呪いの階段。
ある孤独な少年が、家の近く、人知れぬ廃墟に足を踏み入れる、初めてそこに入ってからそこに取りつかれつつあった。不思議にも一回は人の居た痕跡があるが、別に自分がいるときに他の人がくることもなかった。少年が異変に気が付いたのは、そこにかよって1年がたった時、二階から軋む音が響くようになった。
「この廃墟ももうおしまいか、居場所がなくなるな」
少年の心は憂鬱だった。それどころかこの廃墟よりくたびれ疲れ果て、荒れ果てていた。体にはあざだらけ、顔には生傷も浮かぶ。少年は家族から虐待をうけていたのだ。
「いっそこのまま、屋根にのぼって飛び降りてみようか」
少年はそう考えた、高さがたりない気がしたが、何もしないよりはいい、そして二階への階段を探し、みつけた。あまりにも影が薄い建物の奥、棚の後ろになっていた。棚を一人で精いっぱいうごかしどけて、階段を露出させた。その棚の上から一冊のノートがでてきた。古びたノートに、子供が書いたような文字、そこにはこう書かれていた。
「この階段は、身内に不幸が及ぶ階段だ、その階段をのぼりふみしめ、底が抜けるごとに人が死ぬ」
少年は喜びいさんで一段目の階段へと足をつける、踏みしめるたびに、ギシリギシリなって、それどころか床さえぬけそうな音がする。大ジャンプをして、一弾ふみぬいた。
その次の日、嫌味な祖父が死んだ。祖父がほとんどボスのような存在で虐待を扇動していた。すべてが変わるとおもった。けれど甘くはなかった。自分のごはんがしばらく雑草にかわり、家族全員からお前が何かしたのだと袋だたきにあって、吐いた。
「くそう、こんなはずじゃ」
ボスが一人消えようと、新しいボスが現れるだけ、変わりのボスが誕生した、父だった。
その次の日、階段を一度に二つ踏みぬいた。母と祖母が死んだ。ついでに自分を見下していた犬も。しめしめと思った。しかし、その結果に怒り狂った父は自分の体を地下に、2週間ほどしばりつけ動けないようにしてしまった。必ずしとめる、あの階段をふみぬいて。
そうして2週間後、がたがたになったからだを半ば引きずるようにしてあの廃墟に向かった。階段を全部踏み抜こう、そうきめていた。無断ではしごをもちだして、意気揚々と階段に向かう、トンカチを手に取り、決して家族に見せたことのない抵抗の姿を階段にぶつけた。階段は二つとも崩れ落ちた。
「誰でもいい、親戚でも何でも、あと一人、あと一人道づれにするんだ!!こんな人生にした人間すべてを呪ってやる!!」
それに巻き込まれて、少年も落下し、運悪く残骸の欠片が刺さり、そのまま病院へ、場所が悪く少年は亡くなった。その次の日、少年の父も自殺しているところを発見された。虐待の証拠が見つかり彼はもうこの世に居場所をなくしたのだった。
ここまで聞いて、なぜこんなことを私はなぜ生き残っているかって?私は少年の妹よ、たしかにあのノートには
「身内が亡くなる」
とかいてあったけれど、身内としては、私は彼の存在から遠かったのでしょう。“そのようにしてきたから”全くいい迷惑だったわよ。あんな狂った家族のもとに生まれて、毎日毎日、空想の世界をつくって、逃げるようにその中ですごしていた。気がくるって、まともに会話ができないふりをしてね。けれど不幸中の幸い、その能力を使いいまじゃ小説家として暮らしているの。あ、そうそう、あの階段にメモをおいたのは私よ、まさかあの暗示が本当に呪いに代わるなんておもっていなかったけれど、結果的によかったわね。あの兄は、私に毎日八つ当たりをしてきたのだから。