の前にある日常を朝から楽しむ学生たちの顔、カースト上位(仮)女子や男子たちの騒がしい話し声、それを避けるように陰キャたちがコソコソと深夜見たアニメやゲームの話に興じる声。
「ねぇ風香〜あんた見た?昨日のMV」
「見た見た〜あれマジでよかったよね、あのダンスまじで中毒性高いわ〜」
その中でもうちのクラスのカースト上位(仮)である水沢風香とその取り巻き達がクラスの中で1番目立っていた。
水沢風香。学年誰もが知る超絶リア充の女。
成績は中の上、運動神経も飛び抜けていい訳では無いが、人当たりがよく教師受けもいい為、周りの人間からは人気者扱いされている。
綺麗に整えられたまつ毛、校則に反しない程度の軽めの化粧、薄めに染められた金髪をポニーテール。
まるで漫画に出てくる、絵に描いたような正統派リア充だ。
そんな水沢や、それを取り巻く人間たちの会話、やり取り、仕草と一つ一つが眩しく、そしてうっとおしい。
はっきり言って邪魔だ。
こんな感情が湧き上がってきてしまうことが、俺が「選択」ぼっちであるという理由の一つなのだ。
選択ぼっち。すなわち自ら群れることを嫌い、自分という唯一の個人を尊重し生きていくスタイル。
孤高ではなく孤独、それが俺の生き方だ。
はっきり言って、友達をもって得することはあるのだろうか、今後役に立つ保証があるのか。
あるはずがない。
所詮は三年間の付き合い。中学を含めれば六年間の付き合いだ。そんなものに固執して将来何か得るものがあるとも思えないし、生きていく上で何ら必要ない。
意味無く無駄に時間を費やし、自分から逃げ続け、周りに同調し、守り守られるを繰り返し、常に自分を押し殺しているだけの臆病者、卑怯者になるくらいなら友達なんていらない。
後悔を生まず、偽ることなく自分を尊重できる正しい生き方、正しい思考だと本気で思っている。
全世界のぼっち達よ、君らは強者だ、俺が保証する。
「......帰るか」
そんな臆病者共の巣窟である学校という隔離された箱庭での一日を終え、帰宅する。
ちなみに今日は、授業をして飯を食い、昼休みには外で日向ぼっこして終わり。春の季節の涼しい風と日差しが俺を癒してくれた。
つまらない一日の余韻に浸りながら、元来た道を引き返す。
こんな一日をかれこれ一年続けていたらもう高校二年になっていた。まったく、時が経つのは早いもんだ。
だが、決してこの生活が嫌という訳では無い、むしろ幸せなくらいだ。
これが俺の生みだした、大和誠司流オンリーマイライフ作戦、なんて素晴らしい作戦なのだろう。完成した時一人で舞い上がっていた中学三年の秋が懐かしい。
気分よく歩き、気が付くと自宅に到着した。
「ただいまー」
挨拶はきちんとする。
「おかえりなさい、ふうちゃん来てるわよ」
「あーはいはい」
母にそう言われ、俺は「ふうちゃん」の待つ、二階の自室へ向かった。
次回の3話は、今回の暗い感じと違う明るく騒がしい展開が見られると思います!お楽しみに!