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レイの弾丸  作者: ぷぷ
2章
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総督が出て行った後、ヴィンスさんは微かに眉を寄せて僕を見た。


「レイ、なんで受けたの?」

「え?」


あ…なんか怒ってる?


「僕がいない間は市民相談室で仕事して欲しかった」

「あ…えっと、す、すみません」


ヴィンスさんの声が、いつになく咎めるような感じだったので僕は思わず下を向いて謝った。


「特別課の仕事は危険な仕事ばかりだから、レイにはやってほしくない」

「あ、そうですよね…僕みたいな役立たずが特別課の仕事を手伝うなんて迷惑でしたよね…」


…少し調子に乗ってしまったみたいだ。僕みたいな役立たずが何を言ってるんだって感じだよな…特別課の仕事の大変さはきっとヴィンスさんが一番よくわかってるはずだし、大して実力もない僕が手伝うなんて不愉快だったのかもしれない…


「…ううん。そういうことじゃない。レイは僕にとって一番大切だから危険な仕事はしてほしくないの」


そう、優しい声色で言われて、思わず顔を上げると、そこには眉を下げて心配そうに僕を見つめるヴィンスさんがいた。そこで初めて僕は、ヴィンスさんが怒っている訳ではないと気づいた。


そうか…。ヴィンスさんは僕のことを心配してくれていたんだ。


…なんだか、とても嬉しい。温かい気持ちが広がっていくようだ。


「あ、あの、僕のことをそんなに思ってくれてありがとうございます」


僕は感激してお礼を言った。


「うん。だからレイは僕がいない間、市民相談室に戻るんだよ」


そう言われて僕は悩んでしまう。


「あ…でも…今、市民相談室は十分人手が足りてますし…ここはヴィンスさんがいなくなったら大変だから…その、僕なんかでも騎士団の役に立てるなら、やりたいなって…」


ヴィンスさんに反論するのはとても勇気がいったが、思い切ってそう言った。


「…どうしても?」

「あ、はい。すみません」


僕が下を向いてそう言うと、ヴィンスさんは前で組んでいた僕の手を両手でそっと包み込んだ。


「謝らないでいいよ。別に怒ってない。でも約束して。少しでも危険な目にあったら、すぐに僕に連絡するって」

「はい」


僕がそう言うとヴィンスさんは眉を下げて微笑んだ。


その時、隣でフィル君が勢いよく立ち上がった。


「レイ君、偉い!」

「え?…あ、ありがとう」

「団長の口車に乗らずに自分で決めたところ、僕感動したよ」

「あ…うん」

「レイ君は優秀なんだから、この一週間は特別課でじゃんじゃん仕事をこなしていこう!」


嬉しそうにそう言うフィル君に、ヴィンスさんは大きく眉を寄せた。


「お前、レイに変なこと言わないで」


ヴィンスさんの言葉を聞いてフィル君は嬉しそうな顔から一転して不愉快そうに眉を寄せた。


「は?団長こそ、レイ君を縛るのやめてくんない?レイ君はポテンシャル高いんだから、それを潰すようなことしないでよ」


ん?ポテンシャル高い?どういうことだろう…


「え?僕ポテンシャル高くないよ?いつも役立たずってアーサー君からも言われてるし」


事実、僕は騎士学校時代からアーサー君から役立たずとか無能とか言われ続けていたし、市民相談室に配属になってからも周囲から軽蔑の視線を向け続けられてきた。


「アーサーの言葉なんて信じないでよ!あいつはガキだからレイ君を認めたくないだけなの」

「え?そ、そうなの?」


困惑する僕にフィル君は力強く頷いた。


「そう!とにかくレイ君には才能があるんだから、自信持って!」

「そ、そうかな?」


フィル君にそこまで熱弁されたら、なんだか嬉しくなってきた。僕みたいな人間をそんなに評価してくれてるなんてフィル君はいい人だ。そう思っていたら、今度はヴィンスさんから強い視線を向けられた。


「レイ、こいつの言葉は聞かなくていいよ。少しでも危険だと思った案件は他のやつに押し付けていいから」

「レイ君になんてこと言うんだよ!レイ君がグレるようなこと言わないでよ!」


また二人は僕のことで言い争いを始めてしまった。


「あの、えっと僕、頑張ってみるので、ヴィンスさんもフィル君も王族のお仕事頑張ってください」


すると途端に二人の表情が険しくなった。ヴィンスさんは微かに眉を寄せ、フィル君は苦虫を噛み潰したような顔をしている。


え?どうしたのかな?

僕が疑問に思っているとフィル君は盛大にため息を吐いた。


「はぁっ、そうだった。忘れるところだった…憂鬱すぎる。あいつらのお世話とか嫌だ…」


…なんかよくわからないけど、王族警護もとても大変な仕事なんだろうか?ヴィンスさんも明らかに不愉快そうにしているのだから、きっと訳ありなのだろう。

だったらせめて二人が安心して王族警護の仕事に集中できるように、二人がいない間のカバーは僕たちが頑張らないと!僕なんかがどれくらい役に立てるかはわからないけど、精一杯頑張ろう。


そうして僕は一週間、特別課で仕事をすることになった。

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