ひめきしのおじょうさん(お父さん、お母さん何してるの?)
「流石にそれは駄目だ。お前程度がエレンさんを傷付ける事が出来る筈が無いし、それどころか近付いたら瞬間に消し炭されるのがオチだろうが俺の眼の前でエレンさんを傷付けようだなんで楽には死ねると思うなよ?」
えっと、目の前の光景から救世主様が超高速移動してあのアサシンを吹き飛ばしたらしい。それで踏みつけた上で剣を抜いて喉元に突きつけている。
その剣は剣とは言えない形状をしている。何故ならその剣には刃が付いていないのだ。確かにあれでは剣の形をした棒だ。正確には芯鉄のみで刃鉄が付いていないと言ったところなんだろう。
「マルクス、ヤっちゃ駄目だからね。後、ソレを抜く許可は出したけど、刃を出していいとは言ってないわよ」
エレンが睨むように言うと
「こんなのに魔刃なんか必要だと思うのエレンさん?それに剣聖の剣理はよく知ってる筈だよね」
此方も視線を鋭くして返すマルクス。
ヤバい、なんか救世主様が殺る気満々になってる!
この人は大事な物を傷つけられそうになっただけでも徹底的に障害を潰すタイプか!
許容範囲がデカいだけに読み間違えたらこの暗殺者のようになるということみたいだ。
どうでも良いけど誰か止めてくれないかな?
このどう見たって20代カップルにしか見えない夫婦の視線の交換だけで体が硬直してるんだよ。だからチラリとステータスを見たら恐怖のバッドステータスがついてるんだよ?
どれだけのレベル差があればこうなるのさ?まぁ俺はレベル1のザコだけどさ!
つーか、何でこの幼女は平気なのさ?
ん?ナニコレ、メリルちゃんの髪飾りには全状態異常耐性(極大)が付いてて、その上でいつの間に付与したのかご丁寧にバフまで掛けてある。効果は防御力上昇、全属性耐性上昇。
一体誰がって……女王様ですか。正直、俺にも掛けて欲しかったです。
「両殿下、此方にこの神殿の責任者であるウィーグラフ神官長様がいらっしゃるそうです。
っ、寒い!しょ、少々お待ちください!
な、何よコレ?全部凍ってるの?
あ、お父さん、お母さん、一体何をしたの!」
入り口から入って来て少女。その格好は目の前の夫婦と似ているが幾つかの刺繍が入っていない。恐らくは階級が下なのだろう。
アレ?今、何か大事な事を言っていなかったか?
「エリー、お父さんとお母さんはちょっとお仕事をしてただけだよ。もう終わったから気にする必要は無いよ」
「エ、エリー?何で此処に居るの?
ちょっと、マルクス説明してよ!」
「エレンさん、今回の殿下の護衛に守護騎士志望の新任姫騎士が同行するって言ったよ?
元姫巫女候補の姫騎士なんて最近だとうちのエリーだけだよ?
エリーもちゃんとお母さんに挨拶したの?」
「挨拶言ってもお母さんが居なくて副長さんにはちゃんと挨拶したよ?」
「エレンさんのことだから、きっと報告を聞き流したんだね。エリーゼ候補生、外で護衛してるだろう副長のオリバー君を呼んで来てくれる?
ちょっと、一仕事終えたばかりだから殿下を近付けるのは気が引けるんだよね」
「あ、はい。おと…[んんっ]…了解しました『氷刻』様!」
少女が外へと飛び出していく。やっぱり聞き間違いじゃなくて娘さんかぁ。親子で仕事ってどんな職場だよ!




