いいかげんにしろよ(そろそろ覚悟しておけよ)
「ねぇ、お父さん。どうしていっぱいお馬さんを変えてる人はルールいはんじゃないの?」
いよいよ折り返しの15周目、ルーカの後ろから包むようにしてアリーが馭者を交代した頃、キティはずっと気になっていた事をクロに聞く。
「ああそれは…」
「それはだねお嬢ちゃん、お馬さん達を1周させて他のお馬さんに交代してるだけだからルール違反じゃないんだよ」
クロが答えようとしたところにテオドール氏が割り込む。
「交代?一回走ったお馬さんはまだ走ってないよ?ずっと似てるお馬さんが走ってるよ?」
「き、気のせいだよお嬢ちゃん!みんな、お父さんとお母さんが同じ兄弟だから見間違えたんだよきっと!」
妙に慌て出すテオドール。
「でもお馬さんの星、白い斑点の形が全然違うよ?」
「キティ、ハルルちゃん達がログインしてきたようだから行って来なさい。今日はいちさんが俺の『ユウダチ』を案内してくれるそうだから見て来なさい。お父さんも用事を済ませたら直ぐ行くから。
『しぃ』其処に居るのは分かってるからキティを無傷で送り届けろよ。勿論他の子達も黒猫亭から何事も無くな」
「ん。ハルルちゃん達にはいちさんとしゃむさんが付いてるから問題無い。『めぃ』ちゃんは『ねぇ』と私で問題無く送るよ」
まるでこれから襲撃されるかの様に話す2人。クロがキティが見えなくなると黒いオーラを放ち始める。
「ねぇ実況くん」
「は、はぃぃぃぃ!な、何でしょうかクロさん?」
突然話しかけられてビビる若手くん。
「ん〜ちょっと、レースが終わってからで良いから上の人に届けて欲しいものがあるからちゃんと持って帰ってね」
「はい、忘れません!」
何やら意味深な事を言われ更にビクつく若手くん。
ところ変わってコース上
「アリーさん、もうさっきから妨害がウザいから後ろパスしちゃって良いよ?」
既に妨害工作をしている後ろのチームがウザくなったケイがアリーにペースダウンを進める。
「いえやります。やらせて下さい!」
さっきの男の子の件で怒れるドラゴンとなったアリーはあんな奴らには絶対に首位は渡さないと気合いを入れている。
「いやでもルーカさんだってさっきから茂みや木の影から射掛けてこようとしているバカを撃ち落としてるから疲労も溜まってきてるし」
「私なら大丈夫です!」
勿論ルーカも気合い十分だ。
「ハァ、もう仕方無いなぁ。だったらアリーさんは少しペースを落として15分台をキープして。ルーカさんはコレを飲んで次の狙撃ポイントまで休憩。良いね?」
提案なのに有無を言わさないケイの言葉に頷く2人。
「でもそれだとラスト5周で並んばれちゃいますよ?」
計算してあれ?と思ったアリーがケイに聞くと
「あぁ、良いのそれで。態と追い付かせてラスト5周でブッ千切ってプライドをズタズタにしてやるから」
どうやらケイもお冠だったようだ。