とらぶるしかないよせんぜんちゅうばん(トラブルしか無い予選前中盤[コレは本選まで取って置きたかったのに!])
「どうしたのルーカさん?」
呼ばれて車から顔を出すケイとアリー。
「こ、子供!男の子がコース上に!」
かなりテンパっているルーカの指差す先に確か男の子が恐怖で泣きそうになっている。
「何で!?いやそれよりも早く助けないと死んじゃいます!」
それを見てアリーもテンパり出す。
「チッ、仕方無い。例のアレであの子の横を掠めるように通過して。アリーさんは拾い上げる準備をしてくれ。俺が合図を出すからあの子を助けるよ!」
ひとり冷静に指示を出すケイに二人が表情を引き締めて頷く。
ところ変わって実況席
「おっと、これはなんと言う事でしょうか!子供がコース上に迷い込むと言った普通ではありえないトラブルです。一番最初に近くを通過するのは1位の『ひよこの行商隊』でしょうか?このコース取りだと2位の『フレイムボルト』の進路上です。どうなってしまうんでしょうか!お願いだから止まってくれー!」
「彼処のクランって確か上位の連中も含めてNPCの事なんてなんとも思ってないから先ず間違いなく無視して轢くな。おっ、ケイくんが何とかするみたいだな」
ビビる若手くん。だってイベントでNPCに何かあったらコロスってカズマから脅されていますから。その横ではもう次はどうやってこの妨害工作を乗り切るのかが楽しみになってきたクロが時折ポチポチと何処かにメッセージを飛ばしている。
戻ってコースのケイ達
ルーカがショコラとバニラにコーナーに鋭角に入るように支持を出す。その勢いで車が横滑りしていく。
「よし今だ、アリーさん拾い上げて!」
「はい!伸びて槍さん!」
合図を出されたアリーが槍を逆さに持ってキーワードを口にする。伸びろと言われた槍は『獣の装い』の一部、つまりは彼女の一部のような物なのである程度自由にサイズを取れる事を利用した裏技を使い男の子を拾い上げる。
異様な熱気を放つ若手くんにドン引きする親と特に気にしていない子の居る実況席
「凄い、マジで半端ないって!凄い凄いなんであんな事が出来んの?マジ、パないって!な、なんと、馬車、いや竜車でドリフトして男の子を救い出した--------!」
「オースゴイスゴイ」
興奮して言語中枢がイカれたように凄い、マジ、パないを連発する語彙が消滅しつつある若手くんにドン引きして思わず棒読みになってしまったクロ。
「お父さん、ルーカお姉さんも凄いね!」
にぱっと笑う娘を見てそうだねと答えるクロは先程の全く感情のこもっていない言葉とは違い慈しみを感じさせられるほど優しい雰囲気を醸し出している。とある人物は今回も失敗に終わったせいで歯軋りしている。