潤いを失った
ただただ重々しい空気を吐き出して持っていた携帯をソファに投げ出す。
「恋に恋してんじゃねぇよ…」
納品前の仕事の慌ただしさで身体は悲鳴を上げていた。
バカみたいな内容のメッセを読まされ心も疲弊している。
「会いたい、話したいって…疲れてるつうのに。そもそも彼女じゃねぇし」
女って何なんだろうか。
自分の気持ち最優先で人の気持ちを労るとか察することを出来ない生き物なんだろうか。
それとも相手が幼いのか。
若い時よりも潤いを失いパサついた前髪をかき分ける。
自分は歳をとった。
良くも悪くも恋愛をした。
惨めな思いもした。
きっと彼女もそうやって大人になって、恋が恋じゃなくなっていくんだろうか。
頭花畑だな、なんて思いながらも良いなと思う自分もいるわけで。
「わっけぇ…」
そう独り言をつぶやきながら服を脱ぎ捨て、一日の汚れを落とそうと浴室に向かった。
嫌なこと全部全部流れていけばいいのにと思いながら。