第二章 第一話 教官が攻めて来た! ▶たたかう にげる どげざ
最近僕のヒーローアカデミアにはまってて、そういう学園モノ書きたいなーって考えてる。つーか、ハリーポッターネタはどこまで許されるんだろう。
入学式を終え、ソーイチは事務所に帰って来た。
「おーきた、ハリー、私あなたのファンだったの!」
シロナがうきうきしながら駆けつけてきた。
「お疲れ様でした。ソーイチさん」
「俺はハリーじゃねぇよ、ありがとうございますメイベルさん。とりあえず資料渡されたんで目通しときます。しかし、学費の件、ありがとうございました」
「いえ。いいんですよ。頑張って卒業して立派な魔導士になってくださいね」
ホントに、この人天使。まあ俺の想い人第一号でもあるんだけど。
でもあのミネルヴァって子も、結構可愛かったなー。
「ソーイチさん?」
「は、はい?」
「今他の女の子のこと考えてたでしょ?」
メイベルさんは眉間にしわを寄せて詰め寄ってきた。
「いや……ミネルヴァって子が話しかけてきてですね」
「まあ結構ですけど……色恋沙汰にうつつをぬかして学業をおろそかにしないでくださいね!」
ぷりぷりしながら所長席に戻って行った。
あれ? 嫉妬してくれてる?
「組み分け帽子とか被らなかったの?」
「だからそういうアウトなネタはやめなさい。小説家になろうが寛容なサイトだからって」
「でもクラス分けはすんだろ? あんた、魔法の才能ないのに入学しちまったからな。それ相応のクラスに入れられるんじゃねぇか?」
なんだよそれ相応のクラスって。
「でもメイベルさん、クラス分けってどうやってするんですか?」
「ああ、多分二日後の家庭訪問で任意に選ばれた教官が来て、特性を見極めて選ぶそうですよ」
は? 家庭訪問?
そんなわけで二日後。ガイダンスを終えて帰って来た。
ソロモン魔導学院のカリキュラムは、次の通り。
まずこの大学……という位置づけになるんだろうが、4年制で、5つのクラスに便宜上分けられる。1クラスの人数は原則40名で構成。「バーサーカー」「セイバー」「サイフォス」「シンフォニア」「ブランク」。そして様々な科目を取り4年間で指定の単位数を履修しなければ卒業できない。クラス専門科目と、共通科目に二別される。
さまざまな科目があるが、学科は大きく7つに分かれる。
・対人戦闘魔法学科
・魔法医学学科
・自然・人文科学学科
・飛行訓練学科
・魔法史学科
・呪文学魔法学学科
・魔獣学学科
それぞれの学科にエキスパートの教官がおり、一授業当たり平均150名の生徒を相手に教えるそうだ。授業は一日7コマ。90分授業で、朝は9時から、夜は21時までみっちりやる。その他、合宿や体育祭、学園祭などもあるそうだ。なんだか楽しみになってきた。
俺は緊張し、事務所の椅子に座っていた。シロナは飼い犬探しの依頼がちょうどよく入ってきたので外出中。ミハルは債権の取り立てに行った。
「ソーイチさん、リラックス、リラックス」
「わかってますけど……メイベルさんのとき、どんな講師が来ました?」
「ええ、生徒に理解のある、熱血教師でした。ただ……」
「ただ?」
途端、バタン! と大きく扉が開かれた。
「Welcome to the Salomon!!」
突然大声を張り上げて入ってきたのは、金髪の髪を肩まで垂らし、黒いスーツに身をやつした、ガリガリの長身の中年男性。
「まあ! シュワルツ教官!」
「おお、メイベル君じゃないか! HAHAHA! また少し胸の周りが太ったね! どうだ探偵稼業の方は!?」
「ええ、楽しくやらせていただいております」
「『ブランク』として入学してきたころの君はただの巨乳少女で男子学生の注目を浴びていただけのひよっこだと思ったさ! だがめきめきと成長し、最終的にソロモン記念賞の表彰台に立つとは思わなかったー! あのとき何リットルの涙を流したかなぁ!」
何気にセクハラ発言を繰り返しつつ泣き出すシュワルツ教官。
彼はハンカチで涙をぬぐい、
「初めましてだソーイチ・キヌガサ君! 私は対人戦闘魔法学科担当教官の、シュワルツ・ノイルズだ! 今日は君の特性を見抜き、クラス選別の資料集めにきた! よろしくな!」
握手を求められ、応じる俺。いちいち声がでかいんだが。
「お座りください、シュワルツ教官」
メイベルさんはソファに座るよう促した。
「わかめはあるかね、メイベル君」
「あります、シュワルツ教官」
なんだこのやりとり。意味分からねぇ。
そしてシュワルツ教官はわかめをもっしゃもっしゃ喰いながら、
「君の特性を見抜くのは簡単だ! 右手をもう一度差し出してもらおうか!」
俺は恐る恐る右手を差し出した。
シュワルツ教官が握ると、体中に電流が走るような刺激が走った。
「っ!!!」
「よしっ! 君からは何の特性も感じられない、よって『ブランク』への編入の可能性が高いだろう!」
説明しよう。
クラスは特性によって分けられる。
「バーサーカー」最も魔法の素質がある者が集まる選抜クラス。卒業後大半は宮廷魔術師として王国に仕える。
「セイバー」戦闘に特化した魔法の素質がある者が集まるクラス。卒業後は憲兵に入隊する者が多い。
「サイフォス」医療に特化した魔法の素質がある者が集まるクラス。卒業後は医療魔導士という特別な資格を取得し、医療に携わる者が多い。
「シンフォニア」どちらかといえば学術や工学に特化した魔法の素質がある者が集まるクラス。卒業後は大学院に進学するものが多い。
「ブランク」魔法の素質がない者が集まるクラス。ピンからキリまであり、卒業後は一般企業に就職するものから出世して一流魔導士になる者まで様々。
「そして幸運なことに、もしブランクへの編入が認められれば、担任は私だ! よろしくな!」
「よ、よろしくお願いします……」
そうしてシュワルツ教官は帰って行った。
「ブランクですか。奇遇ですね。私と同じクラスなんて」
「まあ……俺一般人ですし、うすうすブランクに編入されるだろうってのは分かってましたけど……」
「ブランクというクラスを設けているのは、ソロモン魔導学院の特色でもあります。本来なら奴隷同然として扱われるような純血の無特性の人間から魔法の素質を引き出すのは、この学院独自の取り組みでもありますからね」
「でも、メイベルさんは首席で卒業したんでしょう?」
「恥ずかしながら……まあ私は劣等生だった分、たくさん努力だけはしましたから……」
「メイベルさんの得意とする魔法はなんなんですか?」
「私は……一応拘束魔法に長けていたんです。ソロモン警視庁にも勤務していた時期もごく短期間ですがありまして……」
それでミハルやダグラスをいとも簡単に縛りつけていたのか。
「さてソーイチさん。この後、仕事手伝っていただけますか。電話で警視庁から依頼がありまして……といっても、書類を整理していただくだけなんですが……」
「もちろん、させていただきます」
そしてクラス発表。
校舎の前に、でかでかと掲示されている。
俺のクラスは、1年B組。シュワルツ教官の言った通り、ブランクのクラスだった。そして。
「あっソーイチくん、覚えてる? ミネルヴァだよ! 同じクラスだね! よかった!」
「お、おう、よろしく」
赤い顔ににきび面のミネルヴァ。爛々とした笑顔が可愛らしい。
「あー……俺、やっぱりサイフォスか……」
茶髪のショートヘアの生徒が呟く。そこへミネルヴァがやってきて、
「ねえねえ、君は!? 君は!? なんて名前!?」
「へっ……あの……その……レイモンドです」
「あたしミネルヴァ! こっちはソーイチくん! クラス違うけど共通科目で一緒になるかもね! よろしくね! 友達になろ!」
「あ……よ、よろしく」
コミュ力モンスターとコミュ症の構図と言ったところか。
そしてミネルヴァは更に、黒髪のぱっつん少女のところへ俺の手を握って連れていく。
「あなたは!? あなたは!? 名前なんて言うの!?」
「……ナオナオ」
「へー、かっわいい名前! あたしミネルヴァ、こっちはソーイチ君! ナオナオちゃんはクラスは?」
「……シンフォニア」
「へー。頭いいんだ、よろしくね!」
「……よろしく」
クーデレ系少女か。まあ美人の友だちが増えるのはいいことだ。
「おうおうおうてめえらハートマン様のお通りだぁ!」
金髪の長身の、眼鏡をかけた生徒が、子分と思しき二人の生徒を引き連れてこちらに来る。
「おいそこのコミュ力だけが取り柄の少女。俺のクラスはバーサーカーだ。俺はハートマン。名門私立キングダム魔導学院付属高等学校出身のエリートだ。よろしくな、ブランクのはんちくくんども」
握手を求められたが、当然のごとくミネルヴァはそれを払いのけて、
「普通、人と仲良くしようってんなら、相手の名前を聞くのが礼儀だよ? それに、あんたみたいに学歴を主張してる人、あたし大嫌い」
「ははは結構! 俺も君たち劣等生のブランクと仲良くしようなんていう気はさらさらないからね、まあ光栄に思いたまえ、ソロモン記念賞を取る優等生が誰かを教えにきてやったんだからな。他の生徒たちもよく聞きたまえ、俺を蹴落としてソロモン記念賞を取ろうと考えている奴は全員潰す。覚悟しとけよ。それではごきげんよう!」
ハートマンは高らかに笑いながら去って行った。
「嫌な奴だね。あたしたちも負けないようにしようね!」
「あ、ああ」
少年漫画に登場するライバル的なあれか。ハリポタで言やマルフォイのポジションにいる奴だろう。黙ルフォイ、と罵っても、この世界じゃ通用しねぇか……。
そうして、俺とミネルヴァは1年B組の教室へ向かった。
教室全体はざわついており、自由席だったので俺はミネルヴァの隣に座った。
「あんた可愛いねー、あたしー、リリィってんだー、マジシクヨロー」
「うん、よろしくね!」
「自分、バジルと申します、得意科目は数学です、よろしくお願いします!」
「へー、勉強教えてね!」
ミネルヴァの周りには人だかりができていた。
本当にコミュ力モンスターだな。
そして、ドアが大きな音を立てて開かれた。
「はい全員着席してないね! 私は君たちの担任のシュワルツ・ノイルズだ! 罰として全員校舎10周! 安心したまえ! 監督不届きで私も一緒に走る! さあ、走るぞ、共に親睦を深めよう!」
ちょっと待て、この校舎、日本で言う所の東京大学駒場キャンパスぐらいあんだぞ。それを10周て。
やはり、この男……キワモノだ。俺の不幸スキルは伊達じゃなかった。
そんなこんなで全員で10周することになったわけだ。
「もー、なんで入学早々走んなきゃいけないのー!?」
ジャージに着替えて俺の隣で走るミネルヴァがへばる。
「まー、熱血教師なんだろうな、あの教官」
「もう3周目だけど……はあはあ……全然へばってないねソーイチくん。なんかやってたの?」
「……マフィア」
「へ?」
「冗談だよ……はあ、はあ、新聞屋のバイト、って、あ」
俺たちは止まった。
目の前で、スーツ姿で走っていたシュワルツ講師が、わかめをはむはむしながら、ぶっ倒れていたからだ。
「ぜえぜえ……はあはあ……ああ……筋肉と酸素が欲しい……」
そんなことを呟きながら、担架で運ばれていった。
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