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いつものことながらヴィンスさんはとても美しい。それに加えてヴィンスさんはスタイルもめちゃくちゃいい。騎士団の門に寄りかかりながら立つ姿は彼のすらりとした長い手足を強調していた。やっぱりミスター完璧は違うな。そんなことを考えながら僕はヴィンスさんのもとへと駆け寄った。
「お待たせしました」
「うん。行こうか」
僕たちが向かったのは王都にある市民病院だ。ヤンさんは現在、ぎっくり腰になってしまった関係でこの病院に入院している。僕たちはヤンさんが待つ病室へと向かった。
病院の階段を上る際にも、すれ違う看護師さんや患者さんがヴィンスさんを見て振り返ったり、ひそひそと話したりしていた。病院でもヴィンスさんの美貌は注目の的だ。
僕たちはヤンさんの入院する病室に着いた。そしてノックをして入る。病室は個室で部屋の中央に大きめの白いベットがあった。そしてそこに上品そうな男の人が横たわっていた。腰の辺りにギブスが付けられている。
「やあやあ、よく来てくれたね。騎士さんたち」
ヤンさんは温和な笑みを浮かべて僕たちを迎えてくれた。
「あ、はじめまして。宝石の引き取り代行の依頼を受けたレイ・ベルモンドです。…あと、こちらは僕を手伝ってくれるヴィンスさんです」
「依頼したヤン・クラークです。こんな格好で申し訳ないがよろしく頼む」
「あ、はい。お願いします」
「よろしく」
僕とヴィンスさんはヤンさんに向かって挨拶をした。
「あ、あの、腰の方は大丈夫ですか?」
僕は依頼の話をする前にヤンさんの病状が心配だったため聞いてしまった。
「あぁ、私も歳でね、重い荷物を持ち上げようとしたらギクっときてしまってね…。でも大丈夫だよ。病院の先生もしばらく安静にしてればよくなるって言ってたからね」
「あ、そうでしたか。よかったです」
安堵する僕にヤンさんは目尻を下げた。
「ありがとね。心配してくれて。あなたになら安心して依頼を任せられそうだ」
「あ、ありがとうございます。ネックレスの件ですよね」
「ああ」
そして僕は依頼内容についての確認に入る。
「依頼のことなんですが、王都にあるラッセル宝石に修理を頼んでいるネックレスのお引き取りということでよろしいでしょうか」
その言葉にヤンさんは頷いた。
「あぁ、向こうの店には私の代わりに騎士団の人が引き取りに行くと伝えておいたから、騎士団の身分証を見せれば代わりに受け取ることができるそうだ」
「あ、そうなんですね。ありがとうございます」
「いやいや、こちらこそありがとう。こんな依頼を受けてくれて。…今修理を頼んでいるのは妻の遺品のネックレスでね。明日の娘の誕生日に向けて修理を依頼したんだ。それがちょうど今日できあがって引き取る予定だったんだが、私がこんなんになってしまってね。行けなくなってしまった。だからと言って配送だと明日の娘の誕生日に間に合わないし…。それであなた方に頼みたいんだ」
「あ、そうだったんですね。…娘さんの誕生日のプレゼントになんて素敵です」
その言葉にヤンさんは目を細めて頷いた。
「普段は王都から遠い街で旦那と暮らしているんだが、明日だけ顔を見せに来てくれるんだ。…だからどうしても今日欲しいんだ」
「はい!わかりました。絶対に今日お届けしますね」
僕はヤンさんを安心させるように微笑んだ。するとヤンさんも眉を下げて「ありがとね」と言ってくれた。そんなに大事なものなら早めに引き取ってヤンさんに渡してあげたい。
「じゃあヴィンスさん行きましょう」
「うん」
僕たちは早速、ヤンさんの病室を後にしてラッセル宝石に向かった。




