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小説家になりたいというねごと  作者: 阿倍カステラ
3/6

ねごと③ ショートケーキに勝ちたい

阿倍カステラよ、ねごとで吠えろ!

量産型。凡庸カステラ乱れ打ち。


 戦いに負けて何かを失うことも、ショートケーキを食べて、口の端に生クリームをつけてショートケーキを失うことも、あまり大差ないように思える木曜日。


 いつものように午前中はYouTubeで音楽を流しながらの読書。


「川崎のコンテストで僕らはビリになった」とSEKAI NO OWARIのFukaseが言う。


「なんでそんな暗いバンド名なの?変えな」とか、「ドラマーやベーシストがいないんじゃ売れない」とか、審査員に言われたと言う。


 ラジオに出た時も「歌にメッセージ性がないね。最近のバンドはそうなの?」とか言われたようだ。


「でも、僕らはいま日本で一番大きなステージに立っています」とFukaseは叫ぶ。


「何が言いたいかわかりますか?みんなも負けるなってことです!」


 そして、「すべての戦っている人におくります。Fight Music!」と言って曲が始まった。


 僕はといえば、本を読むのがメインでBGMとしてSEKAI NO OWARIの曲を極めて低い音量で流していただけだったけど、その歌を聴いたことで一瞬で午前中にやる事の優先順位が入れ替わった。


 僕は読書を中断し執筆モードに突入することになった。


 SEKAI NO OWARI『Fight Music』の歌詞は「〜これで100戦中100敗〜それでも戦いつづけるよ 勝つために」で終わる。


 でもこの歌は、「勝つために戦え」って言ってるんじゃないんだよね。負けることもあるけど、負けることの方が多いけど、戦いつづけようと歌ってるんだと思うんだ。


 そう、たまたま流れてきたBGMが僕の現在にリンクしたんだ。


 僕の長編小説『象のレースと彼女のミルクティー』は、勝つことがすべてじゃない、ということをテーマに書いている。


 人生を勝ち負けで語ることは多いと思う。多くの人は戦いに挑み勝ったり負けたりを繰り返したりしてる。人生には勝者がいて敗者がいるらしい。


勝者の誰だかはそれを勝ち誇ったように声高々に語るんだ。


 敗者はいつも、敗戦を悔やみ自分を恥じたりしてる。「勝つために」次の戦いに挑むには大変な勇気がいるんだ。


 勝敗を白星、黒星、みたいに色で塗り分けるけど、その色が何色かには大した意味はないよ。人生においては。「勝つために」どう戦ったかどうかなんだと思うんだ。


 色が決めるんじゃない、自分が決めていいんだ。


 ショートケーキは食べてしまったらなくなってしまうけど、また食べたくなったらケーキ屋さんに買いにいけばいい。行列のできる大人気店でないかぎり、ケーキ屋さんにいけば誰でも平等にショートケーキを買うことはできる。


 晴れた日に洗濯物が乾くように。誰にだって平等にチャンスはある。


 もちろんそれは、覚醒中もねごとを言う僕にだってあるということだ。


 冒頭のフレーズを歌のサビのように繰り返す。


「戦いに負けて何かを失うことも、ショートケーキを食べて、口の端に生クリームをつけてショートケーキを失うことも、あまり大差ないように思える木曜日」


 とても美味しいショートケーキを食べた幸せが何かに負けてしまわない木曜日を僕は生きてる。


 そこに原稿用紙とペンがあれば、ショートケーキすら凌駕するかもしれない未来をイメージしながら。


 そんなねごとを言いながら。




読んでくださってありがとうございました。

応援よろしくお願いします!

ぜひ、ねごと④をお楽しみに。

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