しののめこうぼうとひよこ(サラバダー諸君!)
「僕が工房長のコウで、コッチの女の人が副工房長のパルマさんやよろしゅうなひよこはん」
イントネーションから関西出身だろうと思われる職人風の少年と綺麗なエルフの少女。この二人が東雲工房の工房長と副工房長だとキールさんから紹介された。でもこの雰囲気はなんだろうかピリピリしていて嫌な感じだ。
此処居るのは場違い感が半端ないので逃げたくなったんだが逃げるのはキールさんとその隣の女性に退路を絶たれている。あの女性が恐らくキールさんが何時も惚気ている奥さんだろう。
他のルートにも路地に恐らくはホビット族であろう小柄な女性(その為、持っている刀が野太刀に見える)が此方に殺気を飛ばしながらニコニコしているところので戦闘狂か?と建物の上からは嫌そうな顔したハーフリングの少女弓士が此方を狙っている。
ナニコレ、なんでコッチを逃さないつもりなの?こうなると俄然逃げ出したくなるんだけどね。ふむ、こんな事になるなら『逃鶏の装い』を無駄遣いするんじゃなかった。
手練れが6人と建物内にもそこそこ腕の立つのが複数人か。本当に此処は生産者ギルド主軸のクランかよ?そんな事を言うと『ケットシー』は商業ギルド主軸クランらしいんだが、そこらの戦闘系クランよりも圧倒的戦力を持っているらしいけど。
「どうもニュービーのケイです。それで東雲工房、クラン『天之御影』が何の真似ですか?」
「いや~すまんなぁ。僕らは何にもせんでええて言うたんけど、ちょっと下の方がゴネてしもうてな。それやったらちょいと試験しよかってわけやねんけど受けてくれるか?」
そう言って苦笑するコウくん。どうやら彼はこの包囲には賛成している訳では無いようだが
「だったら結構です。夜一くんには申し訳無いけど、黒猫商会のコネが出来た今、そこまでして東雲工房さんにお世話になる必要は感じられませんのでこれで失礼します。どうもお時間を取らせてすみませんでした」
そう言って振り返る時に見えたパルマさんの顔は唖然としていてしてやったりだ。振り返った先のキールはああやっぱりかと言う感じで頭を掻いて道を空ける。
一歩踏み出した時に建物の上の方から殺気を感じたので顔を傾けるとその横を矢が通り抜ける。どうやらハーフリングちゃんには今の台詞がお気に召さなかったようだね。
「けーさん、ミールのヤツが勝手な事をして済まない。でも後でよく言って聞かせるからもう少しだけ話を聞いてくれないか?」
「いくらキールさんの頼みでも無理。此方に今回は非が無い。夜一くんの紹介だからと言って非も無いのに下手に出る必要は感じられない。勝手に不満を押し付けられるなんて仕事場以外では真っ平ごめんだね!悪いけど失礼させて頂くよ」
そう言うと同時に地面を思い切り踏み抜く。そして、姿がかき消えるケイであった。




