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レイの弾丸  作者: メロン
1章
17/63

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なんとかしないと。ことは一刻を争う。外の人が通報して騎士団が来るまで待ってはいられなくなった。早く強盗を仕留めないと人質の人が死んでしまう。でもどうすればいい?僕はチラリとヴィンスさんを見た。ヴィンスさんは休暇中とあって魔法具らしきものを持っている様子はない。

…僕は魔法銃を持っているけど撃てない。じゃあヴィンスさんに撃ってもらうのはどうだ?いや、無理だ。確か魔法銃は使う本人の魔力にしか反応しないから僕の魔力でしか動かない。じゃあこの状況をどうにかするにはどうすればいいんだ。


…方法が無いわけでない。僕が自分で魔法銃を撃てばいいだけの話だ。でも僕にはできっこない。でも僕しかこの状況をなんとかできる人もいない。


やるしかない。できなくてもやるしかないんだ…


僕は覚悟を決めた。そして隣にいるヴィンスさんに小声で言った。



「ヴィンスさん。僕が強盗に魔法銃を撃ちます」

そう言うとヴィンスさんは少し驚いた顔をしたが、わかったというように頷いた。

「僕は強盗の右肩あたりを狙うので、僕が撃ったらすぐに強盗を取り押さえに行ってください」

「うん」



僕は魔法銃を取り出し、魔力を注ぐ。すると魔法銃に白い線が浮かび上がってきた。そして魔力を注ぎ続けるとその線が徐々に緑に変わり、魔力の挿入が完了した。そして僕は慎重に銃を構えた。幸い今、強盗は僕たちから背を向けた位置にいて、狙いやすかった。そして僕は慎重に魔法銃を持っている強盗の右肩に狙いを定めた。あとは詠唱し引き金を引くだけだ。


…しかしなぜか、この状況になって僕には言いようのない恐怖が襲ってきた。

魔法銃を握る手が徐々に震える。呼吸が苦しい。そして頭にはメノール百貨店の事件がフラッシュバックしてきた。

…僕が撃った弾丸が人質に当たってしまったあの光景が。



―怖い、怖い怖い怖い。引き金を引きたくない…


もし今引き金を引いて、僕の狙い通りにいかなかったら?

もし近くにいる人に当たってしまったら?

それでなくても、僕が弾を外してしまって強盗に気づかれたら?激昂されて人質が殺されてしまうかもしれない。


どうしよう。僕が失敗したら、誰かが傷つく?誰かが死ぬ?怖い、怖い怖い…。


「はっはぁっはぁはぁはぁ…」

やばい。静かにしないといけないのにどんどんと呼吸も荒くなっていく。




「レイ。落ち着いて」


その時、パニックになる僕に隣から聞き覚えのある声がかけられた。ヴィンスさんの声だ。そして僕はヴィンスさんの方を見る。ヴィンスさんは僕を安心させるように優しく微笑んだ。


「…ぼ、ぼく、やっぱり撃てません」


僕は小声でヴィンスさんに言った。

情けない。僕がやらなきゃいけないのに。なんでできないんだ。僕は自分で自分に憤りを覚えた。

なんで僕はこんなにダメなやつなんだ。なんで、なんで…


「レイ。君ならできる」

ヴィンスさんはこれ以上ないほど真剣な顔で言った。



「…無理です」


ヴィンスさんがなんと言おうがこればかりは無理だ。撃とうとすればするほど外した時のことを考えてしまって恐怖が湧いてくる。


「レイは何が怖い?」

「じゅ、銃弾を外してしまったらって考えてしまって…」

「そう」

「…はい」

「レイは自分が信じられないんだね」

「はい」


そうだ。僕は自分が信用できない。一度絶対にできると思って撃った弾丸は人質に当たってしまった。僕ができると思ってもできなかった。失敗した。だからできない。前に水鉄砲が撃てるようになったから、魔法銃も撃てるかもしれないと思ったけど無理だ。人を撃つ行為へのトラウマを克服しても、自分を信用できないままじゃ引き金を引けるはずがない。



…僕はなんでこんなダメなやつなんだ。今僕が撃たないとみんなが死ぬっていうときに、びびって引き金が引けないなんて騎士失格だ。


それに、トラウマなんて言ってるけど本当は、僕は自分が傷つくことが怖いだけなんじゃないか?


自分が撃って、それで失敗して、人質を救えなかったときに自分が傷つくことが怖い。だから撃てない。いや()()()()()()。それよりも見殺しにした方が自分が傷つかないから()()()()だけ。僕は弱いから、僕はダメな人間だから、だから逃げてるだけだ。



…結局、アーサーくんの言う通りだな。僕みたいやヘタレで弱虫が騎士になんてなってしまったからいけなかったんだ。僕のせいでみんな死ぬ。僕が撃たないから。僕が傷つきたくないから。僕がみんなを見殺しにするんだ。



ーその時、絶望する僕に隣から声が掛けられた。


「じゃあ僕のことは?」

「え」

「僕のことは信じられる?」

そう聞いてくるヴィンスさんの目には強い力が宿っていた。

「はい」

僕は僕のことは信じられないけどヴィンスさんなら信じられる。ヴィンスさんはこれまで幾度となく僕に寄り添い助けてくれた。

「そう。じゃあ僕の言う通りにやって」

「え…」

僕が戸惑っているとヴィンスさんが僕を強く見つめて再度言った。

「レイ。できる?」

「は、い…」


僕の返事を聞いたヴィンスさんは、僕の真後ろに移動して僕に密着した。そして僕の両肩に手をかけた。

…やばい。ヴィンスさんの心臓の音がここまで響いてくる。ヴィンスさんが真後ろにいるんだ。

そして、ヴィンスさんは僕の耳元で囁いた。


「じゃあもう一度、銃を構えて」

「…はい」


ヴィンスさんが囁く声が耳元に入ってくる。すごくむず痒いけど、なんだか心に響くような不思議な感覚だ。


「そう。あいつの肩に狙いを定めて」


僕はヴィンスさんの指示に頷いた。そして相手を慎重に観察し狙いを定める。


「そう。えらい。じゃあ引き金に手を当てて」


僕は震える指先を引き金に持っていく。しかしやっぱり怖い。手が震える。心臓が嫌な音を立てる。やっぱり無理だ。


「レイ。僕を信じて。僕が間違ったことを言ったことがある?」


そうだ。ヴィンスさんは間違ったことは言わない。いつだって僕を優しく導いてくれた。だからヴィンスさんが言うなら大丈夫。僕はそう言い聞かせて引き金に手を当てる。まだ手は震えたままだがなんとかできた。


「そう。上手。じゃあこれから大事なことを言うから聞いて」

僕は頷いた。


「君ならできる。絶対に」


僕ならできる?本当に?僕は一度できなかった。今度もできるわけないじゃないか。


「できるよ。君なら」


できない。なんでそんなことを言えるんだ。できないよ。無理だ。


「レイ、君は自分が信じられないと言った」


そうだ。僕は僕を信用しない。もうあんな失敗はしたくない。


「でも僕なら信じてくれるとも言った」


ヴィンスさんなら信用できる。僕みたいにダメなやつじゃないもん。かっこよくて、頼りになって、僕の憧れの人。


「じゃあ、僕が信じる君を信じて」


ヴィンスさんが信じる僕を信じる?でも僕は僕を信じられなくて…。でもヴィンスさんは信じられる…。それで、ヴィンスさんは僕を信じてくれてる?こんなダメな僕を…?でもヴィンスさんは間違ったことは言わない。じゃあ僕は信用できるってこと?僕は失敗しないってこと?


「そう。君は失敗しない」


そっか。僕は失敗しないのか。ヴィンスさんが言うなら信用できる。


「君はできる」


僕はできる。ヴィンスさんが言うなら絶対そうだ。




ーーすると不思議なことに指の震えはいつのまにか止まっていた。僕はできる。僕は失敗しない。僕は撃てる。


「じゃあ行くよ」

僕は頷く。


「レイ。撃て」















氷の弾丸(アイスブレット)



その瞬間僕の魔法銃の銃口から水色の魔法陣が出現し、それと同時に引き金を引いた。そして銃口からは氷の弾丸が発射され、真っ直ぐに強盗のもとへと命中した。


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