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翌週、僕たちは久しぶりに市民相談室に出勤した。
市民相談室の扉を開くと、懐かしい人々が目に入ってきた。やる気がなさそうに机に肘をついて雑誌を見ているミハエルさんと、黙々とゲームをしている彼だ。そして、全体的に空気はジメッとしていて、いつもはそんな部屋の雰囲気に触れると、少し気が滅入っていたが、今日はなんだか懐かしい気持ちになった。実家のような安心感がある…。
ミハエルさんは僕たちの姿を見ると、ギョッとした顔で雑誌に目を埋めてしまって、僕はそんな反応にも少し苦笑してしまった。
ここは全然変わらないな…
そしてヴィンスさんと共にデスクへと座った。
結局ヴィンスさんは週に二日特別課に行って、残りの三日は市民相談室に行くということで決まったらしい。今は溜まっていた仕事の関係で週に四日顔を出すことになるらしいが、一週間後には二日でよくなりそうらしい。
そんなことを考えていたら、ヴィンスさんから声がかけられた。
「レイ、猫探しの依頼来てる」
「あ、本当ですね。あ、これケビンさんのところのミケちゃんだ」
「知ってるの?」
「はい。何度か依頼されて探したことがあるんです。ミケちゃんって散策癖があるらしくて、しょっちゅうフラッとどこかに行ってしまって数日は戻らないらしくて…」
「そうなんだ」
「はい。僕も何度か捕まえようと探し回ったんですけど、ミケちゃんって結構すばしっこいので捕まえるの苦労しました」
「そう。じゃあ早速行ってみる?」
「はい。そうしましょう」
そう言いながら、僕は再び懐かしい気持ちになった。
ヴィンスさんと共に仕事をするのもなんだか久しぶりだ。なんだか嬉しいな…。気分が上がっていくのがわかる。
「依頼が早く終わったら、美味しいものでも食べようか」
「あ、そうですね」
「うん。また王都で美味しそうなお店見つけたから」
「あ、そうなんですね。なんのお店ですか?」
「カフェなんだけど、ケーキとか軽食が置いてあるお店。お昼も兼ねてゆっくりして行こう」
「いいですね。そうしましょうか」
ヴィンスさんといつも一緒に仕事をする時は、必ず僕をご飯に誘ってくれる。ヴィンスさんがお勧めしてくれたお店は例外なく絶品だ。僕は今日行くお店もきっと美味しいのだろうと胸を高鳴らせた。
「じゃあ、早速出発しましょう」
「うん」
そうして僕たちは今日も困っている人々の依頼を解決しに行くのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。




