ドラゴンの生態を考えてみる
中世ヨーロッパ風ファンタジーに出てくるドラゴンの生態。
これを魔法という要素を排除し、現実世界の物理法則的にリアルっぽさを持つSFとして考えます。
SFといっても「古代の超科学文明が遺伝子操作で作った人工生物」みたいのも無しで、異世界で自然に進化した生物として考えます。
あくまで「それっぽい理屈」であって現実の物理そのものではありませんが、かといって魔法や超科学だと言ったらそこで話は終わってしまうので。
ドラゴンの特徴といったら次の二点でしょう。
・空を飛ぶ
・火を噴く
空を飛ぶ点から考えてみましょう。
現実には空を飛ぶ動物は多く居ますが、それらは鳥か虫が殆ど。鳥でも虫でもない動物ではコウモリなどが居ますが、それ以外は飛ぶというより滑空です。
しかもこれら、全体的に小さい。
犬と同じくらいの大きさで飛べる鳥は居ますが、馬と同じ大きさで飛べる鳥は居ません。
体が大きくなると重くなり、空気抵抗も増えるから、それを支える翼や骨格が必要になりますが、いずれそれらでは支えきれなくなるから、巨大化には限界があります。
人類が造った空飛ぶ乗り物である飛行機も、現代でこそ金属製が珍しくありませんが、初期のものはエンジン以外は木や布で造られており、さらに翼の強度を保つ為に支柱などを張り巡らせて、不格好でした。
そんな飛行機も、従来使われていたアルミ合金より軽くて頑丈な炭素繊維などの素材が開発されると、そちらを使うようになります。空を飛ぶものにとって「軽くて丈夫」は至上命題です。
軽くて丈夫な飛行機は、機体単価が従来の全金属製より高くても、燃費が良いので長い目で見るとお得なんですね。
ドラゴンですが、よくある設定では軽くて丈夫な固い鱗に全身を覆われているというのがあります。
このドラゴンの鱗で作った鎧は耐熱エンチャント付きだったりして、最上級の防具として扱われます。
軽くて丈夫! はいこれ空飛ぶのに非常に有利な点です。
ドラゴンは体内に骨がある内骨格の生物ですが、この鱗が外骨格としても機能しているなら、強度面もクリア出来ていると考えられます。
次に、火を噴く点を考えます。
燃料と着火方法ですが、まず燃料。
身近なところだと人間のおなら。
これは可燃性ガスが含まれるので、蝋燭やライターを近づけておならすると、おならに火が着きます。(※ガチで危険なので実験しないように)
牛のげっぷなどもそうです。牛小屋で静電気が発生して爆発炎上したなどという事故が、現実に起きています。
このように、生物が可燃性のガスを空気中から取り入れたり体内で生成させる事は、それ自体は何ら不思議な事ではありません。
空気や水に含まれる水素だって、空気中で火を着ければ爆発します。
石油や天然ガスの主成分である炭化水素を生成する微生物が存在します。
ドラゴンがこういう微生物を体内に飼っていて、共生関係にあるという可能性もありますね。
次に着火方法。
よく言われるのが歯が火打石のようになっているというもの。
単純で分かりやすいですが、火打石だと継続的に火花を飛ばせないので、調整が難しそうです。
スズメバチが顎をカチカチして威嚇するように、ドラゴンが牙をカチカチし始めたら威嚇や火炎放射の合図というのも、面白いかも知れません。
火打石よりは、電気の方がまだ確実に着火するでしょう。その場合も、火を噴く時にガスコンロのようなチチチッという音が聞こえる筈なので、合図になります。
ただの空気であっても高圧にすれば温度が上がり、温度が上がれば自然に火が着きますから、体内に気体を圧縮する器官があれば、火種が無くても火が噴けます。
体内に可燃性ガスを大量に溜めて置けるとしたら、ドラゴンは羽ばたきで飛んでいるのではなく、ロケット噴射で飛んでいる可能性も出てきます。
羽ばたきはあくまで姿勢制御や方向転換に使われるもので、推進力を得るのはロケット噴射であるなら、「体の大きさと比較して小さすぎる翼で発生させられる揚力では飛べない」という問題は解決します。
しかもこの説だと、耐熱性のある鱗というのに必然性が持たせられます。自分のロケット噴射で火傷しないように進化したと考えられるからです。
ドラゴンは、体内に可燃性ガスを溜め込み、それを高温高圧の状態で噴射する能力がある!
ロケット噴射で空を飛び、火を噴く……つまりドラゴンはガメラだった?
ただ、そもそも何の為に火を噴く能力を獲得したか。
火を噴く原理そのものより、これが問題です。
ドラゴンの住処は火山の奥、洞窟の奥、森の奥、湖の底などで、何十年か何百年に一度、人里を襲うような事はあっても、基本は引きこもりです。
普段は、他の生物と戦う機会がそもそも少ない筈なのです。なのに何故かとても強い。
体が大きければ強いという部分はありますが、それを超えるレベルで強いです。
単に獲物を得る手段にしては威力過剰だし、森などを延焼させてしまう危険があります。
そこまでして火を噴かないといけない理由がどこにあるのでしょう?
ドラゴンは肉食獣のような鋭い牙を持ち捕食者のイメージが強いですが、固い鱗や火を噴くという点は被捕食者が身を護る術であるとも考えられます。
高い飛行能力は、捕食にも有利ですが捕食者から逃げるのにも有利です。
ドラゴンを食ったり害をなす存在が居るから、ドラゴンは空を飛んで逃げ、火を噴いて敵を撃退する必要がある。
えっ!?
ドラゴンの上位種が居る!?
ドラゴンを殺傷しに来るような恐ろしい生物が居るのか、流石異世界……。
魔法要素の無い、ドラゴンより強い生物……そんなの居るの?
人間だよ!
鱗とかを狙ってドラゴンを襲うのは人間と相場が決まってます。
ドラゴン退治の英雄の話は多いですが、そうでなくとも数百人の兵士がカタパルトなんか使ってドラゴンを退治してしまう場面、ありますよねぇ?
古典的なドラゴンは、火を噴くのではなく毒性のある高温の息を吐き出すといった程度でした。
そのまんま火山のイメージです。高温の硫黄ガスを浴びれば、火傷するし、火傷を免れても中毒になります。
それが、いつの間にか火炎放射能力を手に入れるような原因。
それは天敵である人間から身を護る為!
巨大な体で空を飛ぶという難題を解決する為、体内に可燃性ガスを発生させ噴射させる器官を発展させた。
それから、外敵を攻撃するのに、その器官を利用して火を噴く能力を獲得した。
これがドラゴンの生態だ!
何番煎じだよ!
という話題ですが、それだけ多くの人が惹かれる話題でもあるのです。