44
道中、僕はアランさんの運転する車の中で犯罪組織に関する資料を読み込んだ。
その組織は、各地でドラックの販売や売春の斡旋、そして何件かの殺人を行った容疑がかかっている組織で、構成員は十五名。十五名全員が魔力持ちで危険な魔法具を持っていることが判明している。今日は王都の郊外にあるアジトに会合で集まっているらしい。
僕は資料を読んで再び不安になった。
「あ、あの、アランさん、本当に大丈夫でしょうか」
僕がそう聞くと、アランさんがミラー越しに首を傾げるのが見える。
「ん?何がだ?」
「あ、この組織、結構危険そうですし、三人で大丈夫かなって…」
「まあ、俺が見た限りだと、そんなに強そうな奴もいないし、大丈夫じゃないか?とりあえず適当な機会を見てアジトに突入して拘束すれば一件落着だ!」
「あ…そう、ですよね…」
え?本当にそんなに簡単に行くのかな?アランさんもアーサー君もいるから大丈夫だとは思うけど、やっぱり不安だ。
「おい、ベルモンド、その資料、早く貸せ」
「あ、ごめんなさい」
僕は緊張しながら隣に座っているアーサー君に資料を渡した。
「お前、俺の足引っ張んじゃねぇぞ」
アーサー君は不機嫌そうな声を聞いて、僕は思わず背筋を伸ばした。
「う、うん。頑張るね」
「ふんっ、お前はいるだけで不愉快なんだから、迷惑だけはかけんな」
「うん。ごめんね」
そうだ。アーサー君は僕のことをただでさえ嫌ってるんだから、これ以上嫌われないように頑張らないと。せめて迷惑だけはかけないようにしよう。
「アーサー君、そんな言い方はないだろ?俺たちはチームなんだからレイ君にそんな言い方をするもんじゃない」
咎めるようにそう言ったアランさんをアーサー君は不満げに睨みつけた。
「あ、あの!僕なら大丈夫です」
険悪な空気になるのは嫌で、僕が慌ててそう言うと、アランさんはミラー越しに心配そうな視線を向けてくれた。
でも、アーサー君の言うことは正しいし、僕だって自分が使えないやつなことは自覚しているから大丈夫だ。それを面と向かって言われたからって傷ついたりはしない。
そうして、しばらく重い空気の中で、運転すること一時間、王都から少し郊外にある、閑散とした街に出た。




