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レイの弾丸  作者: ぷぷ
1章
3/63

03

翌日、僕は昼食の時間になると急いで屋上へと向かった。そして屋上に向かう前に売店で昨日と同じサンドウィッチにジュース、そして昨日ヴィンスさんに少なすぎると言われてしまったのを思い出し、サラダを追加で買った。そして急いで屋上へと続く階段を上る。そして屋上の扉の前まで来た。そこで僕は一旦立ち止まって、心の準備をする。そして扉を開けた。

扉の向こうには雲一つない青空が広がっていた。そして辺りを見渡すと、昨日と同じ場所にヴィンスさんはいた。屋上の隅の日陰で、背を壁に預けるようにして座っている。そしてヴィンスさんは僕が来たことに気付くと、軽く手を振ってくれた。そして僕は昨日と同じように緊張しながらもヴィンスさんの隣に座った。


「来てくれたんだ。嬉しい」


ヴィンスさんは嬉しそうに微笑んだ。


「はっ、はい。約束したので」


僕は緊張気味に答えた。そして買ってきた昼食を袋から出していると、それを見てヴィンスさんは言った。


「今日は量が増えたね」

「あ、はい。ヴィンスさんが昨日少ないって言っていたのを思い出したので、サラダも買いました」

僕の言葉にヴィンスさんは目を細めた。

「そう。えらい」 


ヴィンスさんは僕の頭を優しくなでてくれた。僕はいきなりのスキンシップに少しフリーズしていたが、はっと我に返り、慌ててお礼を言う。


「あっありがとうございます」

「うん」


そして僕はサラダとサンドウィッチを食べ始めた。ヴィンスさんはしばらく僕が食事をするのをじっと眺めていたが、僕の食事がひと段落したところで口を開いた。


「今日は何をしてたの?」

「あ、えっと、今日は午前中から依頼があったので、その依頼をこなしていました」

「依頼って?」

「えっと、ミシェルさんっていうご老人からの依頼で、外出中にバックに着けていたキーホルダーが無くなってしまったらしくて、探してほしいというものでした」

「うん」

僕の話をヴィンスさんは静かに聞いている。

「話を聞くと、無くしたキーホルダーはお孫さんがミシェルさんのために手作りで作ってくれたものらしくて、どうしても取り戻したいということで騎士団に依頼を出したみたいです」

「それで、見つかったの?」

「はい。ミシェルさんが外出した道を何度も歩いて、近所の方々にも聞いて回って、やっと見つかりました。そのキーホルダーはミシェルさんが外出した道沿いにあるお店の店主さんが持っていました。昨夜、お店の前に可愛いクマのキーホルダーが落ちていたらしくて、店主さんは持ち主がきっと探しに来るだろうと思って拾っておいてくれたんです」

「そう」

「…はい。無事に見つかってよかったです。ミシェルさんもすごく喜んでいて、朝早くから探したかいがありました」


嬉しくて控えめに笑う僕にヴィンスさんも優しく微笑んだ。

しかしそこで気づく。今日も僕ばっかり話している気がする。ヴィンスさんは退屈ではないだろうか。


「あっ、僕の話ばっかりでごめんなさい。あの、僕もヴィンスさんの話、聞きたいです」

「僕の話?」

「は、はい」

その言葉にヴィンスさんは目を細めた。

「何が聞きたい?」

そう言われて、僕は少し焦ってしまう。ヴィンスさんについて色々知りたいけど、具体的に何が聞きたいかと言われるとすぐ思いつかない。

「え、えっと、…あっ!ヴィンスさんは休暇中は何をしているんですか?」


僕は必死に考えて、そういえばヴィンスさんは騎士団を休暇中だと言っていたことを思い出す。そしてヴィンスさんは休暇中にどんな生活をしているのか気になり聞いてみた。


「別になにも」

「えっ、なにも?」

「うん」

「…あ、そうですか」

「うん」


あ、会話が終わってしまった。どうしよう。やっぱり僕ってだめだ。会話が下手すぎて、話を盛り上げることができない。そう落ち込んでいると、不意にヴィンスさんが口を開いた。


「君は午後からは何するの?」

「あ、えっと、午後からは依頼があって五番街に行く予定です」

「そう。どんな依頼?」

「依頼主はリンダさんっていう方なんですけど、その方のお宅は最近雨漏りが酷いみたいで…。屋根の修理をしに行きます」

「そう。じゃあ僕も行ってもいい?」

「えっ」

その言葉に僕は驚いた。

「えっと、なんでですか?」

なぜ彼がそんなことを言うのかよくわからなくて聞く。

「だめ?」

じっと僕の目を見つめて聞いてくるヴィンスさんは心なしか少し悲しそうだ。

「いやいや!ダメじゃないです!」

僕が慌ててそう言うとヴィンスさんは少し顔を明るくさせる。

「じゃあ決まり」

「えっ、あ、いや、ダメじゃないですけど…。でもヴィンスさんは休暇中ですし…。そんな貴重な時間を、僕の仕事に付き合わせるのは気が引けるっていうか…」

少ししどろもどろになりながらも申し訳ない趣旨を伝える。

「大丈夫。することないって言ったでしょ。僕、暇だから」

そう真顔で言うヴィンスにさんに、僕は断りきれなかった。

「あ、はい。じゃあお願いします」

「うん」


ヴィンスさんは目を細めて嬉しそうに頷いた。


まぁ、よくわからないけどヴィンスさんが嬉しそうだからいいか。そんなことを考えていると昼休み終了の鐘が鳴った。その音を聞いて僕は驚く。


「はっ!やばい。もうそんな時間?!」


慌てて昼食のゴミを袋の中に片付け、そしてヴィンスさんに早口で伝えた。


「えっと僕はデスクに戻って入館証を取ってくるので、騎士団校舎の前で待ち合わせをしましょう」

「わかった」


その言葉にヴィンスさんは軽く頷いた。そして僕はヴィンスさんと別れて、足速に自分のデスクへと向かった。そしてデスクの引き出しにある入館証を持って、急いでヴィンスさんの待つ騎士団校舎の外へと向かった。


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