きょうかいのくろうにん(団長閣下、剣聖様、いい加減にして下さいよ!)
「『氷刻』様、オレをお呼びとの事ですがご用件は何でしょうか?」
お、何だか苦労人っぽい人が入って来たぞ。
「オリバー君、早速で悪いんだけど、氷結結界で捕らえてある暗殺者13名の護送と尋問を此方の騎士団と一緒にやっといて。
コイツらは多分今回のロンバルディア公会議でウチの聖女殿下を狙ってる連中の末端だと思う。
まあ大した情報は得られないだろうけど牽制くらいにはなるから見せつけるようにして帰ってね」
「そう言う事をするなら連絡してからやって下さい!
聞いてた話だと人探しを手伝うって話でしたよね?一体、何があれば此処まで大きな話になるんです?
後、何でこの神殿の神官長まで拘束してるんですか?
メッチャ睨んできてるじゃないですか!
どっちです?
7:3で団長なんですけど、貴方の天然ボケが炸裂してないとは言い切れないんですよ!」
「アレはちょっとした間違いだよ?
きっと冷静に話し合えば分かってもらえる筈だよ?」
「ハァ、天然ボケ煽りの方でした。良いです。謝罪はオレの方でやっておくので絶対に来ないで下さいね。拗れますから!
じゃあ、追加された仕事をこなして来ますから聖女殿下の護衛の引き継ぎをお願いします」
「了解したよ」
「じゃあ、マルクス、後はよろしく。」
エレンも帰ろうとすると
「団長もですよ!何をしれっと帰ろうしてるんですか?
どうせエリーゼ候補生の前だとダラけられないから帰ろうとしたんでしょう?
でも、そうはいきませんよ。聖女殿下の護衛は本来、『騎士団』の円卓の一席パーツィヴァルを担う貴女が今回の筆頭護衛騎士なんですから。分、か、り、ましたか『華焔』エレン=アークス=パーツィヴァル団長閣下!」
「あーはいはい、分かったからさっさと行きなさいよ。あーもうメンドイなぁ!
今、殿下はユーミル教の神子でもあるロンバルディア王女殿下と一緒なのよね?あっちの護衛をしてる王国騎士団長ってあの暑苦しいのでしょう?話を合わすの面倒だから嫌なのよね。何で食事の時に訓練方法や陣形の話してくるのよ」
「まあまあエレンさん、裏表が無い分、腹の探り合いをしないで済むと思って我慢しようよ。俺だって事ある毎に模擬戦に持っていこうとされるのをかわすの面倒だとは思うけど」
マルクスがエレンを宥めていると
「貴女はいくつになっても変わりませんねエレン。母親になったと聞いていたから少しは成長したと思ったのに」
入り口から入って来た30過ぎだと思われる女性を見たエレンの顔色が変わる。
「な、何でアイゼンバッハ先生がこんなとこに居るのよ?確か学院で教鞭を取ってるって話じゃ無かった?」
「エレンさん、アイゼンバッハ先生がこのミラーノ教会の責任者だよ。此方の孤児院がウチの主導になったのも先生がいたからさ。挨拶もオリバー君に行かせるからこうなるんだよ」
「そう言うマルクス君も相変わらずのようね。もう少し気を使わないとダメじゃない。
あら、これはウィーグラフ神官長、そのお姿は一体?」
「…………」
そう言えばさっきから静かだったなあの神官。
「あの~あの人は?」
「あのババアの事?ロマリア教、元近衛騎士団がひとつ乙女騎士団の団長で学院の学長を務めた女傑、鋼鉄の淑女『鉄血』のアイゼンバッハと言うこわーいババアよ。何でか知らないけどこの都市の教会の責任者になってるみたいね」
「エレン、ちゃんと聞こえていますよ。それよりもウィーグラフ様に掛けた術を解きなさい。沈黙の術を掛けたのは貴女でしょう?」
「だってその根暗、ギャーギャー五月蝿いんだもん。20年も昔の事を今になっても根に持って鬱陶しいから黙ってもらっただけだし。私もマルクスに対する恨み節なんて聞きたくないから先生が私とマルクスが離れてから解いてよね」
エレンがアイゼンバッハさんにあっかんべーをしてから俺の肩を叩き外へと促す。




