はじめてのぼすせん(大した事はありませんよ。だって只の子熊ですから。)
「ほらクマさん、コッチだコッチ!」
輪郭さえボヤけるような気がしていた夜一くんの気配が大きくなり威圧感が出ているような気がする。
それもその筈、夜一は気配操作スキルで消していた自身の存在感を逆に強めることで注目させた上で挑発スキルを使い攻撃を全て自分へと誘導したのだから。
これは所謂、回避盾と言うタンクのやり方だ。子熊と言えどもワイルドベアはフィールドボス。中々のスピードでヤツのアーツ、『ベアブロウ』が左右の腕から繰り出されているが当たらない。
彼、夜一くんはこの程度の相手なら単騎で充分と言ってた。それは少なくともレベルに二倍以上の開きがあると思って良い筈だ。それにPSが尋常じゃなく高い。その証拠はワイルドベアが俺に対して常に真後ろ向ける形を維持している事から間違いない。
流石にここまでお膳立てされたら平々凡々な俺だってやるっきゃない。
気合いを入れ直し、懐からぴよぴよ丸を取り出して半身に構える。擦り足でジリジリと近付いてクマ公の首の辺りを狙って剣術アーツ『スラッシュ』を確実に当てる。首に当たった瞬間に弾かれるような感覚があったが一応、HPバーがほんの少しだけ削れている。
そのままバックステップで距離を置いてワイルドベアの様子を見ながらさっきの攻撃考察をする。
う~ん?やっぱり、アーツでダメージを入れるとスタンが入りにくいなぁ。これだったら通常攻撃の方が良かったか?でもアーツを使ってこれだとダメージが入らないかもしれない。次があるなら試してみるとしよう。
ワイルドベアがケイの攻撃に煩わしそうに振り向こうとした時、パァン!と言う音が響き、ワイルドベアはキョロキョロと辺りを見渡し始める。
「クマさん、こちら手の鳴る方へ!」
スキル『拍手』:
手を打ち鳴らし、敵のターゲッティングを一時的に白紙に戻す。
おぉ、俺に向こうとしたヘイトを『拍手』で消して更に『挑発』で自分に向け戻した。ヘイト管理が凄く上手だ。もしかしたらトッププレイヤーなのかも?
それは置いておくとして、また背面を晒したクマちゃんに今度は通常攻撃の連撃をプレゼントしてやる。
次は駆け寄って思い切り地面を踏み込んで飛び上がる。その際に左からの逆袈裟に一撃、更に落ちる勢いを利用して唐竹でもう一撃。
地面に着地後、そのまま後ろに転がって距離を取る。
あれ、さっきより効いてる?
ワイルドベアのHPバーが今度は1/20程度削れている。幾ら連撃だからってアーツよりも削れてるっておかしくないか?




