さわぐやつはどこにでもいる(メシが不味くなるこれ以上騒ぐなら………)
食事会の様子を見てみよう。席を移動しても構わないのだが、クロ達の席には近付かないと言うより近付けない。まあクロが分体を使って宴会芸を娘達に披露しているところになんて突撃しようするバカは流石に呼んでいない。さっきの調理系プレイヤー達は既に調理系トップクラン『鉄人』のクランマスターに「他人のレシピをタダで知ろうとなんて烏滸がましい!恥を知れ!」と一喝されて大人しくなっている。
「さっきは部下が知り合いが済まなかった」
既に席に居た『鉄人』のクランマスター、『和の板長』63郎が代表して謝ってくる。彼の専門は日本料理で醤油や味噌、麹を貿易商と取引してプレイヤーに使えるようにした人物である。
「いえ。もうあのような事が無ければ良いです」
既に距離を置きたがっているケイであった。
「なぁなぁ、アンタが噂のスーパーバフ料理を作れる人?だったら俺っちと勝負して俺っちが勝ったらそのレシピをくれよ!」
話に割って入って来たこのおバカさんはクラン『鉄人』の『中華の厨子长』健民、クランの幹部で四天王の1人である。この光景にクランのNo.2のサブマスター『フレンチのキュイジニエ』ジョエル、他の四天王である『イタリアンのカポクォーコ』ソフィ、カレーを得意する『インド料理のシェフ』モハメッド、『スペイン料理のチェフ』フランシスなどは冷めた視線を送っているが健民は気付いていない。
「止めないか!このバカ者が!」
63郎の鉄拳が健民の頭に落ちる。
「ケイさん、本当に申し訳ありません!この阿呆には後で幹部全員で説教しておくのでどうかこの場は許して下さい!」
クロの眼が怒気を孕み出したので少しビビりながら謝る63郎。
「ってぇ〜なぁおい。6さん止めんなよ!アンタだって調理系クランの頭を張ってんだからこんなニュービーより俺っち達が下だって思われて悔しくないのかよ!」
子供の前でケンカすんなよとケイは思う。
「彼の技量は確かなものだった。腕だけでなくレシピを発見する探求心があるからこその結果だから文句を言うことは俺が許さんぞ!」
「俺は何でも良いですけど子供の前で騒ぐヤメテ貰えます?レシピについては『ケットシー』『天之御影』との売買契約があるから彼等と話してくれ」
食事は楽しく食べたい派のケイの邪魔をする健民は既に排除するべきと敢えて挑発に乗ってやる事にした。この険悪な状況で食事出来るのはアリーだけのようで山盛りに取って来たお肉を専用の網でひたすらお肉を左手で網に乗せ、シッポに持ったフォークでひっくり返して食べごろになった肉をタレ、岩塩と味に変化を付けながら他の人の3倍の速度で食べていたので漸く変な雰囲気になっている事に気付いたようだ。
「ん?ケイさん、お料理で勝負するでふか?モグモグ、ゴクン。だったビビンバと杏仁豆腐が食べたいでふ。モシャモシャ、ング、プハァー」
「何でも良いけどアリーさん、段々と幼児退行してない?もう少しテーブルマナーとかしっかりしてたよね?」
こうしてケイと健民の対決テーマはビビンバと杏仁豆腐となったのである。




