あやしいおみせ(値段を交渉しよう!)
「うん、どう見ても悪趣味な招き猫(千客万来と書かれた小判を持ったお店に置いてそうなヤツ)だね。他には木魚(お坊さんがお経を詠む時にポクポクと叩くヤツ)、ポイ(金魚すくいに使う紙を張っているアレ)、こけしっぽいマトリョーシカ?
ラインナップが訳が分からないな。取り敢えず全部買っておくかな。
おい、オヤジ。その辺のガラクタを一纏めに買ってやるからまけろ」
「これはひよこのお大尽様。そこにあるのはとある好事家から流れてきた日之本三国は秋津洲の伝統工芸品で御座いますので少々お高くなりますがよろしいでしょうか?」
「好事家からの流れモノ?ふーん、なあオヤジ、最近日之本と貿易したって言う商人が荒野で襲われたって噂があるんだけど知ってるか?」
「そう言えばそんな噂もありましたねぇ。ですがウチの商品とは無関係ですよ旦那」
「そうか。なら門を出る時に門番にこの店の品揃えを話しても大丈夫だよな!アッハッハ」
「ハハハッ、ご冗談を。1割引でどうでしょう?」
「話にならない。9割引きなら考えてやるよ」
「では1割5分では?」
「だから9割なら考えてやるって」
「なら2割!」
「そうだなぁ、8割7分で勘弁してやる」
こうしてケイの強気な態度から始まった泥臭い値引き交渉は5割5分引きと半分以下の値段がついた。
「ではひよこのお大尽様、よろしくお願いしますよ」
「はいはい、ここの事はお役人には言わなきゃ良いんだろ?」
「へい、とかげのお嬢様もお願いしますね」
「え?あっはい」
アリーが急に声を掛けられてビクッとなる。
「さてアリーさん、もう行くよ。」
「は、はい!」
二人が去って5分後
「さぁて、アッシもここからおさらばしますかね」
「おい、そこのお前。ちょっと話を聞きたいから詰所まで来てもらおうか?」
兵士に声を掛けられる怪しいオッサン。
「は?ひよこのお大尽は誰とも話していなかったのにどうして?」
「訳の分からんことを言ってないでさっさと来い!」
こうして怪しいオッサンから芋づる式に盗賊団はロマーニャ兵士団によって一網打尽となったのだった。
「ケーさん、メッセージで伝えられた通りに兵士の詰所に手紙を撃ち込んできましたよ。これで良かったんですか?」
ケイは怪しげな露店を見て直ぐにルーカに連絡して兵士を呼んで貰っていた。だから言われた値段でも買えるのに態々泥臭い値切り交渉を長々として時間を稼いだのだった。




