しすたーさんのおねがいさんく(寺院からも頼まれる)
「すっかり待たせたな。これが僧正様の返事を認めた封書とこっちが教会への親書だ。どうせこれから行くんだろうから序でに持って行ってくれよ。
……って、お前達、何を食っている?」
帰って来たイナバが俺達のお茶請けにしていた物を見て感づいたようだ。
「勿論、イナバ先生の戸棚にあった羊羮だよ~♪ねぇ~稟」
「そうね。神殿の使者様と神の加護を持つ渡り人様に相応しい物はアレしか無かったわ。そうよね鈴」
そう言う二人は同じ顔をして同じ法衣を着ている。しかしその全てが鏡合わせで目元のホクロが右にあるのが月影 鈴、左にあるのが月影 稟。同音異字の双子の僧兵姉妹でイナバの弟子である。
武器に十文字槍、流派は宝蔵院と製作者の趣味がてんこ盛りなのがこの寺院で特に親しい人物だ。まあホクロでのみ判断するには危険だ。だってアイツら時々入れ替わってるからな。
それに気づいて指摘したら矢張り何人かのプレイヤーも見破っているらしいが初見で入れ替わりを見破ったのは俺以外には一番最初に見破った黒猫さんと数人だけで10人にも満たないらしい。
黒猫さんは本当に初見、初対面で言い当てたらしいから何かしらの看破系の上位スキルを確実に持ってるんだろうけど。そう言えば鑑定屋をやってるって言ってたっけ。
「お前達!よくも儂のとっておきの猫屋の芋羊羮と東雲工房の栗羊羮、一番高いヤツを食いやがって!槍の錆にしてやるから其処に直れ!」
「やーだよー!ねっ、稟!」
「痛いのはごめん被ります。そうよね鈴」
そうやって始まった追いかけっこを見ながら他の尼僧さん達と熱い扶桑茶と煎餅を齧りながら終わるのを待つ。その間のシスターケイティは終始申し訳なさそうに肩を窄めていた。
そこにやって来たおじいちゃんも混じって雑談が始まったので
「僧正様、俺は次の予定が決定しているからそろそろ出発したいんだけどいい加減止めて貰ってもよろしいでしょうか?」
「そうなんですか?おーい、宝胤く〜ん。ケイ殿がそろそろ出発したいと言ってるからそこでおしまいにしておきなさい」
シスターケイティがえ?え?となっているから顔を知らなかったのだろう。流石は超箱入り娘。因みに宝胤というのはイナバのオッサンの法名である。
言われたオッサンは若干不服そうな顔を、双子は助かったと安堵していた。
「稟と鈴の二人にはケイ殿の護衛を命じます。後は帰りに食べてしまった羊羮を買ってくるように」
今度はオッサンが晴れやかになり、双子に影が差している。




