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01 転生したら主人公!



あけましておめでとうございます!


短編『主人公に転生したので勇者王になりたいけど、兄が離れてくれません。』の幼少期、全5話。


20200102




 それは、大人気の少年マンガだった。

 知らない日本人なんていないくらい有名で、日本だけでは留まらないかもしれない。海外でも人気なマンガはもちろんアニメ化もしていて、映画も何作も上映されている。

 胸が熱くなるような、その少年マンガの内容はこうだ。

 少年ルメロが、世界中を冒険した勇者の最高の称号『勇者王』を手に入れるために冒険する物語。

 舞台は、もちろんファンタジーな世界。人々が魔法を使う、そんな世界。

 仲間を集め、ともに強くなり、時には涙の別れをして、そして突き進む。

 少年ルメロは、少年マンガの主人公らしく、元気で夢に突っ走る性格だった。そんな彼に惹かれて、仲間になる登場人物達。

 私も仲間になりたいと強く願うほど、それは輝かしい物語だった。

 眩いほど輝く太陽のようなお話だったのだ。

 しかし、ある日突然、訃報が届いた。

 その少年マンガの作者が倒れてしまったのだ。そして帰らぬ人となってしまった。

 私は、闘病中だった。ガンが見付かり、治療をしていた最中。そのマンガを支えにしていたと言っても過言ではなかった私は、一気に体調を崩した。ショックは計り知れないものだったようだ。作者である先生を尊敬して、最新刊は欠かさずに即購入していた。支えを失くしたように、私も倒れてしまったのだ。

 そのまま、私も死亡してしまったのだろう。


 気付けば、生まれ変わっていたのだ。


 それも、あのマンガの中。しかも、主人公。

 ただしーーーーーー女の子である。


「なんでだぁあああっ!!!」


 記憶を取り戻したその日に、森の奥の崖の上で、叫んだ。

 マンガの主人公の名前はルメロだったけれど、ルメリと女の子らしい名前を名付けられた。

 ダンダンと地面を叩いて嘆く。

 なんでせっかく愛していると言ってもいいくらい大好きなマンガの中に転生したのに、どうして主人公ポジションなんだ!

 百歩譲って、ヒロイン枠がよかったよ!

 神様のミスか何か? 神様に会った記憶ないな!


「……生まれてきたものは、しょうがない」


 嘆き飽きたのか、そう思うことにした。

 いくら頬をつねっても、夢ではないのだ。現実として、受け入れる。

 主人公ルメロではなく、私はルメリ。その幼少期。

 マンガで見たことのある幼顔は、ちょっと女の子らしく、睫毛が長く上向きになっている。だいたいは、同じ顔だ。主人公ルメロと同じ、水色の髪の毛は短い。肌は、健康的な明るい色。

 主人公ルメロこと、私ルメリの出身は、国の最果ての貧しい村。

 それも、勇者なんて生まれそうにないような平凡な村だった。

 それもそのはずだ。

 勇者になるのは、攻撃魔法が優れている者が通常なる世界。

 この世界では、生まれたその日に使える魔法が決定する。

 主人公ルメロは、たった一つの魔法しか使えなかった。

 それも攻撃魔法ではなく、ただの生活魔法。種類は【水】。そういう設定だった。私もそうなのだろう。多分。

 ゲームのように、ステータスは見れないけれど、この村の人間は皆が生活魔法のみしか使えない。だから私も、この村にいるのだ。

 退屈この上ないこの村にーーーー。

 けれども、抜け出したい。

 この村から抜け出して、勇者になって、目指したい。

 そう、マンガで読んでいた物語のように、勇者になって仲間を集めて、世界中を冒険して、そして勇者王になる。

 記憶は朧げだけれど、母親が読み聞かせてくれたのだ。勇敢な勇者王だった男の話を。

 自然と笑みになるのは、何故だろうか。

 これは、主人公ルメロの性格を持って生まれた証だと思うと、それはそれで嬉しい。


「ーーーーーー勇者王に、なるっ!!!」


 女の子でも主人公に転生したから、勇者王を目指してやる!

 これから出逢う登場人物達と会うことに、眩しい物語や熱い展開に胸を躍らせて、決意をした私は拳を空に向かって突き上げた。

 主人公は、私なのだから!




 その日から、森を歩き回った。

 ただ歩き回っていたわけではない。

 とある人物達を探していたのだ。

 マンガの一話目は、勇者になるために旅に出る話だったけれど、それは十年ほど先のこと。

 その前に出逢いがあることを、私は知っている。

 しかし、正確の場所は知らないので、私は探すしかなかった。

 情報は、森の中ってだけだから、何日も経ってしまう。

 でも見付けた。

 山の森の奥にある一つの家。

 そこでは、私よりも歳上の少年が、もじゃもじゃの男性と口論していた。

 大人の方は、主人公の師匠となるキャラクター。モーアさんだ。

 もじゃもじゃの長めの黒い髪と、目付きの悪い垂れ目と、無精髭が特徴。

 持っている魔法は、知っている限りでは生活魔法【鑑定】。攻撃魔法【木】だ。

 実はこのキャラクターが、マンガの中で二番目に好きだったりする。

 そして、もう一人は、マンガの中で私が一番好きだったキャラクター。

 主人公の兄的存在になる、名をティアス。

 毛先が真っ赤な白い頭が特徴的。攻撃魔法【火】と【爆発】と強力的な魔法を持つ。

 やっぱり、マンガの世界だという確信を得て、ドキドキと胸を高鳴らせた。


「いい加減にしろ!! ティアス!!」

「うるせー!! もじゃもじゃ!!」


 ボムッと爆発したのは、少年ティアスが突き出した手。

 だが、モーアさんはそれを喰らわなかった。

 森から伸びた木の枝が盾になったのだ。

 バチッとその枝が鞭のようにうねり、ティアスを弾き飛ばした。

 ゴロゴロン、と少年の体躯は地面を転がる。


「すっげーっ!!!」


 思わず声を上げてしまったから、二人の注目を集めた。

 あ。マンガの通りだ。

 セリフが同じなのは、やっぱりマンガの通り進んで行くからなのだろうか。女の子だという事実だけが違うだけで。

 攻撃魔法を目にしたのは、これが初めてだ。

 だからこその興奮。

 幼少期。森に迷い込んだ主人公と、師匠と兄的存在になる二人と出逢い。

 マンガのシナリオ通り、実現した。

 一つ、違うところがある。

 それは私の顔が、よく見えないように帽子を深く被っていることだった。



 

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